|
テーマ:あの日・あの時(104)
カテゴリ:半生
救急指定病院だから、救急患者の対応をしないといけない。本当は気はすすまないが、これが仕事だから、四の五の言ってやらないと。 やるときはやるんだなあーって思ってもらう必要もあるしね。 その日はくも膜下出血の患者さん。左の内頚動脈瘤の破裂だが、意識混濁もなく、全身の状態も良好。手術で治療することになった。また血を見ないといけないか・・・ 好む好まないは別にして当然のように手術助手に入ってお手伝いをしていた僕。 全身麻酔し、開頭して顕微鏡を導入問題の内頚動脈瘤は視神経の外側にあるから、場所も見つけやすい。脳も腫れ上がってなく、順調すぎるほど順調にすすんでいった。 破裂した動脈瘤を同定して、動脈瘤の首根っこにクリップをかけた。その瞬間、激しい出血!!動脈瘤が首根っこから裂けて、飛んでしまったのだ。内頚動脈に穴があいて激しく出血・・・話には聞いていたが、ここまで激しいとは!! こういう場合助手である僕は太目の吸引管で出た出血を吸引して 視野の確保をするのだが、術者はなぜかなんとか自分で押さえ込もうとしていた。脳は腫れて来るし、血圧は下がってくるし 麻酔科の先生に露出した頚部で左頚動脈を圧迫してもらうが、出血は下火にならない。これはダメかもしれない、ダメかも・・・ そのとき思い出したのは学会で児玉教授と安藤先生の言葉 心臓が止まる直前に最後のチャンスが来ます。/児玉南海雄教授 あきらめたらそこで試合終了だよ。/安西先生 術者も(出血が)止められない・・・何とかならないか・・・ておっしゃってるので、 ”先生心臓が止まる前に最後のチャンスが来る”って、児玉教授が言ってましたよと申し上げた。 実際、出血により血圧が 低下し、出血量が低下。そのおかげで視野が開け、なんとか修羅場を脱出。止血し血圧ももどり、術中死をまぬかれた。 あれから3年経つ 患者は今年の秋に近くの施設に転医。あの時あきらめていたら、あの患者の未来はなかったろう。僕は命のやり取りをする職場にいることを改めて実感させられる出来事でした。
お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.10.21 16:58:45
[半生] カテゴリの最新記事
|