カテゴリ:ジャズ・フュージョン系
ハービー・ハンコックに、ニ度会ったことがある。
信じていただけないかも知れないが、本当の話だ。 一度目は、さる業界の実力者のご好意で、会食に同席させてもらった。 二度目は大阪ブルーノートのバックヤードを訪問させてもらった。 わたしは”心中するならハービー・ハンコック”とプロフィールに記載するほどのフリークである。 最初のお誘いをいただいた時、あまりに嬉しくて「断ろう!」と、非合理的な衝動に駆られた。 「まぁ、お気軽に・・・」というお言葉に甘え、おっとり刀ではせ参じた。 ハービーは、生意気にも”遅刻”したわたしをハグハグして歓迎してくれた。 いい匂いがした。 さる業界の実力者氏が、わたしを「ハービー、君の大ファンだよ」とハービーに紹介してくれた。 「どういうところが気に入ってくれているのか?」 そんなことを聞かれても、返答に困る。 なにしろ「心中するならハービー・ハンコック」なんだから・・。 「ALL・・・」 なんて、つまらない答え・・・。 わたしはハービーハンコックに聞きたいことがあった。 彼のキーボード演奏のスタイルについてだった。 大好きゆえかもしれないが、ハービーほど個性的な鍵盤ソロをとるプレイヤーは少ない。 ジャズに限らず、歌もののセッションやスタジオワークも、すぐ彼とわかる。 クィンシー・ジョーンズの売れ線アルバムのエレピの一瞬のパッセージを聴き、ハッと思ってパーソネルを確認したらハービーだったりした。 個性的とは、こういうことをいう。 得に彼のアドリブにおける「スリリングなスケールアウト」はいったいどうなっているのか、が長年疑問だった。 現在支配しているモードのちょっと半音上のスケールをパラパラと絶妙なタイミングで入るフレーズ。 なんとなく理屈はわかっているのだが、なかなか、あぁはならない。 まさに論語読みの論語知らず、である。 思いきってたどたどしい英語を駆使して、ハービーに聞いてみた。 具体的に”ユー・ベット・ユァ・ラヴ”のエレピソロを例にとり、うかがった。 かれは優しく答えてくれた。 だれも泳いでいないプールが目の前にある。 プールサイドに板でできた飛びこみ台がある。 飛びこみ台の先端に立ち、体重をかけると、 板がたわんで一瞬体重が軽くなる。 そしたら、飛びこみ台からフーッと飛べばいい うーん、名言というべきか、修行不足のわたしには「道のり遥か彼方と・・・」諦めるべきか。 それ以来、なにやら機会があると「飛びこみ台からフーッと飛ぼう」とはしている。 なかなか実現しない。 食事をしながら、楽しそうに話をしているハービーの横顔をしばらく眺めていた。 この男とマテリアルのビル・ラズウェルの出逢いがなければ、今もっとも商業的に成功している「ヒップホップ系」音楽は、現在の形ではなかったかもしれない。 すごい人に、腰低くワインを注いだんだなぁ、と思ったとき、背筋がぞっとした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.02.27 20:47:56
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