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あるDrの半生(反省)by ge5999

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2014.05.30
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カテゴリ:オーベンの御言葉
院長あてにくも膜下出血の手術後の患者さんの御家族から手紙がきて、僕も見ておくようにと、回ってきた。
手術が失敗しているとか、院長は手術後一度も病室に来なかったとか、僕がエレベーターであった時に冷たい態度をとったとか、こちらとしては全く身に覚えもない恨み節がつづってあった。
悲しい内容だ。
もう3年たってしまって、請求権が消滅し、裁判が起こせないから手紙を書いたというのだ。
ま、おそらく裁判をするつもりで弁護士のところに行ったのだろう。そしてもう時効であるとか言われたか?
この患者さんは急性期水頭症のない、くも膜下出血 多量出血の重症(グレード4)で、早期手術の適応がないと診察医が判断。待機手術を選んだ方である。
その頃日本では軽症の患者さんについては早期手術(72時間以内)が主流であったが、この患者さんについては診察医師の判断で14日以後の待機手術となった。もちろんこの際、手紙を書いてきた御家族には十分説明をして、手術の必要性危険性、しない場合にどうなるか、早期手術と待機手術の比較、詳しく文書で行い家族に選択してもらっている。同意もばっちり取っている。患者さんの御家族がこの治療を選んでいるのだ。
待機手術というとゆっくり待つという感じで楽なようだが、それなりに大変(患者さんにもスタッフにも)。はっきり言って、72時間以内に手術をした方がよっぽど楽だ。
待機手術では14日間、部屋を暗くして、場合によっては鎮静剤を使用し、意識もうろうの患者さんに褥瘡ができないように2時間置きに体位変換をし、シモの世話を24時間体制で行い、拘縮予防のリハビリテーション、全身の管理、血圧の管理、栄養の管理も行う(もちろんこれを行うのはすべて当院の医療スタッフと僕の仕事である)。
その後血管攣縮というくも膜下出血特有の不幸な合併症で中等度の麻痺が出現し、最終的にやや改善したが杖歩行となった(手術の合併症ではなく、この病気の合併症なのだ)。

重ねて言うが、手術は病気による麻痺が出現して落ち着いてからの施行であり、手術前後に症状の悪化はない。
くも膜下出血は発症すれば40%の人が死亡か重度ねたきりになる病気だ。もとの生活に戻れるひとは25%程度。これは病気全体の頻度で、この患者の年齢で、ましてや来院時の重症度が高い場合は患者さんがもとの生活に戻れる確率はより少ない。
つまり、医療サイドとしてはこの人は杖歩行ができる家庭内自立の症例で、かなり幸運な症例といえる。しかしながら、患者さん・御家族にとっては
”手術したのにこんなになった。手術が失敗した。手術が遅れた、めんどくさいから待機した”
の印象なのだ。 もう一度言うが、それを言うなら待機手術の方がよっぽどめんどくさい。
逆に裁判を起こしてくれてもよかった。その場合本来こちらが正当性を示す必要はまったくない。裁判では訴えた方が自分の主張の整合性をしめす必要があるからだ。

こちらには治療の正当性を示す資料はバッチリ用意してある。リハビリ病棟も含め、医師の診察はほとんど毎日行われている。もちろんエレベーターの中でうんぬんの下りについても全くない。裁判の中でしっかり主張することができてよい。
・・・裁判しても勝てないーそういう判断だろう。
そのような判断で、選択肢として患者さんの御家族が取った唯一の行動が今回の手紙の送りつけということだと思われるのだ。
DrHが言っていたことを思いだした。
”どんなに説明していても、どんなに努力しても、結果が悪いと患者・家族に恨まれる。”

医療サイドとしては満足な結果が得られていると思う症例でも訴訟のリスクがあるということを肝に銘じなければならない。





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Last updated  2014.05.30 17:04:07



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