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テーマ:仕事と健康(70)
カテゴリ:半生
”その日、交通事故で、23時ころ病院から電話があった。
電話に出て待っていたが、病院から救急室になかなかつながらず、一方的に電話を切る音がした。 なんのことやらと思っていた。 23時5分にもう一度電話。 管理室の人間がすぐ来るようにという。 看護婦に代わり、レベル300(深昏睡)ですぐきてくれという。 Drに変わって病状を教えてほしいというと、今IVHをとっていて手が離せない。という。 素早くルートの採れるべニューラでなく、時間のかかるIVH用のカテーテルをとっていると言うだ。 当直Drはこれは脳外科の疾患だし、すぐ来いという。 病状が判明し、命に関わることだから、救急室に向かった。 23時12分病院到着。目だった外傷なし。意識300で呼吸もほとんど停止。 対光反射なし。瞳孔散瞳 血圧測定不能。 脳死に近い状態だ。 CTをまだとっていないので(つまり、脳になにかあるどうかも押さえてないのだ)、 挿管をして、用手人工呼吸しつつ脳CT施行。 脳出血なし。 脳挫傷なし。 ナースに聞くと、この症例は来院時より瀕死の状態(ショック状態)だったという。 要するに、意識が悪いのは何らかの原因で、血圧が下がっていたからだ。 脳外科うんぬんの状態にはなく心肺蘇生、一次救命が必要な症例だった。 一次救命はDrの免許を持っているものなら、誰もができないといけないのだ。 この後、上層部からより、呼んだ場合は (グダグダいわず)気軽にきてほしいとのコメントがあった。 狼少年の話ではないが、なんでもかんでも脳外科を呼ぶから病状を聞いたまでだと反論した。 今回の症例では、当直医師が人工呼吸をして、場合により心臓マッサージもする必要があった。こういうことは、一般の人だってできる人がいるのだ。 呼吸が停止しかかっていて、血圧の下がっている患者さんにする処置は、 ある段階までは同じで、医師としての基本中の基本の処置。 その努力もしないで、他の医者を機械的に呼ぶのは僕には受け入れられなかった。 意識がない->はい、脳外の考え方が裏に見えるのだ。 それでは助かる人も助けることができない。 もし僕があの晩当直医だったら、少なくとも誰かに連絡するまでに 挿管、静脈ルートの確保+採血、昇圧剤の投与を完了しているだろう。 医師の数ではない、質の問題なのだ。 何千人医師がいても、何が一番大切で、何を優先すべきかを早く判断して、適切な処置を適切なスピードでできるDrが一人もいなければ、助かる命も助からないだろう。 また逆に、できる医師のところに、大変な役がどんどん回ってきて、できる医師は疲れて辞めていくのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.05.28 10:11:21
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