カテゴリ:第3章 約束の地へ
「まぁ、そんなに身構えなさんな。腹が空いたろう?用意は出来てる」 リン・イーレイは口の端をくっと上げると、テーブルの方を見て顎で杓った。 「アリシアはどこにいる?!」 僕はリビングに滑り込むと、暖炉脇にある火掻き棒を掴み、リンの喉元に突き付けた。 「くっくっ。君もジョージに劣らず、血の気の多いお坊ちゃんだな」 「ジョージ?!」 僕が一瞬怯んだ隙に、リンは棒を蹴り上げ、落ちてきた棒を空中でキャッチすると、僕の喉元へと突き付けた。 「形勢逆転だな。どうする?」 僕が答えずに睨みつけると、リンは火掻き棒をクルクルとバトンの様に回し、暖炉の脇に投げた。 「ミセス・マッカーシーは家に帰したよ」 「えっ!?」 「そろそろ約束の鬨が来た」 「約束?」 「そう。約束だ」 リンは暖炉脇にある椅子に腰を下ろすと、両手の指を組み、顎を乗せた。 彼は何を言っているんだ? ここは調子を合わせた方が良いのだろうか?それとも、知らないと正直に伝え、その内容を彼から引き出すべきなのか? 「もう君を送り込んでいたとは、フジエダも随分、用意が良いな」 僕を送り込む…… リンの言葉にはっとなって、顔を上げた。 僕がアメリカへ来たもうひとつの理由。 それを彼が知っているのだとしたら、その理由は…… 「もう少しで約束の鬨だ。準備に30年、ようやく……」 リンの冴え冴えとした笑みを見つめながら、確信した。 もう、運命が動き始めてしまったのだ、と。 ↑ランキングに参加しています♪押して頂けるとターっと木に登ります 「フラワーガーデン1」はこちらです。良かったらお楽しみ下さい♪ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.07.20 10:23:06
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