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テーマ:あの日・あの時(104)
カテゴリ:半生
耳鳴りと軽い顔の痺れを訴えてきた40代の女性。
MRIで耳の奥、錐体骨に張り付いたような脳腫瘍(おそらく髄膜腫)が 見つかった。 この手術は最低でも10時間ほどかんばる必要があり、この施設で手術に持っていくか、他に紹介するか迷った。 迷ったときは患者さんと良く話すのがいいのだが、その前に自分の意見を決めておかないといけないと思った。 この施設で手術可能と思ったが、手術をしてちょっとして転勤することになる。 それでは手術を許してくれた患者さんに申し訳ないと思い、 自分の意見は ”他院で手術をしてもらいましょうか” ということで面談に望んだ。 ありがたいことに患者さんは、僕に手術をしてほしいとおっしゃってくれた。 転勤の事や、僕の技量、経験、体力なぞを正直にお話。 DrHならより多くの腫瘍を摘出してくれるだろうと思い、 DrHの病院も候補に挙げたが、 最終的に患者さんは、大学病院での手術を選択し、紹介した。 --- 後日紹介状の返事が来て手術の結果を見た。 予想通りほとんど摘出できてなかった。 手術で採取した腫瘍を検査して(生検という)、 良性の髄膜腫であることがわかった。 手術による後遺症はなく、症状は半分程度に軽減したという。 大学病院の術者がすばらしい判断をしてくれて、良かったと思う。 腫瘍を殆ど取らずになにが、すばらしいんだ?! というご意見もあるだろう。 手術による後遺症がないということは、非常に大事なことだ。 場合によっては腫瘍をとることよりも大事だ。 なぜなら、もし脳の手術で大きな後遺症を出してしまったら、 次の手術はないからだ。 腫瘍をできるだけたくさん摘出することも大事だが、 今はガンマーナイフ(より進んだ放射線治療)という選択枝があり、 手術で取りきれなくても、 残った腫瘍をこの治療で、できるだけ大きくならなくする方策もある。 初めからガンマナイフという選択枝もあるが、腫瘍が良性か悪性かを決める必要があり、やはり腫瘍をできるだけたくさん摘出する努力も大切なのだ。 みんなが神業をもっているわけではない。 100人上手くいっても1人で大きな後遺症を出したら その患者さんとご家族に申し訳ないと思う。 今の世の中では絶対にうまくいく保証がないかぎり、 より安全な選択枝を選ぶのが適当だろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.06.16 17:09:57
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