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2009.07.22
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カテゴリ:第3章 約束の地へ

リンは台所のシンクに寄り掛かると、腕を組み、僕を威圧的に見つめ笑った。

「君はどれだけのことを知っているのか?」
「……」
「まぁ、いいさ」
リンはふっと笑うと、シンクの横にあった灰皿を引き寄せ、煙草に手を伸ばした。

「ミセス・マッカーシーは、君達とマッカーシー、ヘイワーズ……そしてヒトラー提督との密約を知らんようだな」

リンの言葉に僕は思わず息を飲んだ。
どこまで知っているんだ……
この男は……

「人類史上最大にして、最悪の悲劇『ホロコースト』が、同時に人類史上始まって以来の壮大な茶番だったことは、聞き及んでいたかな?」

僕の心音は彼に伝わってしまうのではないかと思うほどに、そのリズムが乱れ、喉の奥に突然大きな鉛を飲み込んだような錯覚を覚えた。

「君達とマッカーシー家、そしてヘイワーズ家の歴史は、そう、日露戦争にまで遡る……」
「アリシアが帰ったと言うのなら、僕も帰らせて頂きます!」
「そう言う訳には行かないんだよ、坊や」

その場を立ち去ろうドアノブに手を掛けたが、リンの鋭い眼光が僕をその場に立ち竦ませた。
リンは煙草の火をつけると、ゆっくりと震える息の合間から煙草の煙を吐き出した。

「我々も合衆国も、君やマッカーシーを敵に回すほど愚かではない。だが、君達が約束を守らなければ……どうなるかな?」
「僕には何のことだか……あなたが何を言おうとしているのか、さっぱり分かりません」

リンはもう一度、ゆっくり煙を吐くと、唇を歪ませた。

「君は聞いたはずだ。合衆国に来る前に。君の家で代々伝えられるべき秘密を。行うべき行動を」
「僕がここに来たのは大学で勉強するためです。家のことなんか関係ない」

リンは僕の反論などお構いなしに、煙草を掌で握り潰し、話を続けた。

「ミセス・マッカーシーが、君達の本性を知って正気でいられるかな?」
「脅すつもりか?」
「ふっ。ようやく、話し合いのテーブルに着く気になったようだな」
「彼女に何かあったら……」
「僕を八つ裂きにする、か?」
「当たらずとも遠からずだ」
「面白い。では、そのギリギリのラインでの交渉を我々は楽しむことにしよう」

リンは口の端を上げると、右手を差し出してきた。
僕はその手を無視すると、窓辺まで歩き、扉を開けた。

アリシア、ごめん。
僕は君を守りたかった。
本当にただ、それだけだった。

目を閉じ、息を深く吸い込むと、僕はリンの方に向き直った。


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Last updated  2009.07.22 23:38:02
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小山千鶴@ Re:ひさしぶり・・・(06/20) koukoさん ご無沙汰しています。 本当に…
kouko@ ひさしぶり・・・ ご無沙汰です。 元気にしてますか?再開…

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