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FLOWER GARDEN 2

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2009.06.22
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「そろそろ時間だな」
リンは腕時計に目を落とすと、椅子から立ち上がり、ゆっくりと私の方へと歩いてきた。

『リンは危険だ。陸軍士官学校のプロフェッサーというのはあいつの表向きの顔で』

ジョージの言葉が再び頭の中で、警鐘を鳴らしている……

リンの手が私の方へと伸びた時、咄嗟に目を瞑り、両手を顔の前でクロスさせ身構えた。
一瞬の沈黙の後、背後から多くの人々の歓声と高揚した女性の声が聞こえた。

「大統領夫妻は、今、ダラスの地に舞い降りました!」

何の声かと恐る恐る後方を振り向くと、そこには紙吹雪が舞う中、黒いオープンカーに乗りながら観衆ににこやかに手を振るニコラス・マイヤーズ大統領夫妻の姿がテレビに映し出されていた。

リンはコツコツと足音を立てながら、窓際に寄り掛かり、もう一度腕時計に目を落とした。

「僕達はヴォーンのような派手な爆殺なんて殺り方は全くもって好まない」

リンのピーナッツ・アイが微かに冷笑を浮かべた。

「但し、例外はある」
「え?」

私がリンに目を移すとほぼ同時に、テレビの方からクラッカーを鳴らしたような音が数回聞こえた。
悲鳴が聞こえ、テレビの画面が大きく揺れた。
大統領夫妻を乗せた車が映し出されたが、大統領は大きく後ろへと仰け反り、夫人の体も車のドアにくの字に折れ、2つの影はそのまま動かなかった。
黒づくめの男達が画面の外から集まったかと思うと、大統領を乗せた車を囲い、ピストルを構え、辺りを威嚇した。
アナウンサーの言葉にならない声が、今やマイクを通して絶叫となって私の耳に飛び込んできた。

リンは煙草を胸ポケットから取り出すと、ライターで火を点け、「あっけないもんだな」と呟き、テレビを消した。

「まさか……」
「大統領に敬意を表し」

リンは敬礼の姿勢を取ると、くくっと愉快そうに喉を鳴らした。

「今日はこれから新聞社は号外作りで忙しいぞ。そうだなぁ、さしずめ見出しはこうかな?『ニコラス・マイヤーズ大統領夫妻暗殺』」
「あなたは!」
「さて」

リンは煙草を捩じ消すと、じっと私を見つめた。

『あいつは……』

ジョージの言葉を頭の中で反芻しながら、椅子から立ち上がり後ずさった。

「どうやらすっかりお目覚めされたようだ。ミセス・マッカーシー」
「来ないで!」

ジョージはあの日……
リンと初めて対峙したあの日……
リンから私を隠すように背後に庇いながら小さな声で呟いた。

『あいつの裏の顔は全世界を統べるチャイニーズ・マフィアの首領だ』




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Last updated  2009.06.22 22:47:28
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