103209 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

FLOWER GARDEN 2

FLOWER GARDEN 2

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2009.06.18
XML

しんと静まり返った川面を祈る思いで見つめた。
どれくらい経ったのか……
静寂を破る水飛沫の音と共に、二つの影が水面に現れた。

「先生!」

リンは先生の顔を上に向かせ脇で抱えるようにして川を横断し、私のいる川縁を目指して泳いできた。

「先生は?!」

リンは陸に上がると肩で息をしながら、強く咳き込み、それから深く深呼吸した。
そして先生の口元に耳を寄せると、「大丈夫だ。息がある」と額に垂れた前髪を掻き上げた。

「良かった。じゃ、すぐに病院に……」

立ち上がろうとする私の手を素早くリンが捉えて、首を振った。

「病院には戻らない」
「そんな!直ぐに先生を診て貰わないと」
「戻らない」
「ひどいわ!」

掴まれた手を振り解こうと体を捩じらせたけれど、リンの腕はびくともしなかった。

「医者に診せないとは言っていない」
「だって、でも、病院に戻らないって……」
「僕達のアジトがこのすぐ近くにある」
「僕達って……アジトって……?」

私の質問が耳に入らなかったのかリンは先生の脇に肩を入れると、立ち上がろうとした。
私は慌てて反対側に回り込み、先生の腕を自分の肩に回して彼の体を支えた。

「車で5分とかからない。ヤブだが腕の確かな医者もいるから安心しろ」

リンはニッと口の端を上げて笑った。
先生を引き摺るようにして、後部座席に乗せると私も滑り込み彼の頭を膝の上に乗せた。
リンはふんと鼻を鳴らすと、運転席に乗り込んだ。
そして、私から上着を引き取ると、黒いトランシーバーのようなものを取り出した。

「ああ。トシコか?これから5分後に客を連れて行く。ドクター・ケイに代わってくれ」

リンは先生の容態を手短に伝えると、黒いトランシーバーを置いた。
私がじっとそのトランシーバーを見ていることに気づいたのか、ミラー越しに彼と目が合った。

「これが気になるか?」

私は正直に頷いた。

「これはトランシーバーではないよ。そうだな、未来型移動用電話、と言っておこう」
「電話?これが?」
「まだ、試作段階だけどね。きっとこれからはこの電話が主流になる。さ、着いたぞ」

車はいつの間にか木々に覆われた砂利道の上を揺れながら走り、1軒のログハウスの前で止まった。

リンは車を降り、後部座席の扉を開けると身を屈めて先生を抱きかかえた。
私も脇から支えるようにして、ログハウスの階段を上がった。

リンが扉を開けよう手を掛けたけれど、それよりも早く中から扉が開いた。

「お帰りなさい、リ……」

中から出てきた東洋人らしい女性は、大きく目を見張り後ずさった。


そして、彼女の口は、確かにこう動いていた。

「テツヤ」と。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ
↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります
「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪







お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.06.19 01:35:22
コメント(0) | コメントを書く
[第2章 泡沫の夢のように] カテゴリの最新記事


PR

Comments

小山千鶴@ Re:ひさしぶり・・・(06/20) koukoさん ご無沙汰しています。 本当に…
kouko@ ひさしぶり・・・ ご無沙汰です。 元気にしてますか?再開…

Favorite Blog

小学校でハープコン… 47弦の詩人さん

虹の空 じゅんち336さん
二十歳で母の、小説… 吉田なさこうさん
Emy's おやすみ前に… emy&acoさん
片桐早希 おむすび… 片桐早希さん

Freepage List

Archives

2024.11
2024.10
2024.09
2024.08
2024.07
2024.06
2024.05
2024.04
2024.03
2024.02

Profile

小山千鶴

小山千鶴

Calendar

Recent Posts

Category


© Rakuten Group, Inc.
X