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約1か月ぶりに夕学を受講する。
雅楽師,東儀秀樹の「すべてを否定しない生き方」である。同名の書籍が上梓されていることは知っているものの読んではいなかったのだが,自分と同い年である彼が語る「生き方」なるものに興味を持ったので,受講することにした。 白いシャツにジーンズ姿で飄々と登場した雅楽師は,笙,篳篥,龍笛の音色なども交えながら,静かでありながらも些か早口で,思いつくままという感じで語った。 宮内省を飛び出し,国境やジャンルを超えて共演する彼の演奏活動から,ボーダレスを目指す演奏家なのだろうという私の勝手な認識を彼は冒頭で強く否定した。「すべてを否定しない」とは「すべてを肯定する」こととは全く違い,個々の違いを認めながらそれに迎合するのではなく,自他の境界線を見極めた上で自分をしっかり持っていられることであるという。 穏やかな印象の口調とは逆に,楽家の血筋と宮内庁楽府で鍛え上げた技術に裏打ちされた雅楽のスキルに対する絶対的な自信や,あらゆる面で揺るがない確固たる自分のスタンスを持つ強さが言葉の端々に現れる。 目標を定め,それに向かって一直線に突っ走るのではなく,目標を持たずにキョロキョロしながら今を面白がってあちらこちらへ寄り道をすることが大切ではないかと語りかけ,思い立ったことはやってみる,壁にぶつかったときは先に進まない方が良いのかもしれないと考えてよじ登って無理に乗り越えようとするのではなく,後戻りすることを恥ずかしいと思わない,自分の好き嫌いをはっきりさせた上で集団の中にいられればよい等等の言葉は,私の心の中の,普段は黙殺し,押さえ込んできた部分を刺激した。 今はいろいろな事に興味が広がっていて,趣味もどんどん増えているという点は,私の現状と似ていると感じた。詳しくは語られなかったが,政治や教育に対する意見もいろいろあるようであったし,余談として出た雅楽用語が一般の生活の中に溶け込んでいる例についての話も面白く, それらについて書かれているという著書を読んでみたくなったのは,見事に宣伝戦略に引っ掛けられたということらしい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007年06月12日 23時41分59秒
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