樺沢紫苑氏のお話です。
先日、ピアノの先生をしている私の友人から、次のように相談されました。
「お母さんが厳しすぎる子供は、なかなかピアノが上達しません。そういうお母さんに、どう接したらいいのか悩んでいます」
ピアノの上達を強く願う気持ちはわかるのですが、「どうして、そんな簡単なところで間違うの!」
「練習が少ないから、なかなかうまくならないのよ!」と、ヒステリックに子供を叱責するお母さんが多いのだそうです。
ピアノ教師を目の前にしていても、そういう態度をとっているのです。
家ではもっと厳しく叱っているのかもしれません。
こうなると当然、子供は萎縮してしまい、「やらされ感」の中で、いやいやピアノの練習をするようになります。
いくら練習をしてもほめられることがない。だから、子供たちは無気力になる。
だから、練習に熱が入らない。だから、上達せずにやめてしまう。
こうした「負のスパイラル」に陥って、さらにピアノから遠ざかります。
一方、上達していく子供のお母さんは、「あまり細かいことを言わない」「ほめ上手」といった特徴があるそうです。
こうしたお母さんは、子供の自由意思を尊重します。
子供の「ピアノが好き」という気持ちを、あと押しするような接し方をしているのです。
ちょっと失敗したからといって怒りませんし、「練習しなきゃいけません」とか「○○しないといけません」といった強制もしません。
またこうしたお母さんは「叱る」ことよりも「ほめる」ことを重視します。
手放しで絶賛したり、過剰に持ち上げるわけではありません。
子供との距離が近すぎず、それでいて遠くならないように心がけて応援し続けているのです。
ノルアドレナリン型の指導、つまり「叱る」型の指導は、長期間でみると絶対にうまくいきません。
それどころか、無気力な人間を作ってしまいます。
それに、普段からささいなことで叱っていると、人として間違った行動を是正したいというときに、効果が出なくなってしまいます。
叱ることは非常に重要ですが、毎日起きるような小さな失敗まで、叱るべきではないのです。
それよりもドーパミン型の指導を主軸として、「しつけ」という部分でノルアドレナリン型指導をとり入れていく。そのバランスが重要です。
(脳内物質仕事術 樺沢紫苑 マガジンハウス 105ページ)