大学病院という組織の中で医療と向き合い、
その矛盾と不条理の中で心が折れそうになっても
部下を指導し、上司にチクリと“
夏目漱石”風に
意見を述べる。11年目の医師、
栗原一止。
もうそんなに時間がたったのね~
引きの栗原もすでに中堅医師として、
研修医や新米医師と准教授との板挟みになっている。
通称パン屋と呼ばれる准教授の口癖。
「
一つのパンを大勢に分け与えれば、みんなが助からない。
だから、必要な人にだけ与えて助ける」
そうしなければ、病院のベッド数は限られているので、
必要な人に医療が提供できない。
理屈では分かるが、患者を選別するなんて
現場の医師としては苦渋の決断を迫られる。
まさに今世界中で蔓延している新型コロナウイルス。
このまま感染者が増え続ければ、
患者を選別しなければならない時期が来るだろう。
見えないウイルスに人間が翻弄されている。
新章 神様のカルテ [ 夏川 草介 ]