カテゴリ:非常識系
バスのカエルのことを思い出したら、またまた芋蔓式に、とある女性の記憶が甦ってしまった。その人とは、バスの中で出会った。出会った、と言っても、単に乗り合わせただけ。乗った場所と降りた場所が同じという偶然は良くあるから、あの事件がなければ特に、記憶にも残らなかったはずだ。
その女の人はたぶん、20代後半。同年代の旦那さんと、生後数ヶ月といった大きさの赤ちゃんの3人連れだった。奥さんはぽっくりのような靴を履いて、足下がふらついている。そのせいか、乳母車にのっけた赤ちゃんの面倒は、ご主人の方が一手に引き受けている。 バスに乗ってきたときから、ちょっとヘンなお母さんだなとは思った。自分一人でふらふらステップをのぼり、さっさと一人がけの席に座る。あとから乗ってきた赤ちゃん連れの男の人が、彼女のそばに座って話しかけなければ、その3人が家族だとは思わなかったろう。 事件はバスを降りるときに発生した。普通、お母さんが乳母車から赤ちゃんを抱き上げ、お父さんがカラの乳母車をバスから降ろす、というような手順をとるはずだが、一人でぼんやりふらふらしているポックリの母は、知らん顔をしてすべてを夫任せ。旦那さんは奮闘して、自分が先に降り、乳母車ごと赤ちゃんをバスから路上に立つ自分の手元に引き寄せようとした。 つるり~~~~~んっ そんな音はしなかったが、タオルか軽い毛布のようなものでくるまれた赤ちゃんが(魚雷のような姿で)、乳母車からすとーんと地面に墜落した時、私の耳にはそんな擬音が鳴り響いた。 同じバス停で降りようとしていたウチの母と私は、お父さんの凍り付いたような表情を目の当たりにした。時間が止まったような一瞬。そして火がついたように泣き出した赤ちゃんの泣き声。わけの分からないことをわめき散らし始めたポックリの声。。。 お父さんは小さな赤ちゃんを抱き上げ、必死にあやしはじめた。ポックリはバスから降りると、散乱したおもちゃを拾いながら、ヒステリックにわめき散らし続けている。普通、赤ちゃんに駆け寄って、夫の手からもぎ取らないか? バスは去ってしまい、若いお父さんも赤ちゃんを懐に抱くようにして立ち去った。後ろから、乳母車を押しながら、ポックリも尻をふりふり去っていく。彼女がのんきに、鼻歌を歌っているのが聞こえた。一時の興奮は、おもちゃを拾い集めたことで、さめてしまったようだ。 あの赤ちゃん、結構高いバスのステップの上にあった乳母車から墜落した。それも頭から、コンクリートの歩道に墜落したのだが、大丈夫だったろうか。今は大丈夫でも、将来、何らかの障害が出たりはしないだろうか。それよりも、あんな母性のかけらもない母親に育てられる、あの子の不運を思うと、人ごとながら心配でならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年05月19日 15時13分56秒
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