|
テーマ:日本的なるもの(437)
カテゴリ:陽明学
一 心友問う。いにしえ、聖主賢君、史官を置きて、 主君の言動を初めとして、天下の善悪を記〔き〕せしむ。 おもねりてほむること能わず、いかりてそしること能わず、 のこさずかさねず、ただありのままなり。 後世、悪逆の主・無道の君の、時の威権につよく、 其の悪を後世に伝えんことを恐れて、これを記〔しる〕す事をふせげり。 しかれ共〔ども〕とどむる事あたわず。 本〔もと〕よりの悪名〔あくみょう〕の上に悪声をかさぬ。 人力ここに及ばざるは、何ぞや。 云う。鬼神は福善〔ふくぜん〕禍淫〔かいん〕なり。 いにしえの聖主賢君は、天工〔てんこう〕にかわりて史官を立て給えり。 是れ造化を助くるの道〔みち〕也。 人道に史官を立てざる時は、天命の史官ありて善悪を記せり。 問う。天命の史官、其の心に知るところありや。 云う。其の心には知ることなし。 ただ天然と、其の才、其の時の善悪をしり、 或いは時を過ぎて生まるけども、前代の事に達するものあり。 皆天道鬼神の福善禍淫也。 天下の主といえども鬼神に勝つことあたわず。故に人力を以てふせぐべからず。 みづから悪をなす者は、其の心くらき故に、此の理〔ことわり〕をしらず。 若〔も〕し此の理をしらば、つとめて善をせんのみ。 善をすることの、悪名を亡ぼすの未知なることを知らざるは、まどえる也。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022年09月24日 05時37分24秒
[陽明学] カテゴリの最新記事
|