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2005.06.12
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カテゴリ:読書
とても静かな時の流れる小説だ。
約10年の歳月を、ひっそりと短編で綴っている本作は、
時間と共に濃厚なだしが出るみたいに、
読み進むほどに、じんわりとした、小さな、ごく小さな感動が、
大きなものへとなっていくのだ。

まず何より凄いと思うことは、
これを書いたのが男性だということだ。

ある一人の女性が「運命」について、
思いあぐねながら過ぎ去る日々を静かに描いた本作は、
その時々に感じる想いや、
まわりの人々の投げかけるものへと巡らせた想いを描いている。

主人公である亜紀は
私にとってあまり共感できる女性では無かった。
むしろ、反感を覚えるほどでもあった。

それなのに、
それだから?
彼女という運命について、客観的に眺めているうちに、
私自身の運命や人生について、
振り返ったり、未来を想像したり、
とてもとても沢山の事柄を考えさせられた。

時間の経過を描くための演出なのかもしれないが、
その時々の社会情勢―例えば、宇多田ヒカルの出現、神戸の震災など―を
多く用いているのだが、
読んでいる最中は、これらに興味を持てなかった、
というか、反則だとも思ったりしたくらい、
つまり、本書にとって不必要なものだと思っていたのに、
それらが巧く繋がっていき、
最終的には、これらも計算しつくされたものなのかもしれない、と思うと、
つくづく、白石一文という人のすごさを実感してしまう。

それでも正直、まだまだ成長過程というか、
もっと適切な表現はあるような気がするから、
彼は作家としてもっともっと「より読ませる文章」を書けるように
成長する必要があるようにも感じる。

なんというか、とても未完成な作家さんという印象なのだ。

とはいえ、一見普通のようでいて、
その実、素晴らしくも個性的な人のようにも思う。

ひとつの作品を読んで、
反感と感動・・・つまり、好意的な気持ちと、その対極にある気持ちが、
同じくらいの量で現れるのは、
なんだかとても稀で、不思議な気持ちだけれども、
そういう形で、響くものを書けるということが彼の才能なのかもしれない。
あくまで私にとって、だが。

セカチューとか、
いま会いとか、
ど真ん中な恋愛小説がブームを起こしている現在だけど、
これらが若者向けのものだとしたら、
本書は大人のための愛や人生を描いた小説なのではなかろうか。

著者の作品は、今回初めてだけれど、
「僕のなかの壊れていない部分」とか、
「一瞬の光」とか、
その独特で、かつ、印象的なタイトルに、
いつも気になっていた作家だった。

そして本書は、友達にプレゼントでもらったものなのだが、
これを選んでくれた友達に、ありがとうと言いたくなった。


やはり、印象的なタイトルをつけれる才能というのは、
印象的な文章を描ける才能に直結するのかもしれないな、なんて思ってみたり。

私という運命について






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Last updated  2005.06.13 03:12:49
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