カテゴリ:勘違い系
クラスメートに、とっても可愛い女の子がいた。あややみたいなタイプ。純粋に容貌で判断するなら、あややの15倍くらい、可愛い造作の持ち主だった(あややって結構、気迫で可愛く見せてるみたいなところがあるから。もちろん、普通以上に可愛いのは確かだけど)。
自分がいかに可愛いか、彼女はよ~く熟知していたけれど、普段はそれを見せることはなかった。「○○ちゃんは可愛いから」と言われると、「いやだー、そんなことないよぉ」なんて、はにかんで見せる。でもある日、その「謙虚さの演技」がぶちこわしになった。 みんなで両親のどちらに似ているか、という話をしていた時、彼女が口を滑らせた。「ウチのお父さん、あたしより可愛いの~」 その場にしろ~い空気が流れたのは、しかし、彼女の「自分は可愛い」という自負心が暴露されたタメではない。彼女のお父さんが、50歳を過ぎていて、磯野波平さんのような禿頭をカバーするべく、後頭部の髪をながーく伸ばして束ねている、かなり異様な風貌の(そして受け持ちの生徒からは毛嫌いされている)中学教師だということを、みんなが知っていたからだ。 ハゲで、襟元に長い弁髪のようなものをぶら下げた「可愛い」50男…… きみわり~~~~っ 以来、彼女の可愛さは、「彼女よりも可愛い」というお父さんのイメージと重なってしまい、我々の仲間内で失笑の的になったことは言うまでもない。 で、その彼女もまた、相手の誤解を誘発し、それによって自分のイメージを高めようとするタイプだった。十分可愛いし、可愛いことはみんなが認めているのに、「今日、どこそこで、中学生の男の子たちから、”写真撮っても良いですか?”って訊かれちゃったぁ」という風な自己主張をする。 性格のいい女性、および大抵の男性は、この手の主張の意味するところが分からないらしいので、詳細に説明するが、要するに彼女が言いたいのは、「私って、見知らぬ男の子たちに、写真を撮られるくらいに可愛いの」ということはもちろんだが、「私の回りに集まってくるのは、撮っても良いですか、と礼儀正しく許可を求めるような男の子たちばかりよ」とか、「許可を求めるなんて、もしかしたら私のこと、タレントと勘違いしていたのかもー」と言うことなのである。 その時傑作だったのが、抜け作な男子クラスメートがいて、彼女に真っ向から「何で?」と訊いたことだった。 大抵の男性は「この手の主張の意味するところが分からない」と言ったが、それは彼女の言葉を額面通りに受け取って、「うんうん、○○ちゃんは、可愛いもんなぁ。当然だよなぁ」という風に納得してしまう、という意味だ。ところがその抜け作男子は、本気で「その少年たちは何のために、彼女の写真を欲したのであろうか?」と疑問に思ったのだ。それは、彼の表情や声の調子から明らかだった。 さりげなく遠回しに、自画自賛していた彼女は、そのストレートな疑問にさっと鼻白んだ。そして、屈辱でつり上がった目を笑いでごまかし、「きっと、私のこと、同じ中学生だと思ったんじゃないかしら~。失礼しちゃうわぁ」と、説明にならない説明で、話を締めくくったのだった。 ちなみに「何で?」の彼はその後、一部地域でとてつもなく人気者になったのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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