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2006.11.13
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カテゴリ:映画
FLAGS OF OUR FATHERS 父親たちの星条旗
 クリント・イーストウッド(監督/製作/音楽)
 スティーブン・スピルバーグ(製作)

平日の午後の部で観たためか、10人くらいの観客数で年配の方が多かった。

硫黄島を囲む無数の艦隊の映像が映し出された時は、その小さな島にいる日本兵のことを思って
瞼の奥が熱くなり、胸が痛かった。

映画の終了後、日本側から描いたもう一つの『硫黄島からの手紙』の予告編が上映された。
観終わってステージが明るくなった後に、ため息のような重く悲しい苦しさが、館内を浸したように感じられた。

『父親たちの星条旗』は太平洋戦争末期、日本軍の要塞であった硫黄島を占領するために繰り広げられた激戦を、実話に基づく原作をもとに作られた映画である。

この映画を観ながら思い出していた映画、


*『バンド・オブ・ブラザーズ』/スティーブン・スピルバーグ製作総指揮
これは、1~10話におよぶスペクタルテレビ映画だったが、衛生兵の活躍が目立っていた。
《戦いで血を流した者同士が兄弟の絆を感じる》(シェイクスピア;ヘンリー5世)
という言葉が、プロローグに引用されている。


*『ロング・エンゲージメント』/ジャン=ピエール・ジュネ監督
第一次世界大戦の仏独国境の戦場が圧倒的な迫力で描かれていた。
《昔々、五人のフランス兵がいて、戦場へとおもむいた。
 それが世間の掟だったから》(セバスチャン・ジャブリソ;長い日曜日)


*『アトミック・カフェ』/ラファティ兄弟、ジェーン・ローダー監督
戦意高揚のプロパガンダ映像のコラージュ。
アメリカのノリノリのお祭り騒ぎのような祝アトミックBOMB!の映像に、唖然としたものだった。


*『拝啓天皇陛下様』/野村芳太郎監督
被差別者と軍隊生活。


*『ブラザー』/北野武監督
大杉漣演じるやくざの割腹シーン、内臓を自分でつかみ出して死ぬのである。
アメリカに渡ったやくざの抗争。


つまりこれらの映画を観て感じたものと同じような主題が、この『父親たちの星条旗』にも読みとれたのだ。

《戦いで血を流した者同士が兄弟の絆を感じる》
だがこの映画では、仲間の深い絆を美化してはいない。
戦場で流した血の中身を、問うていると思う。
そのおびただしく流された血の意味について、問われていると思う。
兵士は写真を撮らない、英雄なんていない、のだ。

物語はフラッシュバックしながら、二つの星条旗の事実が明らかになっていく構成なのだが、その速度についていけない部分があった。
ハンク・ハンセン(最初の星条旗を揚げた・写真には写っていないが写っているとされた)と
ハーロン・ブロック(二つ目の星条旗を掲げた・写真に写っているが名を出すことを拒んだ)
両者の顔の区別がつかず、戦死の情況も見分けられなかった。
そこが残念だったが、速さは距離を伴うかのような、余計な情念を削った演出は成功していると思う。

いずれにせよ、日米双方からの視線による2作の硫黄島の映画が同時に作られたことに、最も深く感嘆するのだ。
「戦争」への戦いも時を経て進化していることを教えられた、と思う。

『硫黄島からの手紙』は12月9日より公開される。
この2作ともに、残された事実の原作が存在するということに、何か救いのようなものを感じるのだ。








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Last updated  2006.11.15 16:10:50
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