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2022年06月30日
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カテゴリ:陽明学
 
 一 心友問う。「よく近くたとえをとる」と云うことは、いかが。

 云う。これ、事にあらず、心にあり。
人、耳目口鼻四肢を取りてたとえ(譬え/喩え)せば、甚〔はなは〕だ近しとせん。
其の己に有するがため也。
それ仁者は、天地を一身とし、天地の間の万物を四肢百体とす。
今の人の一身を見るがごとし。外〔ほか〕により取り来たりてたとえとするにあらず。
この故に、万物を取りてたとえとすれども、
世人の一身の中にたとえをとるよりも、親切にして人の心に通ず。
夫〔そ〕れ人、己が四肢百体を見て、爪皮〔そうひ〕にいたるまで愛せずということなし。
疾痛〔しつつう〕快楽その心に切なり。
ただ手足しびれなえたる人のみ、うち(撲ち)つみ(抓み)ても其の心をわづらわさず。
手足我に有りて疾通あづかりしらざれば、
是〔これ〕を不仁の病〔やまい〕という。
人の、物我〔ぶつが〕のまよいありて、他人の困苦に其の心をうごかさざるたとえとす。
聖人は至神也。故に、天地を父母とし人民を兄弟とす。
不仁の人は、父母兄弟の困苦だに己が四肢のごときとならず。
この故に恩を知らざる者あり。

 問う。今の時、天下困苦の人多し。
これを以て一々其の心〔こころ〕累〔わづら〕わさば、快楽のいとまなからむか。
 
 云う。義は仁の時なり。天下の主は、天下の困苦を以て其の心をいたましむ。
故に困苦なき仁政あり。国主・郡主しかり。
士・庶人は其の一家の困苦をあずかるべし。
是〔これ〕其の分〔ぶん〕によりて仁のほどこし異なるは着也。
仁を好みて義を知らざる者は、国・郡〔こおり〕の主として天下をすくわんことを願い、
士・庶人として国におよぼさん事を欲す。
却りて倫〔りん〕をみだり(乱り)仁の累〔わずらい〕をなす者あり。
これを知らざるなり。





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Last updated  2022年07月08日 21時52分46秒



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