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テーマ:あの日・あの時(104)
カテゴリ:半生
その日の夜遅く、救急車で来院した患者さんは突然の頭痛と嘔吐で発症したお約束のくも膜下出血の患者。再出血を防ぐ処置をしながら、発症後6時間を経過してから脳血管撮影を行った。原因は前大脳動脈瘤の破裂。3人がかりで、動脈瘤手術に。血圧の管理も麻酔導入も完璧と思っていた。
しかし手術が始ってまもなく、正確には開頭といって骨に窓を開けてしばらくしたら、急に硬膜という脳を覆う膜が張ってきた。術中破裂->脳腫脹だ。その様子は今までみた事もないようなひどさだった。くも膜下出血では発症のその時に約半分の人が亡くなると言われている。その光景が今目の前で起こっているのだ。顕微鏡の用意はしているものの、これでは手術にならない。しかもこれだけ激しい出血では、後遺症も重度と予想される。最悪の事態だ。どうしようか? ということになった。血圧はまだある。 1:ここで、撤退し、保存的治療に切り替える。 2:なんとか出血源を処置(脳をある程度犠牲にしても) の2つの方法が考えられた。 この症例の場合1の方法では、殆ど望みがない。 手術を許可してくださった家族に報いるためには最低でも動脈瘤の処置をしておくべきという結論で2の方法を選択した。 一般に手術中の、しかも動脈瘤の顔を見ていない時点で動脈瘤が破裂すると結果は悪い。この場合も結果はあまり良くなかった。ただ、もし同じ事がいま流行のカテーテルを用いた手術中に(カテーテル導入前に)起こっていたら、おそらくもっと大変だっただろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.05.24 20:24:06
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