奴が来た(その2)
ギャー、出たぁ~~。TVを見ている僕の後ろで、突然お母さんの叫び声が響き渡る。そう、また 奴が現れたのだ。 お父~さん、早くっ、 早く助けてぇ~助けを求める娘の声が家の中に響き渡る。我が家は、お母さんに娘2人 そしてお父さんの僕。そう、頼れる男は僕一人。でも、僕は動かない。じっとしてさえいれば、奴が危害を加える事はないし それに・・・「新聞を、早くっ!」お母さんが娘に指示する。娘は丸めた新聞を手際よくお母さんに手渡す。 バシッ、バシッお母さんの反撃が始まった。「お母さん、こっち。 あっ、そっちに逃げた。」娘達も、応援に加わる。 バシッ、バシッ、バシッ、バシッ、バシッ、バシッ「お父さんも、早くっ」 応援要請の叫び声が。でも、僕は動かない。 だって、TV 良いところだから・・・逃げまどう奴。でも、3人がかりで追い立てらちゃぁ そうそう逃げ切れるモノじゃない。そして奴は、TVを見ている僕の方に向かって来た。まるで僕に助けを求めるように。 バシッしかし 奴が僕にたどり着くことはなかった。お母さんの懇親の一撃に力尽きたのだ。 僕の目の前で。「へっへっへっへっ 」お母さんと娘達の勝利の笑いが部屋に響く。そして「もう、お父さん。何も助けてくれないんだから。 とっても怖かったんだから、次からしっかりね。」 と いつもの台詞。僕は、奴をティッシュにくるみながら、心の中で静かにつぶやいた。 いや、本当に 怖いのは ・・・