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テーマ:本日の1冊(3697)
カテゴリ:古代史 <出羽の国>と<日本>
東北地方の古代史の教科書、とよべる本だ。
わかりやすいし、内容がおもしろい。おすすめの一冊である。 まず、新井白石、本居宣長、金田一京助など著名な研究者の、 江戸時代からの縄文人や蝦夷、アイヌの研究の解説からはじまる。 蝦夷といわれた人々をいろいろな角度からとりあげ説明していく。 このブログのタイトルになっている”エミシ”という言葉も詳しくとりあげている。 エミシという言葉は、物語として古くは日本書紀の日本武尊の東方遠征の 記述にみられるのだそうだ。 エミシを指す呼称は、はじめは、関東地方の人で、毛人(エミシ、エビス)、 東北地方になり、蝦夷(えみし)、北海道では蝦夷(エゾ)と いうように変わっていく。 その変化を時代の流れと その地域の歴史にそって説明を加えている。 蝦夷の社会構造(4章)と英雄の後裔(5章)では、古代の 蝦夷の社会とはどういうものだったのか、を解説する。 文献だけではなく、遺跡も考慮し、推測をしているところがいい。 特に、10世紀末の防御性集落に着目。この本によれば、防御性集落とは、 ”東北地方北部や北海道の1部(道南地方)に存在する、 平安時代後期の、堀・柵や土塁を設けて集落を囲み、あるいは 集落を高い山の上に移し、自然の渓谷とその斜面を天然の堀とするなど、 さまざまな方法で敵の攻撃に備えた集落のこと”であり、 歴史の教科書で習う、”いわゆる西日本の弥生時代に代表される、 高地性集落とか、環濠集落とかのことである。” これは、国や地域にあまり関係なく、ヨーロッパや中国など他の世界の国々でも、 抗争のあったところにはよくある集落なのだそうだ。 あまり知られていない、東北や北海道でもあった、激しい抗争の時代のことを知った。 古代蝦夷の世界では、大和朝廷、和人との交流、接触などにより紛争が増え、 族長に率いられた集団間の対立構造がはげしくなったのだ。 その関係は、ローマとケルト人、ゲルマン人との関係に例えられる。 エミシの族長といわれ、有名になった人物(英雄)や氏族には、 吉弥侯部(キミコベ)、伊治公砦麻呂(コレハリノキミアザマロ)、 道嶋一族(牡鹿連)、阿弖流為、母礼(モレ)などを挙げていた。 (右の本の表紙は、鹿島神宮に伝わる、阿弖流為の顔像(悪路王首像)) 古代の東北のあり方を理解するのにとてもわかりやすい。 これがのちのち、日本の歴史に影響を与えていくこともおもしろい。 多岐にわたる内容が凝縮されていておもしろいのだが、 特にお勧めなのは、前九年の役(奥州12年戦争)や後三年の役の解説の内容だ。 いままでいろいろな本を読んだが私にはこの本が一番簡潔でわかりやすいと思った。 少し長くなったので次回につづけたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年05月16日 13時53分07秒
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