今年は、イノベーションを意識しよう
昨年末で既刊8冊(監修を含む)の発行部数が456,500部となった。いずれもドラッカーの解説本であるが、今も順調に売れている。ドラッカーブームだから売れているのは間違いない。ただし、すべてのドラッカー本が売れているわけではない。1.『まんがと図解でわかるドラッカー』(宝島社)が235,000部2.『20代から身につけたいドラッカーの思考法』(中経出版)が86,000部3.『図解で学ぶドラッカー入門』(JMAM)が66,000部4.『図解で学ぶドラッカー戦略』(JMAM)が21,000部5.『20代から身につけたいドラッカーのマーケティング思考法』(中経出版)が19,000部「1」がメガヒット、「2」「3」が大ヒット、「4」と「5」がまあまあのヒットと言ったところである。あとの3冊も発売即重版だったから「そこそこ」とは言える。売れるには訳がある。と言っても「買って頂ける」ことが大前提であることは間違いない。ビジネス書における「よい本」とは“むずかしいことをわかりやすく、わかりやすいことをおもしろく、おもしろいけれど使える”でなければならないと考えている。私が『図解で学ぶドラッカー入門』を出すまで、ドラッカー関連本で「入門書」はあった。「図解書」もあった。しかし、いずれも経営の専門用語を用い、ドラッカーの言葉で図解していた。表現も一般的な経営用語や漢語表現が多かった。つまり、ある程度勉強した人たちを対象にしたドラッカー本だった。しかし、『図解で学ぶドラッカー入門』は「図解」と「入門」を組み合わせるため、専門用語、英語・漢語表現を極力使わずに書いた。そこにはイノベーションがあった。『ドラッカー経営戦略実践ワークブック』(秀和システム)はドラッカー本では初めての本格的なワークブックだった。ワークをともなうため、発行部数は9,000部(第4版)である。しかし、このワークに真剣に取り組めば、ドラッカー理論が実践できるようになっている。私がV字回復を支援しているコンサルティングでの経営者への「質問&課題集」である。ワークブックは山ほどあるが、ドラッカーというニッチ分野では初めての形式でありイノベーションであった。読者の評価は高い。『20代から身につけたいドラッカーの思考法』が発行されるまで、ドラッカーは30代以上の管理職の読みものだった。それを本書は、読書対象を20代からとした。そのためには、経験の少ないビジネスパーソンでもわかるように、さらにやさしくする必要があった。この本で新たな読者層を開拓できた。『まんがと図解でわかるドラッカー』は、長年の課題であった「もっと分かりやすくするために、ドラッカーを漫画で表現したい」との私の思いと一致したものである。それまでドラッカーをまんがで解説したものはなかった。いずれも編集者から企画をご提案頂いたものだった。しかし、ブームに乗っただけで売れたわけではない。いずれもイノベーションがあったから売れたのである。それは、それまでなかった読者層の開拓であり、表現や構成面での技術開発だった。とは言え、「無」から「ヒット」が生じたわけでもない。ドラッカーのいう「企業家的柔道戦略」や「創造的模倣戦略」(これらの内容については著書参考)である。既存のあるものとあるものを組み合わせたにすぎない。ドラッカーはそれがイノベーションだという。現在、あなたや周りの人が感じている不満や不便を、既存の何かと何かを組み合わせて解消すればよい。そのためには、現場に出て、よく観、よく聴くことだ。既存の市場は飽和状態であり過当競争であるが、新しい市場は無限の可能性があり無競争である。今年はそこにチャレンジしてみてはどうだろうか。