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楽天フリーバードの辛口音楽談義

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2005.02.27
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ハービー・ハンコックに、ニ度会ったことがある。
信じていただけないかも知れないが、本当の話だ。

一度目は、さる業界の実力者のご好意で、会食に同席させてもらった。
二度目は大阪ブルーノートのバックヤードを訪問させてもらった。

わたしは”心中するならハービー・ハンコック”とプロフィールに記載するほどのフリークである。
最初のお誘いをいただいた時、あまりに嬉しくて「断ろう!」と、非合理的な衝動に駆られた。
「まぁ、お気軽に・・・」というお言葉に甘え、おっとり刀ではせ参じた。
ハービーは、生意気にも”遅刻”したわたしをハグハグして歓迎してくれた。
いい匂いがした。

さる業界の実力者氏が、わたしを「ハービー、君の大ファンだよ」とハービーに紹介してくれた。

「どういうところが気に入ってくれているのか?」

そんなことを聞かれても、返答に困る。
なにしろ「心中するならハービー・ハンコック」なんだから・・。
「ALL・・・」
なんて、つまらない答え・・・。

わたしはハービーハンコックに聞きたいことがあった。

彼のキーボード演奏のスタイルについてだった。
大好きゆえかもしれないが、ハービーほど個性的な鍵盤ソロをとるプレイヤーは少ない。
ジャズに限らず、歌もののセッションやスタジオワークも、すぐ彼とわかる。
クィンシー・ジョーンズの売れ線アルバムのエレピの一瞬のパッセージを聴き、ハッと思ってパーソネルを確認したらハービーだったりした。

個性的とは、こういうことをいう。

得に彼のアドリブにおける「スリリングなスケールアウト」はいったいどうなっているのか、が長年疑問だった。
現在支配しているモードのちょっと半音上のスケールをパラパラと絶妙なタイミングで入るフレーズ。
なんとなく理屈はわかっているのだが、なかなか、あぁはならない。
まさに論語読みの論語知らず、である。

思いきってたどたどしい英語を駆使して、ハービーに聞いてみた。
具体的に”ユー・ベット・ユァ・ラヴ”のエレピソロを例にとり、うかがった。

かれは優しく答えてくれた。

  だれも泳いでいないプールが目の前にある。
  プールサイドに板でできた飛びこみ台がある。
  飛びこみ台の先端に立ち、体重をかけると、
  板がたわんで一瞬体重が軽くなる。
  そしたら、飛びこみ台からフーッと飛べばいい

うーん、名言というべきか、修行不足のわたしには「道のり遥か彼方と・・・」諦めるべきか。

それ以来、なにやら機会があると「飛びこみ台からフーッと飛ぼう」とはしている。
なかなか実現しない。

食事をしながら、楽しそうに話をしているハービーの横顔をしばらく眺めていた。

この男とマテリアルのビル・ラズウェルの出逢いがなければ、今もっとも商業的に成功している「ヒップホップ系」音楽は、現在の形ではなかったかもしれない。

すごい人に、腰低くワインを注いだんだなぁ、と思ったとき、背筋がぞっとした。



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Last updated  2005.02.27 20:47:56
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