寺島実郎「何のために働くのか」(文春新書)を読んだ。寺島が原発容認派だと知って、がっかりした。大中華圏そして大英帝国のネットワークを財産として活用するシンガポールの戦略など、ためになる本ではある。働くというのは、「カセギ」(経済的自立)と「ツトメ」(社会貢献)から成る。しかしそれにとどまるわけでなく、歴史をいっしょに作ろう、というところまで射程に入れなければならないということだ。
ただITによる労働の歯車化による非正規雇用活用の状況や農業・エネルギーを取り巻く状況は問題が大きすぎたと思う。
ところで、「English Journal」10月号で、楽天の三木谷氏がインタビューで語っていた。彼らは「規制緩和」を目指す。でた、また規制緩和である。給料は上がらない、消費税は増税されるといった八方塞がりの状況で、まだこのひとたちは、マーケット至上主義。米国の食料配給制度(SNAP)とそれで潤う小売産業そして医療・医薬品産業も問題だ。経団連会長の出身母体である住友化学も深くかかわっている、遺伝子操作作物で食品をだめにするモンサント社のやり口もえげつない。総じて、人間を脇に追いやって、マーケットに全幅の信頼を置く、能天気な新自由主義者は許せない存在だ。
規制緩和だけでなく、民営化を魔法のように考える感性も納得できない。サッチャーやレーガンの頃からこうした手法で、福祉を切りくずしてきた現実は重い。ジョージ・オーウェルが「1984」で警鐘を鳴らした管理社会の到来とともに、税務当局は、容赦なく「取れるところから取る」姿勢だ。