【書籍感想】夢見る帝国図書館
書籍の感想です。今回は「夢見る帝国図書館」です。夢見る帝国図書館 [ 中島 京子 ]主人公の小説家が上野で出会った白髪の女性とのお話です。白髪の女性は喜和子と言って、快活を絵に描いたような人なのですが、主人公が小説家であると知り、図書館を主人公にした小説を書いてほしいと頼みます。帝国図書館、今の国会図書館の歴史みたいなものを図書館を主人公にして書いてほしいということで、タイトルも「夢見る帝国図書館」と決まっていますw途中途中にこの「夢見る帝国図書館」のお話が出てくるのですが、そこで知る国会図書館の歴史がなんと面白いことか!殖産興業を目標に掲げていた明治期。何も生み出さない、無料で本を貸すという図書館という事業は軽く見られていて、何度も何度も頼み込んで屋っと勝ち得た予算も、何か理由をつけてすぐに別なものに振られてしまいます。図書館の歴史は貧乏の歴史でもあるわけです。主人公は喜和子さんに頼まれてすぐに小説を書いたわけではありません。喜和子さんと徐々に親交を深め、そして、喜和子さんは亡くなってしまうのですが、そこから喜和子さんがどういう人生を辿ったのかを知ろうと動き出します。彼女の生い立ちを知る人は少なく、彼女の生前語っていたことも他の人の思い出が混じっていたり、一緒に暮らしていた人が語った物語が混じっていたりとなかなか真実が見いだせないのですが、細い細いつながりを辿ってある程度確からしいものを得るに至ります。そして、彼女もとても裕福とは言えない人生を歩んできたことを知ります。しかし、彼女の晩年は、自分らしく生きることができたのでしょう。お金はなくとも素敵な人々に囲まれ良い人生を全うすることができたのだと思います。不思議な魅力がある本だなと思っています。