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今日のヘンな人

[勘違い系] カテゴリの記事

全68件 (68件中 1-50件目)

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お姫様と私

　本当にあった話として、良く耳にする都市伝説（？）のようなエピソードに「ナルヘソ」というお店がある、というのがある。私も聞いたことがあるのだが、子供が駅前に「ナルヘソ」という喫茶店だかケーキ屋だかができた、と主張するので、行ってみたら「メルヘン」という店だった」というもの。うーん、確かに字が下手だとそう読めるかも。　で、先日、ファミレスに行ったところ、ウェイティングリスト（というのだろうか）に、「ヒナ」という書き込みがあった。「ヒナ」ってずいぶん珍しい苗字だなぁ、比奈？日名？　うーん、会ったことないかも…　と思って、ハタと上記のナルヘソ・エピソードを思い出した。もしかしてこれ「ヒメ」なのでは？　それでもって、お店の人に「ヒメさま～、姫様～」と読んで欲しいがための、もしかして偽名ではないのか？と思い至った。　真相は分からない。でも、いかにもオンナノコ、という感じの丸文字、「ひな」と読めないこともない横線の微妙な傾きなどに、「姫様って呼んでもらえたら結構らっき～」という作為を感じた、根性ねじ曲がった私であった。

2007年04月19日

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働くお母さんと私

　前にも書いたかもしれないが、高校時代は「親が比較的年を取っている」か、ニューファミリー的に「やけに若い両親」という2つのグループに、クラスメートが綺麗に二分されていた。私は「親が年配」組に属しており、何故か仲良しグループ全員が、いわゆる「若いお父さん、お母さん」を持っている派ではなかった。　大学に入ると、仲の良い友だちの3割が「若い両親」を持つムスメたちだったが、やっぱり主流は「ちょっと年喰ってる派」　しかし、そんなある時、若い派の友だちが、べんとーを食べている最中に「専業主婦なんて最低」と言い出した。　そのときその場にいたのは、彼女以外は老け組だったので、全員がムッとした。私くらいの年代で、親がちょっと年喰っているような家庭では、まだ、一家の主婦たるもの、専業主婦であるのが当然、という風潮だったからだ。　「何で？」と、私たちの中で一番ニンゲンができていたOさんが、やんわりと問いただした。彼女のお母さんに会ったことがあるが、お母さんというより、お婆さんという雰囲気の方だった。彼女はかなり年の離れたお兄さんとお姉さんがいる末っ子だったから、当然のことだ。すると、爆弾発言をしたHは、彼女自慢の若くて美しいお母さんがそう言ったため、受け売りをしていることが分かった。　でも、彼女の母上も専業主婦だったはず。何でまた、そんな母上が、専業主婦を否定するのだろうか？　よくよく聞いてみると、そのころ母上は、近所のブティックにパートに出始めたのだそうだった。をいをい。　別にパートを否定している訳ではない。私たちの世代では、「お母さんが働いている」と言っても、フルタイムで仕事を持っている人はほとんどいなかった。夫婦で商売をしているとか、カメラマン（ウーマン、か）といった特殊な職業の人はいたが、その他はパート。でも、そういう時代の「パート」って、本当に短時間、ちょっと外に出てみた、という程度が多かったのだ。　案の定、彼女の母上も週に1日か2日、2、3時間のお仕事だった。しかもパートに出た理由は、稼いだお金を自分のお小遣いにするため。それで「仕事を持っている女性と、家にこもりっきりの女とは違う」とか言われても、私たち年喰ってる派は挨拶に困ろうと言うものだ。　家事とフルタイムの仕事を両立している女性は偉いと思う。私なんて、仕事だけでいっぱいいっぱいだし、家事をしようとすると、皿を割ったり鍋をひっくり返したりの大騒ぎになるに決まっている（と言うか、母から一切手を出すな、後が面倒だから、と言われている。くくー）。　それを考えると、短時間であろうと仕事をして、家事と両立している女性も偉いと思うが、彼女のお母さんに限っては、我々はちっとも偉いと思わなかった。「仕事」が超極端に短時間なこともあったが、彼女のムスメはそのとき、「お母さんが働き始めたから、弁当を作ってくれなくなった」と、菓子パンを昼食として食べていたのだ。しかもその日も前日も、パートに出る日ではなかったのに…　ぜんぜん両立してないじゃん。　また、これは後年の話になるが、この母上は、自分の娘（爆弾発言した本人）が初めてボーナスをもらったとき、「良いコートを持っているかどうかが、洗練された女性の証よ」とか何とか言って、全額はたいてカシミヤのコートを買わせたような、自分勝手な人だ。何故自分勝手かというと、二人のサイズはほぼ一緒。母上は彼女が大枚はたいて購入したコートを、自分の専有物にしてしまったのだ。ムスメまで食い物かよー　ま、それはともかく、専業主婦が日頃こなしている仕事に対して給料を払うとなったら、大変な額になるそうだ。えげれすなんぞのハウスキーパー（執事の女性版みたいな人）などは、まさに専業主婦が日々行っている作業を、職業として請け負っている訳だが、主婦のように家族に対する愛情は無いはず。それでも相当な高給取りであり、プロフェッショナルとして非常に尊敬されている。専業主婦のどこが悪いかっ　ぜーぜー　しかしおかしなことに、友人たちを総ざらいしてみると、お母さんが専業主婦、という年配派のムスメほど、未だに独身で仕事一筋である。できすぎた母を持つと家事的に無能になるのか、「あそこまでできない」とやる前にあきらめの気持ちが出てしまうのか？　　どちらかは分からないが、私の周囲に関して言えば、結婚しているのは、専業主婦を否定するような「専業主婦＋ほんのちょっとだけパート経験アリ」というタイプの方のムスメばかりだ。うーん、これはいったい…　

