家族が座る大きなテーブル。奥の椅子が俺の定まった場所。
その場所からは、大して広くはないが、部屋中を見渡せる。
そこは、この家で一番気に入っている場所だ。
ここに座って、しばし、たたずんでいると、
これまでの、そして、これからの数十年が、
束の間に過ぎ去り、流れ行ったとしても
それほど不思議なことではないという情感にとらわれる。
これまでの年月、確かに何かが変わったはずだが、
返り見れば、何も大して変わっていないような気がする。
そして、おそらく、きっと、これからの数十年、
このまま、何も、変わらないに違いない。
きっと、ただ、年老いた私が、同じ、この椅子にすわり、
やはり同じ壁を見ているような、そんな気がする。
それでもいい。いや、それでいい。それがいい。
あきらめに似た安息と、既に過去のものとなったかすかな悔恨。
その、ほろ苦さは、間違いなく俺だけが堪能しうる味わい。