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カテゴリ:闘魂
植草一秀の「知られざる真実」に打たれた。小悪に光を当てて巨悪を闇に隠す「無駄ゼロ会議」を読んで感銘を受けた。奈落の底に落ちた植草氏がそれでもなお、執拗に告発し続けるのはなぜだろうか。氏は、米国の国益ではなく、日本の国益に沿った提言をして来た。新自由主義=上げ潮路線の欺瞞というか、なぜ権力者がそういう路線を敷こうとあらゆるリソースを動員しようと躍起になるのか、根っこにある彼らの動機をとらえてはなさない。これ以上、失うものがなにもない植草氏が警笛を鳴らし続ける理由を想像すると思わず熱が伝わってくる。捨て身で、なにを訴えているのか、聞いてみる値打ちはある。
…日経新聞は2003年3月に小泉元首相と親交の深い杉田亮毅氏が社長に就任してから論調が大きく変化した。2003年初頭、日経新聞子会社ティー・シー・ワークスに関する不祥事が表面化し、前社長鶴田卓彦氏が会長に退いた。 鶴田氏は2004年には相談役も退任した。鶴田氏は小泉政権に批判的だった。 杉田亮毅氏が日経新聞の実権を掌握して以来、日経新聞は紙面を挙げて自民党清和会政権を全面的に支援し始めたと評価できる。 私は日経新聞系列のテレビ東京番組「ワールド・ビジネス・サテライト」に1992年10月からレギュラー出演していたが、2003年後半以降、さまざまな圧力を受けるようになった。 詳細は拙著『知られざる真実-勾留地にて-』に記したが、2004年4月に番組を降板することになった。 7月26日付日経新聞社説の内容は、民主党の党内対立を強く求める政府与党の意向を反映したものと言える。 有識者懇談会についての報道も政府広報かと間違えてしまうようなもので、中立公正の視点からの批判的検討がほとんど加えられていない。 自民党は次期総選挙での政権交代阻止に向けて死に物狂いの画策を始めた。「偽装CHANGE」キャンペーンはその中核をなす。 国民は注意深く「偽装CHANGE」と「真正CHANGE」を見分けなければならない。 「真正の改革」によって根絶しなければならないのは「巨悪」だ。特権官僚の天下り、天下り機関、巨大プロジェクトが生み出す不正な利権、国民の幸福を犠牲にする大資本優遇策、人の血の通わない政策哲学・思想、が問題なのだ。 「政治屋・特権官僚・外国資本・大資本」の「既得権益勢力」が維持しようとする「巨大利権構造」こそ、破壊しなければならない対象である。 7月24日付記事「一般公務員を標的に定めた「偽装CHANGE」勢力」に記述したように、自民党は一般公務員の「小悪」を叩き、国民の目を「巨悪」からそらそうとしている。 テレビメディアは国家公務員制度改革基本法が成立した際に渡辺喜美行革相が涙を流した場面を繰り返し放映する… …福田政権は「無駄ゼロ会議」のメンバーを決めた。この種の懇談会の「真相」を評価する際のつぼは、(1)事務局、(2)隠れ財務省、(3)経済同友会、の三つである。 懇談会メンバーは会議に出席して意見を述べるが、たたき台を用意することはない。懇談会での論議の方向を決めるのは「たたき台」である。「たたき台」によって、論議の方向は定められてしまう。 「たたき台」を準備するのが(1)事務局だ。懇談会論議の8割の決定力は事務局にあると言ってよいだろう。 「無駄ゼロ会議」では、内閣官房行政支出総点検会議担当室が事務局を務める。担当室スタッフには室長に元経済同友会常務理事の安生徹氏、次長にトヨタ自動車CSR・環境部主査の一色良太氏が就くが、もう一人、財務省官房参事官の宮内豊氏が次長に就任する。 実質的には財務省が「たたき台」を作る。 懇談会メンバーに中央大学教授の冨田俊基氏が就任するが、(2)「隠れ財務省」筆頭格だ。冨田氏については拙著『知られざる真実-勾留地にて-』の150ページに記述したが、財務省を崇拝していると見られる人物である。 拙著『日本の総決算』4.「官僚主権構造」に「「財政再建論」に真夏の怪談の響きあり」(213ページ)の小節を書いた。 そのなかで、「大蔵省元局長が述べた財政再建論の本当の意味」を紹介した。その論旨は以下の通りだ。 