音に聞く「胡徳楽コトクラク」を上演ということで楽しみにしていた、国立劇場40周年記念の雅楽公演。明治期に途絶え、国立劇場開場で復活となった作品。勿論初めての鑑賞である。
今回は左方が「五常楽ゴショウラク」。こちらは比較的上演頻度の高いものだが、多くは「五常楽 急」とかあって序破急の「急」の部分のみだったりするが、今回は音取から通しで行なう(約45分)。こうやって通しで観ると、展開がはっきりして面白い。気が遠くなるほどゆったりとした所があってこそ、急も活きてくると感じる。
右方が「胡徳楽」。舞楽では珍しい、はっきりとしたストーリーがある。登場人物は4人の客と勧盃ケンパイ、そして瓶子取ヘイシトリの6人。勧盃がこの家の主人といった感じで、その人を中心に盃を回していく話なのだが、盃を回す役が瓶子取。腫面というぶざまな表情の面をかけた男が無類の酒好きで、皆が揃う前から、懐に隠した盃で盗み呑み。人から人へと回す間も盗み呑み。驚くことに、この間のやりとりはアドリブだという。おそらく稽古といった形でやってはいるのだろうが、きちんと決まった型ではないらしい。瓶子取の動きを見ていると、会場中も大笑い。雅楽でこういう笑いというのは珍しい。
最後は勧盃、客人が退出。瓶子取も千鳥足ながら、彼らの退出の姿を真似て出て行く。神楽でいうモドキのような感じ(というか逆か)。二の舞も腫面を使うし、真似のおかしみにこの面がふさわしいのだろうか。
幸せな気分を堪能できたが、雑事に追われて停滞していた論文執筆は、はかどっていない。こういう舞台を観ている間に、見えないこびとさん達が片づけてくれてたら良いのに(←バカ者)。