フェルマーの最終定理
フェルマーの最終定理とは、3以上の自然数nについて、X^n + Y^n = Z^n(^nはn乗を表す) が成り立つ、 0 でない自然数X, Y, Z の組み合わせは存在しないという定理である。 n=2の場合が有名なピタゴラスの定理である。この場合は、例えば、X=3,Y=4、Z=5とおくと、X^2+Y^2=Z^2が成り立つ。しかし、n=3以上になると、そのようなX、Y,Zは無いのである。 フェルマーは、17世紀のフランスの数学者である。これが、なかなか困った親父で、他の数学者たちに、自分が証明した定理を証明んなしに送りつけて、できるものなら証明してみろと挑発していたらしい。彼は多くの定理を発見していたようだが、決して自分からその証明を明かそうとしなかったのである。彼は、古代ギリシアの数学者の書いた「算術」という本の余白に、多くの書き込みを残した。その一つが、このフェルマーの最終定理と呼ばれるものである。ところが、ここがフェルマーらしいところで、自分はこの定理の証明を発見したが、それを記すには本の余白が狭すぎるとやったものだから、その後、多くの数学者たちが頭を悩ますことになった。フェルマーの最終定理は、見かけのシンプルさにもかかわらず、なんと、300数十年もの間、証明されることはなかったのである。1994年にアンドリュー・ワイルズが、証明するまでは。 「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン/青木薫:新潮社)は、このフェルマーの最終定理が証明されるまでを描いたノンフィクションである。この定理を取り巻く歴史と、ワイルズがいかにして、この定理の証明に取り組んでいったかが分かりやすく描かれている。 ところで、他の学問では、実用的な範囲でほどほどの厳密性が成り立っていれば良いのだが、数学の証明というのは、絶対的な証明でなければならない。その代わり、一度完全に証明されたものは、永遠に崩れることはない。数学の証明とは、ブロックを隙間無く積んでいくように、厳密に論理を積み上げていくものだ。論理のブロックのたったひとつが壊れるだけで、証明全体が崩壊する可能性があるのである。 ワイルズは、一度は、証明できたと思ったが、思いがけない欠陥が見つかる。この欠陥を補正しないと、証明全体が崩れてしまうのだ。なんとか証明を完成させようとあがくワイルズ。このあたりは、下手なミステリーを読むより面白い。純粋数学に関する話なので、理工系を専攻した人間でも、聞きなれない専門用語が結構出てくる。しかし、そんなことを気にさせずに、面白く読ませてくれる。「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン/青木薫:新潮社) ○ブログランキング低迷中。応援クリックお願いします。 風と雲の郷 別館「文理両道」(gooブログ)はこちら