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2007.11.03
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カテゴリ:映画
BSで久しぶりにイラン映画を見ることができた。

●『こんなに近く、こんなに遠く』
  So Close,So Far  2004/イラン

 制作・監督・脚本 レザ・ミル・キャミリ
 音楽 モハマド・レザ・アリゴリ
 撮影 ハミド・コズィ・アブヤネ
 脚本 モハマド・レザ・ゴーハリ


たいへん精緻に作られていて、私にも映画の構成について理解できるような気がして、番組録画したDVDを何度も観た。

題名が表しているように、いろいろなことがらが細部にいたるまで、対比、対照、対称されてラストシーンへと、収束されていく。

例えば、生と死、都市(人工)と砂漠、都市と村の暮らし、男と女、父と息子、墓穴堀りと井戸掘り、富者と貧者、トヨタとベンツのマーク、ネクタイとスカーフ、キリスト教とイスラム教、抽象と具象、etc..
それらは、---こんなに近く、こんなに遠く---


冒頭、ペルシャ文字(たぶん出演者の名前と役名)が映し出されているあいだに、大封筒を乗せて走るバイク便が挿入されるのだが、これは死への招待状を持つ死神なのだと、後でわかる。

場面はガラリと変わって、著名な脳神経外科医アーラムのゲスト出演するテレビ番組の制作風景。
ここで、主人公の紹介がなされて、これは映画ですよ、ということを観客に確認させる仕掛けのようだ。「神の御名の下に」

隣のスタジオで磔のキリスト役者が携帯電話を受け取る様子、
アーラムが両手の指を組み合わせているのを見て、悪運を呼ぶと注意する老人、
診察室での停電の明滅、砂漠の地底のガソリンスタンドの不吉な数も、
みな、ラストシーンへの暗示となっている。


音楽も今まで見たイラン映画とは異なるもので、情感あるメロディーが美しく使われていた。
突き放したようなそっけなさではない、映画だった。
苛酷な砂漠の風景と共に、セリフもとても心に残るものだ。

ハジ(経験者の意らしい)

 ▼この荒涼とした砂漠も本質は別にあるのさ
  
  物事は二面的だ
  目に映る姿と 心に映る姿がある
  よい面もみないと

 ▼砂の大地と満天の星
  天文学もまた独自の世界観を持つ

 ▼昔の天文学は人の運命を知るための手段だった
  空にある月と星の位置からね
  星たちは光るだけじゃなく 話しかけてくれる

  砂嵐で人やラクダが埋まってしまったとき
  彼は星の声を聞いて“そこだ”と指をさすのさ

 ▼狭苦しい墓では死者が気の毒だ
  死者は青年の背丈に戻る

 ▼死んだばかりの者と花嫁は似ているんだぞ
  どちらも運命の館へ向かう


サーマーン(アーラムの息子、写真と手と声だけの出演)

 ▼星は星雲の中で産声をあげ
  星雲の中で死んでいくんだ 

  例外はなし

  今見ている星も 数百年前に死んでいて
  宇宙を旅した光だけが届いているのかも

  近くて遠いんです
  僕らの物差しで測れば遠い
  宇宙の物差しなら近いけれど
  気づく人は少ないので

 ▼NASAは2007年に太陽系外へ宇宙船を飛ばす
  これまでで一番遠い宇宙を目指すのさ

  無人の宇宙船だよ

  声のメッセージがその宇宙船に積み込まれる
  いろんな人のいろんな思いを
  はるかな未知の世界へ運ぶのさ









虫食い花梨の小さな実の中にも
宇宙が潜んでいるかしら?





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Last updated  2007.11.03 16:26:43
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