カテゴリ:人間関係、不即不離
アドラー心理学の大家、岸見一郎氏のお話です。
人間は弱さゆえに共同体をつくり、協力関係のなかに生きてきました。 狩猟採集時代の昔から、われわれは集団で生活し、仲間と協力して獲物を狩り、子どもたちを育ててきました。 別に協力したかったわけではありません。 ホモサピエンスは、単独では生きていけないほど、弱かったのです。 人間は、その「弱さ」ゆえに力を合わせて団結し、集団や社会を構築した。 このことは逆に言うと人間にとって孤立ほど恐ろしいものはないということになります。 孤立した人間は、身の安全が脅かされるにとどまらず、心の安全までも脅かされてしまう。 ひとりでは生きていけないことを本能的に熟知しているのですから、われわれはいつも、他者との強固な「つながり」を希求し続けている。 アドラー心理学では、人間の抱える最も根源的な欲求は「所属感」だと考えます。 つまり、孤立したくない。「ここにいてもいいんだ」と実感したい。 孤立は社会的な死につながり、やがて生物的な死にもつながります。 では、どうすれば「所属感」を得ることができるのか。 普通、共同体や社会から高く評価されることによって「所属感」を獲得しようと考えがちです。 アドラーは他人から評価されることによって「所属感」を獲得する方法を否定しています。 評価されることでしか幸せを実感できない人は、人生の最後の瞬間まで「もっと評価されたい」を求めていきます。 この生き方は他人の人生を生きていることになります。 高評価されるだろうと思っていた行動が軽視、無視されることは頻繁に起きる。 さらに非難や否定されることになると、意欲は減退し、投げやりな人生になってしまいます。 こういう生き方は辛いばかりです。ではどうするか。 他者からの承認を求めるのではなく、自らの意思で、自らを承認するしかありません。 私の価値を、他者に決めてもらうのは「依存」です。 一方、私の価値を、自ら決定すること、これを「自立」と呼びます。 自立した人間として生きていくことが居場所の確保につながります。 他人と比較して差別化できるものを作り上げて、共同体や社会に受け入れてもらおうと考えるのは間違いです。 あなたは特別な存在にならずとも、あなたに与えられた状況のなかで、あなたなりの人生を精一杯生きていけばよいのです。 特別に優れていなくてもありのままのあなたでよいのです。 葛藤や悩みを抱えたまま淡々と生きていくことです。 平凡な自分のままで生きていくだけで居場所は確保できます。 人と違うことに価値を置くのではなく、「私が私であること」に価値を置くのです。 「私であること」を認めず、他者を自分と比べ、その「違い」をことさら際立たせようとするのは、水車に飛び込んでいったドン・キホーテのような生き方になります。 (幸せになる勇気 岸見一郎 古賀史健 ダイヤモンド社 147~154ページ参照) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024.09.10 10:43:20
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