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テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 心友問う。里〔り〕は仁を美と為〔な〕す*とは、 孟子の、仁は人の安宅〔あんたく〕也といえる意にて、 人の身を安んずる所は古郷なり、 人の安楽にして常なるは仁也と、の給える義也と、いえる人あり。 集註の解〔げ〕は外〔と〕ざまの事也。 此の説おもしろく侍り。 云う。しばらく学者の内〔うち〕に力を付〔つ〕くるためにはよし。 本解は集注の旨〔むね〕なるべし。 此の語は為にする事ありての給えるか。 本より古郷ならば、風俗あししとても立ちさしがたき義もあるべし。 人の国には、仁里〔じんり〕ありとても、行〔ゆ〕きてすむことならざる勢もあり。 一篇(※一偏)には定めがたし。 好みて不仁の風俗の地に居〔お〕る者のために、 知・仁ともに失える道理を教え給えるか。 此の章にて仁を本心の事とせずとも事〔こと〕闕〔かく〕ることあらじ。 ところによりては解くべし。 問う。不仁者の、約に居〔お〕りがたく、楽にも久しからざる事**は、何ぞや。 云う。不仁者は物を二にす。一己の私〔わたくし〕を持して世を渡るものなり。 順を好み逆をにくみ、富貴を願い貧賤をいとう(厭う)。 故にせわせわ(狭狭)しきはいとい(厭い)にくむ所なれば、 其の地に安〔やす〕んずる事あたわず。 或いはあふれ或いはやぶるるものなり。 富貴を得ては大いに悦び、己一人の栄燿〔えよう〕とす。 終〔つい〕には身の病苦をまねき、或いは家を亡〔ほろぼ〕すものなり。 ともに久しきことあたわざる所なり。 周に大いなるたま物ありて、善人これ(是)とめり(富めり)といえり。 武王天下を有〔たも〕ち給いて、 商の代〔よ〕につみ(積み)たくわへ(蓄え)たる財用を 天下にほどこし散じ給う時、市民のたよりなき者にあたえて、 余りあるをば善人をえらみ(選み)与えて富ましめ給えり。 善人は人欲の私なき者なれば、天下の財用は天下の通用なる道理にまかせて、 富有に成りてもみづからたから(宝)としたのしまず(楽しまず)、 人にほどこすを持って楽しびとす。 君子は民の父母といえるも、父母たるものたから(宝)あれば、 子に分かちあたうるを以て楽しびとするがごとし。 上より国・天下に財をわかちあたえむとし給いては、いかほど多くありても、 あまねく(遍く)およばざる(及ばざる)ものなり。 しかのみならず、あたえて却りて害となることもあり。 ただ其の利を利とする様に政〔まつりごと〕をし給うばかりなり。 なおももるる(漏るる)ところあれば、彼〔か〕の善人仁者これをすくえり。 私〔わたくし〕にほどこすはよく当たるものなり。 外より見て我にもたまうべきことと思う者なし。 故に、善人を富まし給うは、もるるところなく仁政をあまねく及ぼさんがためなり。 * 『論語』里仁 「子曰く、仁に里〔お〕るを美〔よ〕しと為す。 択びて仁に処らず、焉〔いづく〕んぞ知たるを得ん。」 The Master said, "It is virtuous manners which constitute the excellence of a neighborhood. If a man in selecting a residence, do not fix on one where such prevail, how can he be wise?" ** 同 「子曰く、不仁者は、以て久しく約に処るべからず。以て長く楽に処るべし。」 The Master said, "Those who are without virtue cannot abide long either in a condition of poverty and hardship, or in a condition of enjoyment. Chinese Text Project Pre-Qin and Han -> Confucianism -> The Analects -> Li Ren 1, 2 https://ctext.org/analects/li-ren お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021年12月24日 21時37分26秒
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