なぜ怖い映像をトレード前に見てはいけないか
きょうは株と恐怖というテーマで、なぜトレード前に怖い映像を見てはいけないかを探りたいと思います。とある本を読んだところ、その理由がはっきりと見えてきました。 始めに、7月13日のブログで「怖い映像はトレード前に見てはいけない」というコラムを書いたことに触れておきたいと思います。 内容は、自動車運転免許更新の講習時に交通事故で死亡した方の映像を見たあと、後場の売買では、いつもならば買い増すところを恐怖感から売ってしまった、というものでした。これは今月で一番負けたトレードでしたので、トレードの後も負けた原因を考えていました。 偶然、スクーリングの準備で読んでいる参考文献で、「恐怖説得」という説得方法を定義しているのを見つけました。文献は、「説得と影響 交渉のための社会心理学」榊博文 ブレーン出版 (2002)です。このなかで私が考えていた原因への答えが隠されていました。 7月13日の売買記録を振り返ると次のように書いていました。引用します。「今月で一番やられました。10時半から近所の警察に自動車の運転免許の講習にいって、戻ってきたら何だかリズムに乗れません。9609 ベンチャーリンク 3000 248 売り 持ち越し分 -63000円・・・(途中略)・・・きょうは振るい落としへの対処が甘かったです。が、自動車の運転免許の講習で事故のシーンをたくさん見たり、即死した人の映像を見たりしてしまったの関係ないと思いますで、潜在意識の中で何か恐怖のよ うなものが芽生えたのでしょうか。シートベルトをせずに頭をガラスにたたきつけられて即死しているカップルの映像は本物でした・・。足はぐちゃぐちゃだ し、真っ白になった手がだらーんと伸びていました^^;」 次に、「説得と影響 交渉のための心理学」から引用します。「 恐怖説得 相手に脅しをかけ恐怖心をおこさせるというのは、昔からある説得の技法であり、今日でもよく用いられている。母親は子供が言うことを聞かなければおもちゃを捨てるとか、ご飯を食べさせないと言って脅し、警察署での運転免許更新時には、安全運転をしなければこんな悲惨な事故にあうという映画を見せる。運転席の人形が吹っ飛ぶシーンを見せて、こんな目に遭いたくなければシートベルトをせよという公共広告もある。 相手に脅しをかけ恐怖心を呼び起こし、それに対する対処行動・勧告行動を呈示することによってその行動をとらせる恐怖説得( fear arousing persuasion, fear appeal persuasion)は数あるテクニックのなかでも特に有効なテクニックである」 私が運転免許更新時に見た映像は、その目的が恐怖心を植えつけるものであり、ブログに書いたことはあながち間違っていなかったようです。恐怖説得という手法で、恐怖心を感じさせるように作られたもので、私が感じた恐怖心のようなものは作成者の意図どおりだったということがわかりました。 そして、講習の直後に行ったトレードは、なんとなくいつもよりも恐怖心を感じました。トレード前の予定では戻りを待って損切るつもりでしたが、あのときは株価が下がっていくことで損失が膨らむのではないか、という状態でした。案の定、翌日から株価はいったん戻し、そのあと下落に転じましたので、予定通り行っていれば問題ありませんでした。 恐怖心はトレードミスの原因のひとつです。ミスを招く恐怖心を煽られるようなことは避けなければなりません。 恐怖説得という手法は、株の売買をする人が、恐怖説得が行われるような場面に遭遇したら、その直後はトレードを行わないほうがよいという根拠の一つになるように思います。 参考文献「説得と影響 交渉のための社会心理学」榊博文 ブレーン出版 (2002)