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カテゴリ:病院
オカモト医院は満員だった。いつも、ショータンが自分の車で来る時は、車の中で待っているのだがタクシーだから、ついて入った。でも、診察室までは入らなかった。
終わるまで、30分以上掛かった。Drの診たても同じだった。「貧血は点滴と輸血が必要で、出血の箇所によっては手術しなければならないから、最低1週間は入院」と。オカモト医院は、入院設備がない。 すぐに家まで戻った。ショータンは、もう一度キワ病院へ行くと言った。 「昨日、逃げて帰って来たのに、またキワへ行く? 私やったら、別の病院にするわ」 「なんで?」 「条件は同じやろに……」 「そうかなあ」 「そうやァ。かっこ悪いし」 「今日は土曜日やから、診察してくれるとこ無い」 ショータンは、我を通して不仲になった人にでも、平気でまた話しかける妙な性格だ。 「また入院するから、待っててください」とタクシー・ドライバーに待って貰って、私がキワ病院に電話をした。休診日だから、守衛が出た。 「昨日入院することになっていたKショーゾーですけど、やっぱり入院させて頂きたいのですが…」 「先生に訊いてみます。お待ちください」 7分ほど待たされた。 「今日は入院が多くて手が足りませんから、ほかを当たってください」 思った通りの返事だった。折角のカモに逃げられたのだから昨日はみんなで怒っていた筈だ。部屋が空いていたとしても、「どうぞ来てください」とは言わないだろう。 タクシーに帰って貰って、救急車に連絡した。 救急車はすぐに来てくれた。ショータンは、キャリーベッドで後ろから乗せられ、私は昨日纏めた荷物を持って乗り込んだ。隊員が、「キワ病院が近いから…」と言うので、「昨日かくかく今日はしかじか」と説明した。今朝、富田林のホーム・ドクターに診察して貰ったが、強度の貧血で輸血と検査が必要だそうです、と。南大阪病院か市民病院を希望したが、「問い合わせてみます」とコンピューターをいじったり、「顔色はマッシロです」と電話したりして、「何処もダメみたいです」と言った。急病の人が、何軒もの病院に断られて助からなかったというニュースをよく聞いたが、ドクターというのは、そんなに利己的なのだろうか? 大阪に住んでいた母が救急車で救急病院へ運ばれた時も、部屋がないからと処置室で3時間あれこれ検査されて、そのあと2時間もして病室へ行ったけど、病棟を見て回ったら、その階だけだったか知らないが、どの部屋もガラガラだった。4人部屋におばあさんが一人とか、二人だけとか、個室は3つも空いていた。 「今日の救急当番はI病院なんですけど……」 「じゃあ、I病院に、お願いします」 どうして早く言わなかったのだろう? なにか、問題のある病院なのだろうか? 西の方だと思うのに、救急車は東へ2キロほど走ってから北の国道へ出て、そこで「ピーポーピーポー」をオンにして左折し、西へ向かった。 国道から少し北へ入った寂しい場所に建った病院だった。ショータンは、キャリーベッドのまま、処置室へ運ばれた。廊下の椅子に、先客がいた。 待っている間に、2組来た。先客は、大部屋を希望した。 わたしは処置室の隣の部屋に呼ばれて、ドクターの説明を聞いた。 「血液が、1/3しかありません。入院して貰って、検査します。今夜、輸血もします。検査は大体1週間かかります。出血の場所によっては、手術になります」 70歳から80歳ぐらいの、小柄な優しそうなセンセイだった。 事務室で、救急外来を一人でテキパキと処理している看護師だか事務員だの女の人が、入院についての説明をしてくれた。「お部屋は?」「大部屋に、お願いします」 部屋代のことも、入院費用のことも、なにも言わなかった。キワ病院はぐるみで算術族だったけど、此処は違うようだ。 ……続く… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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