「1975年以降の国債大量発行により財政赤字残高が累増した。財政再建政策が本格化したが、これに伴って大蔵省の権力が著しく低下した。「シーリング方式」の予算編成が実行されたからだ。大蔵省の権力の源泉は「予算配分権」にある。「一律削減」ほど大蔵省の権力を低下させるものはない。 大蔵省は二度とこの間違いを繰り返してはならない。大蔵省が常に財政再建を主張するのは、大蔵省の権力を低下させないためだ。」 これが、大蔵省の本音だった。大蔵省元局長の言葉だから、少なくともこの元局長がこのように理解していたと考えて間違いない。 「財政を担当するなら、このような「本質」をしっかりと認識しなけらばならない」と私にこんこんと説諭したのが冨田俊基氏である。冨田氏は民間シンクタンクで私の直属上司だった。 「道路特定財源の一般財源化」を最も強く求めているのは財務省だ。財務省は財務省が自由に予算を配分できる一般財源を何よりも好む。理由は一般財源こそ財務省の権力の源泉だからだ。 財務省は政府委員会や懇談会に必ず財務省の意向通りに行動する人物を送り込む。財務省自身が直接主張するよりも、第三者あるいは第三者機関を通して主張する方が世間での通りが良い。これが(2)隠れ財務省の意味だ。 (3)経済同友会は小泉政権以降、政府と一体化した行動を強めている。実はここにも財務省の意向が反映される。 経済同友会のメンバーが経済同友会で提言をする際、そのメンバーの所属企業内部にスタッフが用意される。 そのスタッフに財務省が影響力を行使して、同友会メンバーから提言を発表させ、同友会で意見集約を図る。 私が民間シンクタンクに所属していた時期、私の身近なところで「作業」がよく行われていた。 財界人の多くは企業トップの地位を確保すると、社会的な活動に意欲を見せる。大半の財界人が政府関係の要職に就くことを希望する。 小泉政権以降、政府が任用した財界関係者における経済同友会の比重は極めて高い。「りそな」の処理にもその片鱗が示されている。 財務省は経済同友会の論議にも、さまざまなルートを用いて影響力を行使するのだ… …政府与党の意思決定における財務省の影響力は、小泉政権以降、著しく拡大した。財務省の影響力を低下させたのは、小渕政権だけだった。 小渕首相は経済企画庁長官に堺屋太一氏を起用した。この小渕-堺屋体制の時期に限って、政権は財務省をコントロール下に置いて政策を推進した。しかし、小渕元首相が急逝されて、激しい巻き返しが生じた。 小渕政権は正しい方向に政策を進めたが、政権交代後、財務省が主導して、歴史事実に矛盾する「バラマキ政権」のマイナスイメージが御用言論人とマスメディアによって流布された。 「無駄ゼロ会議」は「小悪」しか論議の対象にしない。 マスメディアに報道させている最近の一般公務員問題。居酒屋タクシー、厚労省ネットカフェ、社保庁懲戒職員解雇、大阪府職員給与カット、公用車運転業務問題、などの素材を取り上げて、「無駄ゼロ」を演出しようとするのではないか。 「巨悪」を論議の対象にしないだろう。 「政治屋・特権官僚・外国資本・大資本」の「既得権益勢力」が維持しようとする「巨大利権構造」を論議の対象にしなければ費用をかけて論議する意味はない。 「小さな無駄」の排除は不要でないが、その前に「大きな無駄」を生み出す「構造」にメスを入れるべきでないのか。 財政収支を改善するため、最終的には国民の負担が必要になる。国民負担増加を国民が受け入れられないのは、現状に大きな無駄が残されているからだ。 「無駄を排除」したように偽装して国民負担増加を図る考えなのだろうが、「小さな無駄」だけを排除して国民負担増加に進むわけにはいかない。 「財務省の巨大利権」を排除することがすべての出発点だ。 福田政権も小泉政権以来の「財務省支配」の構図からまったく脱却できていない。「財務省主導」の論議を通じて「財務省の巨大利権」排除の結論が導かれることは望むべくもない… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 27, 2008 11:27:50 PM
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