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テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 心友問う。紂〔ちゅう〕王が亡びしことは自らの大悪虐を以て也。 商の天下をたもてること六百年なれば、天下皆代々の臣也。宗族外威かぎりなし。 紂亡びて悪人だになくば、四方皆商の子孫を君とすべき人情あり、 何ぞ同輩の周を君とせん。 しかるに武王紂を亡し給いて、其の子を立て置き大国を与え給うことは、 凡知の及ぶべきところにあらず。天命を知り給えば也。 敵の子をたづね求めて殺すは、子孫の害を除くはかりごとなれ共〔ども〕、 これによりて却〔かえ〕りて天命をそむく理〔ことわり〕をしらず。 敵の子を立ておくは、心もとなき様なれど、これによりて天命にかなえば却りて長久也。 まことに天命の帰するところは人力の及ぶべきにあらず。 武王は聖知にてよく命〔めい〕を知り給う故なるか。 云う。尤も、この理、武王の心に明白といえども、是〔これ〕を事とし給うにはあらず。 此〔かく〕の如き天命をわきまえて道を行なうは吾人の心術也。 武王は天命をこうぶり、伐〔う〕つべくして伐つのみ。 時の勝負を必〔ひつ〕とせず、後の利をはからず、害をさけず。 故に悪人亡びて後は、紂が子は商の孫子となれば、立てて退き給うのみ。 天下これを主君とせば、ともに仕え給うべし。 天下武王を主君とするは、天の命ずるところ也。又辞せず。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年06月17日 22時00分44秒
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