カテゴリ:子育て/教育
文部省の「情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会」の結論が発表された。乳幼児の育て方と人格形成に関係がある、という立場は私自身が「<子育て法>革命」(著作)で示しているので、興味を持った。
概要を読んで、この会の議論はかなり拙速であると感じた。検討会が認めているように、メディア接触と人間の発達などの関係はよくわかっていない。愛着形成についても同様だ。だから幼い頃に保護者が手厚く育てましょう、という誰も反対できないスローガンに合意することになった。 気になるのは、これからは「脳」に注目しましょう、という路線である。「キレる」子の脳に、何か特異な問題がある、ということを実証するには、「キレる」子の判別と異常な脳の判別の両方が必要になる。この2つの判別は、どちらも恐ろしく難しいだろう。発表されているように、健常児のデータがとれない、という問題がでてくるにちがいない。 それは、人間の品定めが必要になるからだ。人格への影響は、簡単には検証できないから、いつも推測で語られる。ケータイを持つと○○になる、ゲームをすると○○になる。動物行動学を人間にあてはめる。それができたらラクだよな、と社会学者のはしくれである私はいつも思う。 ある日突然「キレ」て重大な犯罪を起こした子が、それまではいたって、フツーの子だった、というのがよくある話だ。じゃあ、ときどき「キレる」子って、どんな子?そういうよくいる子たちを集めて、脳を調べるのだろうか。 ゲーム脳のことを書いた本の記述が忘れられない。システムエンジニアの脳とゲーム漬の子の脳が似ていたそうだ。もしそれが「悪い脳」だとしたら、SEにとんでもなく失礼な話である。その子はもしかすると、将来エンジニアになるかもしれない。 文部省の方々には、もうすこし幅のある人間観にたって教育を議論してもらいたいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005/10/29 10:45:36 PM
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