厭魅の如き憑くもの
三津田信三によるホラーミステリー、「厭魅の如き憑くもの」(講談社)。怪奇幻想作家・刀城言耶(とうじょう げんや)シリーズの第1作に当たる。○「厭魅の如き憑くもの」(三津田信三:講談社) この作品の舞台は、神々櫛村(かがぐしむら)という、迷信と因習に支配された場所だ。村は、谺呀治家と神櫛家村を頂点にして、宗教的な関係と土地の親方・子方という二つのの関係により、複雑な勢力関係が絡み合っている。谺呀治家は、憑き物筋の家系で、代々憑き物を払う巫女と憑座(よりまし)を輩出していた。村には、至る所に、カカシ様と呼ばれる信仰の対象が祀られており、不気味な雰囲気を醸し出している。そして、厭魅(まじもの)と呼ばれる妖異が徘徊すると言われており、神隠しなどの怪異にも事欠かない。この村で、次々に怪死事件が発生し、被害者はカカシ様の格好をさせられていた。 この小説は、ホラー・ミステリーであるが、最初は、ホラーとしての性格が非常に強く、以前読んだ「凶宅」のような100%ホラーものかと思った。だが、読み進めていくうちに、次第に、ミステリーとしての側面が強くなってくる。次々に起こる、不可思議な事件は、結局は、刀城言耶により説明がつけられ、事件を起こしていた犯人も明らかになるのだが、完全な解決ではなく、最後に少しばかりホラーの部分を残しているのが大きな特徴だろう。 ところで、表紙イラストの美少女がとても目を惹く。美しくも、どこかぞくりとする怖さを秘めている。これはこの作品のヒロインとなる谺呀治家の紗霧だろうか、それとも双子の姉の小霧だろうか。いずれにしても、この作品によく合っている。○ランキング今何位? ○姉妹ブログ・「文理両道」・「本の宇宙(そら)」(本記事は、「本の宇宙」と同時掲載です。)