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テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 心友問う。故人のかきおきたる書を見れば、博文にして約礼を説き、 人情・時変に達して甚〔はなは〕だ睿明〔えいめい〕なり。 其の世にありて直談〔ぢきだん〕せし人のいえるは、書に見たる様にはなくて、 あやしきがごとくなる人なり。 厚勤〔こうきん〕篤実〔とくじつ〕の君子にあらずと也。疑いなきことあたわず。 云う。尤〔もっと〕もさあるべし。天の物を生ずる、二つながら全きことなし。 厚勤篤実にして人の見て尊信美称する人には、睿明の才すくなし。 睿明広才の者には、厚勤篤実の質有りがたし。 人〔ひと〕見てあやしといえる所、則ち睿明の天質につきたる疵〔きづ〕也。 小兵〔こひょう〕美男〔びなん〕の人に大勇あるがごとし。 大勇のきこえありて其の人をみればあやしきがごとし。 我が心を以てむかえて人を見る故なり。 石にはなべて此の疵あれ共〔ども〕疵とせず。玉なるが故に疵〔キヅ〕とす。 睿明の人其の疵をおおわず。 君子の風をつくらざるところ、則ち君子なる事をしらず。 平生よりしらずとも、歳〔とし〕寒〔さむ〕うして、 松の、紅葉〔もみじ〕におくるる(後るる)ことあるべし。 この故に、人をみること古〔いにしえ〕よりかたし(難し)。 ただ聖人にして篤実睿明備わるべし。 それだに、十一人の列聖同坐し給わば、其の気象同じかるべからず。 況〔いわん〕や大賢以下の人は恭敬篤実にして、 うちみるより君子とおもわるる気象の人には、 天下百千歳の習惑をひきかえすほどの睿明広才はなきもの也。 それほどすぐれたる英才は、必ず恭敬篤実の所足らざる也。 しかれども、心の無欲清浄なる事はかわりなし。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年04月22日 21時04分34秒
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