ここのブログで知り合った玲さんの朗読の会が開かれた。私の高校時代の友人からのつながりで、演劇役者にして朗読活動もしている人がいて、そういったことを書いていたからつながりができたのではないかと思うが(<覚えてないのか?)、とにかく、玲さんの公演初鑑賞である。
今回のタイトルは「怖きもの 汝の名は女」。言うまでもなくシェイクスピアのもじりであるが、小泉八雲の『怪談』から採った、女性の話を朗読していく。後半は茨城の昔話(?)に題を採った「手まり歌」。日露戦争頃を扱った作品。
最初、アングラか?と思うような怖さがあったが、それも今回のような怪談特集のせいかもしれない。女性5人の朗読を中心に、歌と舞踊を取り入れた構成で、クラシカルな話を声として鑑賞するのに加えて、モダンな構成を楽しめる。最初の「アングラか」といった違和感は瞬時に消え失せ、いつしか朗読で紡ぎ出される世界に引き込まれていく。会場はとても小さいのだが、語りが進むにつれ、舞台が広がって見えるのがすごいところである。
2箇所ほどアクセントで「あれ?」と思う部分もあったが、おおむね滑らかな語りで、女性を主人公に据えた作品にふさわしい。自分は淡々とこなしていく仕事はあっても、こういう情感を込めて読むという行為は絶えて久しい。古典をやっているのだから、そういう部分を忘れてはいけないな、と、先日の「平家」に続いて思うのだった。
出演の朗読者5人は皆、和服をぞろりと着て登場。下は洋服でそれに羽織る形で、帯の締め方もそれぞれ。怪談話にふさわしい崩し方であった。テルミンを使って不思議な音を出しながら、<かごめかごめ>。この歌も不気味である。
前半の「怪談」は「幽霊滝」「振袖」「雪女」の3つの朗読に、歌「ひとさらい」を交える。玲さんは「振袖」―明暦の大火となった振り袖火事の話―をソロで朗読(他は少しだけ出演)。たたられる女・たたる女・人間ではない女と異なるパタンの女性像を描いていく。
出演の歌手小橋寛子さん作詞の「シュンカとシュウトウ」はピアノ・テルミンの伴奏に加えて舞踊が入る。久保田早紀の詩に似た、美しい和語で構成された詩である。
最後が「手まり歌」。女の情念の濃さ、そしてさまよう魂が交錯する話で、かなり怖い。オリジナル脚本らしいけれども、元の素材は茨城県の昔話のようだ。5人の出演者がそれぞれの声を活かした配役になっている。玲さんは登場しているけれども、声の出演がないな……と思っていたら、最後の最後でかなり重い役が与えられていた。本当に哀れなのは誰か?ということを考えさせられる内容であったが、朗読劇としての演出がそれをさらに効果的にしていたのではなかろうか。
第2回公演は9月29日、恵比寿だそうである。今度はアルコールも出るらしい(笑)。