ある会社員の女性の相談です。
その方は対人恐怖症で、自己主張がとても苦手だということでした。
対人関係は、いつも相手の機嫌を損なわないような対応をしている。
そんな私に対して、ある同僚の女性が、お茶碗を洗う、コピーをとるような仕事をどんどん押し付けてくる。
それだけではなく、自分のことを馬鹿にしたような言動もありました。
私は何も言い返せず、彼女が指示する仕事を黙々とやっていますが、心の中ではストレスが溜まり、いつも腹立たしい気持ちです。
森田理論学習では、腹立たしい気持ちは、そのまま持ちこたえて、目の前の仕事に取り組んでいれば、自然に解消してくると言いますが、私にはとてもそのようには思えません。
どうしたらよいでしょうか。
この方はストレスが溜まるような理不尽な仕打ちを継続して受けています。
同僚はあなたが素直に引き受けるので、あなたのことをなめてかかって、どんどんエスカレートしています。
このままの状況が続くと、支配―被支配の縦の人間関係が形成されます。
相手から一方的にコントロールされることは大きなストレスになります。
この方は同僚に対して、時間のあるときは自分でやってほしい。
私は同僚の子分ではない。一方的に私に指示命令することをやめてほしい。
対等な人間関係にしたいという気持ちを持っています。
これからも今まで通り自分の感情や気持ちを抑えていると、ストレスが蓄積し、ある時、ダムの決壊のように不快感情が大爆発することが考えられます。
あるいは、そのストレスから逃れるために、退職するようなことを考えるようになるかもしれません。
忙しくて手が離せない時は、「今はちょっと手が離せないの。ごめんなさい」などと、自己主張ができればよいのですがこの方にとっては難しいでしょう。
このような相談を受けた場合どのように対応すればよいのでしょうか。
安易な同情やアドバイスは相手をさらに追いつめることになります。
我々ができることは相手に寄り添い相手の気持ちをしっかりと聞いてあげることです。傾聴してあげる。そして受容、共感してあげることです。
自分が理解した内容をフィードバックしてあげることです。
相談者の「心の安全基地」になってあげることが肝心です。
相手は自分のストレスを吐き出して気が楽になります。
自分の問題を頭の中で整理できます。
そのような対応をとっていると、相手が自分自身で解決策を見つけ出すことが可能になります。
カウンセリングとは、相談者が自分で自分の問題点に気づき、自分で解決策を見つけ出すものだと言われています。
相談を受けた人は、相手に寄り添い一緒になって考えることくらいしかできません。
馬を水飲み場まで連れていくことはできますが、水を飲むか飲まないかは相手次第です。
ロジャーズの「来談者中心療法」というのはこのことを言っているのだと思います。
主役はあくまでも相談者であり、聞き手ではないということを肝に命じておきたいと思います。