国立劇場40周年記念ということで、「弁慶二態」という企画公演があった。能「安宅」の小書<延年之舞>の時に舞われる弁慶の延年ノ舞(宝生流のみに伝わる)を舞囃子の形式で近藤乾之助さん。もう1つは、吉右衛門さんの弁慶で歌舞伎「勧進帳」。せっかくあぜくら会に入っているというのに、電話予約がちょっと遅れたら瞬時に売り切れた。がっかりしていたら、さる筋から文化庁経由の招待券を回していただくことができた。
2階下手側で舞囃子はこちらに向かっているし、花道も見えるし、なかなか良い席。乾之助さんの弁慶は、削りに削った芸能である能らしく、背景のない(しかも舞囃子なので劇としての装束付がない)舞台で、極度の緊密した空間を描き出す。関を越えられたとわかってなお緊張感のある弁慶の舞が浮かび上がり、息詰まる25分間だった。能の囃子はこういう大きな劇場空間には似合わないけれども、それでも亀井忠雄さんの掛け声が凄まじく、これまた宝生の凛々しさと融合して素晴らしい。
義経・弁慶の文芸の広がりについては、相模原の非常勤先で前期の小課題の1つに出した。なかなかの力作もあって面白かった。近年でもコミックスやミステリで取り上げられる2人だが、教科書教材に少ないのは何故だろう?これだけ長く愛されている人物も少なかろうに。