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テーマ:ささやかな幸せ(6742)
カテゴリ:日々の生活でしあわせ
とある美容師さんに髪の毛を切ってもらっています。
といっても、半年…もしくは1年に1度ぐらいしか切りに行かないので、担当者の男性は、わたしの髪を切ったことなどすっかり忘れています。それでもわたしは彼の元に通います。 理由のひとつは、いちいち美容院変えるの面倒だから。 もうひとつは、彼が美容師としてありえないほど無口だからです。 事務的な話以外一切しない。接客業には珍しく愛想のない人。「髪を切ってくれりゃそれでいい」と思うわたしは、世間話ひとつしないそのスタンスがちょうどよいと感じていたのです。 が、昨日、久しぶりに彼に髪を切ってもらったら、その愛想のなさで悩んでいることが判明しました。 いつものように、彼もわたしもお互いに愛想のないまま、仕事の打ち合わせのようにどんな髪の毛にするか相談したあと、淡々と髪は切られていきました。 淡々。たんたん。 すると不意に彼が言いました。「髪の毛切るのは久しぶりですか」 「そうでもないです。今日は半年ぶりぐらいだから」 すると彼はクククっと笑いました。 ???? どうやら、半年ぶりに髪の毛を切りいくことを、世間では「久しぶり」というようです。 そこから、なぜか彼は饒舌になりました。 今年が美容業界は景気の「底」。客足も鈍っているけど、来年あたりからは回復の兆しが見えるだろう。ほんの少しお金に余裕ができると、ちょっとしたことを変えたいという願望も湧くもので、美容にも大きな影響を与える。そのひとつがヘアスタイルを変えること。無意識に髪の毛を切りに行く回数が増えたりするんですよ……などという話をはじめました。 な、なんか美容師の世間話にしてはカタイ話じゃないのとは思いつつ、へえボタンを押し続けていると。 「でも、来年髪の毛切る人が増えても僕のところにお客さんはあまりつかないでしょう。愛想がないから。今も“底”とはいえ、確実に僕のお客さんは減っています」 シーーーーーーーーーーーーーーーン……。 重い沈黙が2人の間を流れ……。ま、まずい、まずい。フォローフォロー!!Let'sフォロー! 「か、髪なんて。髪なんてちゃんと切ればそれでいいじゃないですか」 「その考えはあなたが少数派だから出てくる発想です。通常の女性客は、世間話でもしながら楽しくおしゃべりして髪の毛を切りたいと思うものなんですよ。自分にはそれが欠けてるんです」 シェーーーーーーーーーーーーーーー……。 しかしそれから彼は、自宅から徒歩10分ぐらいのところにあるバーに1人で通っていること、そのバーのマスターは10年来、彼が髪の毛を切ってあげている客であること、マスターから愛想よくしろと言われたこと、来年は愛想をよくすることが最大の課題であることなどを、かなりボソボソとした小さな声でしたが、ダダダダダーっと話しました。 ま、まあ、話の内容が内容とはいえ、ちゃんとしゃべれたので一安心。しかしわたしは、彼に愛想笑いはまったく似合わないと思うし、突っ走ってもらいたいところですがね…。久々に同類を見た気がしたので、なかなかおもしろい1日でした。 ■「四つ葉のフクロウ」トップページへ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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