|
テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 いにしえ、王者の天下をたもち給える時は、 王城といえども池堀〔いけほり〕なく要害〔ようがい〕せず。 是〔これ〕民を保〔やすん〕じて王たり。徳治の遺風を見るべし。 武家の代となりては、力を以て天下をとれり。故に力を以て有〔たも〕てり。 城池をかたくして一家を守るのみ也。民を外にして保〔やすん〕ぜず。 是故に力〔ちから〕衰〔おとろ〕うる時は亡べり。 一 朋友問う。関東には年貢十一(※十分の一)よりかろき(軽き)所あり。 然れども、民、盗をする者多きは何ぞや。 云う。是も、徒善〔トゼン〕は政〔まつりごと〕をするに足らずというものなり。 日本もむかしは農兵なりし故に、皆十一の貢〔こう〕をとれり。 十一よりかろきは其の後開き(※開墾し)ましたるものなるべし。 飢寒〔きかん〕に及び盗をするは凡人の常也。 民のごときはにくからず。上より盗をなさしむるがごとし。 政〔まつりごと〕なく教えなければ、いたづらにくらす(暮らす)者多し。 この故に貢かろく地ひろしといえ共〔ども〕、 末々〔すえずえ〕の子弟は盗をするにいたる者也。 知行〔ちぎょう〕を取る人の子弟だに強盗を好む者あり、況〔いわん〕や民をや。 此の俗〔ぞく〕長ずる時は乱世の端をひらくもの也。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年07月15日 22時12分17秒
[陽明学] カテゴリの最新記事
|