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カテゴリ:読書
「となり町戦争」三崎亜記著(集英社)読みました。
すごく好評の本でも読みたくない本がありますが、この本はすっと手がでました。 作家というのは、普通の人より数十歩先を走っている人のことなのだな、と素直に感じることができました。 そう、今、こういうことを考えてみたかったのよね、と。 本文中にはめ込まれている、お知らせや表も見過ごせません。 「となり町との戦争」から「との」をとって「となり町戦争」という本のタイトル。この「との」をとることによって生まれる距離感が、この小説の持つ空気感をよく表していると思われます。 読んでいて、胸に引っかかった言葉。 白兵戦、戦時特別偵察業務従事者、戦時特殊勤務手当、戦争事業、となり町戦争推進室、外部委託→戦争専門のコンサル、受注、公社、兵力の均衡、「闘争心育成樹」「鎮魂の森」「戦争でこんなによくなる私たちの暮らし」、情報公開制度、議会の承認、「戦争の音を光を気配を感じとって下さい」、自己の存在を否定したくなるほどの痛み、「ぼくだって死ねるもんっ!」、となり町と協力して戦争事業を遂行、 などなど。(ロマンチックな言葉は、ここではあえて選びませんでした。) さりげなく静かでやさしくおそろしく冷たい、読後感でした。 主人公の意志は「自分の意志によって失うこと」だった。 「雲が消えてもなお、そこに何かを見つけるかのように、」 未来と過去と今が、現在進行形の形をとっているようでありました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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