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2007年12月17日
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テーマ:ニュース(100197)
 毎日、これでもかと言うほど、毎日、人の命が奪われる事件の報道が続く。
 それは、明らかな殺意をもってなされたものであったり、誰でも構わぬ無差別殺人であったりするが、いずれにしろ、我侭勝手に扱われてはならない人の命が、いとも簡単に奪われてゆく。
 そう、考えてみれば、例えば大きなビルを一人の手で倒すことは出来ないが、人の命なんてものは、理性を失い、体の大きさや力の強さが優ってさえいれば、或いは、凶器をもってすれば、本当に容易く壊してしまえるものなのかもしれない。いわゆる「儚い」ものなのかも知れない。

 けれど、長い間人は、理性と言う偉大な心理作用によって、殺意を押し殺し続けてきたのだろう。一頃、敢えて言えば、テレビゲームなどのデジタル世代に入って以来「殺す」と言う言葉が極めて日常化したように思う。

 「殺す」「死ぬ」。こういった言葉は、実際に起こったそれに対してさえも、かつては、それを口にすることがはばかられてきた言葉だったが、今日では、「日常語」である。そして、それを具現化する事件が、次々に起こっているのだ。

 殺人事件が起きた時、或いはその犯人が特定された時の被害者の家族の思いは様々だ。
 昨日、佐賀で起きた散弾銃乱射事件。犯人は、無二の親友と一人の水泳インストラクターの女性を射殺した。
 犯人はその二人を撃つつもりだったのか否かはまだ解明されてはいないが、インストラクターの女性の父は、犯人に言いたいことは?と言う報道からの質問に対して、

「娘は、大好きな子供たちを守って殺された。きっと良かったと思っているだろう。」と応えた。

 多くの事件では、カメラを向けられた時、犯人に対する憎しみや怒りをあらわにする近親者が殆どだ。殺された者への愛情がそうさせることは言うまでもない。近親者の多くは、犯人への憎しみを言葉にすることで、殺された者への愛情を表そうとするのだ。

 では、この父親は、娘を愛していなかったのだろうか。私は、決してそうは思わない。深く、深く愛していたはずだ。けれど、幾ら恨みや怒りをカメラに対して訴えたところで、娘は帰っては来ないことを、この父親は知っている。そして、天に召された娘が、この様子を見て、少しでも悲しまぬように、娘を思いやっているのだろう。
 娘が、犯人に対しての怒りや恨みを語ることを、決して喜ばぬことをこの父親は知っているし、この父親は人を憎むことを良しとせぬ人間に娘を育てたのだと私は思うのである。

 因縁と言う言葉がある。全てのことは、起こるべくして起こっている。かつての何かの結果として起こっているという考え方だ。病気になったり、怪我をしたり、事件に巻き込まれたりする時、いや、それほどたいしたことではなく、例えば、朝寝坊をして遅刻をしたり、仕事で失敗をして叱られたり。それらには、必ずそこに行き着く何かしらの「縁」があるのだと考える。その縁の元にあるのは、昨日の出来事であったり、何代も昔の先祖が作ったものであったりする。

 因縁と言うものが存在すると考えれば、「どうして自分だけが・・・」とか、「何故こんなにひどいことが・・・」と、自分自身を苦しめる、答えの出ない疑問の森の中を歩き回る時間を過ごすことなく、そこから一歩、前に進めるのだと思う。
 起きてしまった事は、テープを巻き戻すようになかったことには出来ない。それは判っているのだから、大切なのは、そこからどうするかだと思う。気持ちの切り替えは難しいことだけれど、人を恨み、世間を恨み、不満を募らせてばかりいたのでは、自分までが、殺人者となってしまいかねない。

 人が人として凛と生きていくために、何をすればよいのか、どう考えればよいのか。答えはまだまだ出てはこないが、探し続けていかなくてはならない。





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最終更新日  2007年12月17日 20時05分00秒
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