2005年05月10日

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○天のバカなお店の方と私（1）

　今日、○天の某ショップから、かなーり遅い福袋が届いて、ちょっと嬉しい。「ぎょえー、イイのかい？」というような内容で、大満足なのであった。　そういうイケてるお店もある一方で、これだけ規模が大きいと、みょ～なショップも出店していたりする。これまで、かなり変なお店に遭遇したが、一番不愉快な印象が残っているのは、某アクセサリーショップだ。　そこは、何故かちょっとマイナーな運送会社を使用していて、ある時、指定日に着かないどころか、「これはもう、夜中って言わないかい？」というような時刻に、ぴんぽーんとやらかしてくれたのだった。　すでに寝ていたので（それくらい夜遅かった）、さすがに腹が立った。掲示板に「ほかの運送会社とか、ゆうパックが選べるとか、チョイスを増やしてくれませんか？」とリクエストした。すると、である。店長から、だいたい以下のようなお返事が届いた。　「○○運輸の方たちは、ほかのお客様からは大変評判が良い。自分も荷物を届けてもらうことがしばしばあるけれども、彼らはいつも笑顔でがんばっている。いつも走っている。爽やかな汗に、私は感動する」なんだなんだ、こいつ。文学少女のなれの果てかなんかか？？？　客商売で、そういう態度はないんじゃないの？　それじゃまるで、「夜中に届けられて迷惑した」と言っているこっちが、悪者みたいじゃないか。　指定日とはぜんぜん違う日の、指定時間から5時間近く遅い夜中に届けられて、迷惑を被ってると客が言ってるのである。たとえそれが大げさな言葉だったとしても（大げさではなく、ピンポンが来たのは23時57分だった。そんな時間に稼働していること自体は、頭の下がる思いであるが、ウチは一般家庭である）、「それは申し訳ありませんでした。検討してみます」ってひとこと言えば済むことじゃないか。　と言うわけで、その店ではその後、二度とショッピングをしないことに決めた私なのだった。ふ～んだっ

2005年01月13日

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すいーでいーな方と私

　日本語の会話の中に、英語っぽい発音を持ち込む方が、私はあまり好きではない。たとえばファンタジーを「ファンタシー」と言う人。　ファンタジー系のマンガ同人誌に参加していた友達がいて、彼女の知人たちがやっている季刊誌みたいなのを、無理矢理買わされたことがある。せっかくお金を払った（払わされた）のに、中を見ないのもナニだから、パラパラめくっていると、同人誌界では結構有名らしき作者さんたちが、「ファンタジーって言い方には耐えられない」とかいう座談会をやっていた。　もちろん、それが座談会の趣旨ではないのだが（テーマは日本におけるファンタジーの系譜、みたいなそーゆーやつ）、出だしの話が「ファンタジーじゃなく、ファンタシーと言え、バカッ」みたいな話だったので、いっぺんに興ざめした。いーじゃん、日本では「ファンタジー」って濁るのが一般的なんだから、英語風に「ファンタシー」とか言わなくたって。　むかし「でりしゃす、じゃなくって、でりーしゃす」と言うようなコマーシャルがあったような気がするけど、そんなことはどうでもいーじゃないか。どうせ「でりーしゃす」とアクセント位置を変えたところで、ネイティブには大差なくしか聞こえないと思うぞ＞日本人発音　「パトリオット・ゲーム」という映画があった。私は見たことが無いが、友達と話をしているときに、そのうちの一人が「見たんだ～」という話を持ち出した。私たちが「へー、それってどんな映画？　面白かった？」と訊こうとした瞬間、中の一人が「パトリオット・ゲーム？　ナニそれ？　もしかしてペイトリオット・ゲイムのこと？」とほざいた。日本国内での話である。ばかものっ　と言うわけで、私は「CD」を「すぅいーでぃ～～～」と発音する人が好きではない。「しーでぃー」って言えよ！と思う。「すぅいーでぃ～～～」と言うくらいなら、「しーでー」とか言っちゃうおじさんの方が、ぜんぜん愛嬌があってイイ。　ってな話を、職場で大声で話していたら、そういう話に一番乗ってくれそうな男性がちょうどやってきた。「ねーねー、○○さん、しーでぃーってさ」と言ったら、本当に、なーいすタイミングで彼が「あ、それで思い出した。オレのすぃーでぃーろむのケースが見あたらないんだけどさ」　ブルータスお前もか……　

2005年01月08日

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外人ぶる方と私

　クリスマスイブ、クリスマスと遊び歩いていたら、カゼが再発！　鼻水がとまりません。　今日は一日、おとなしく家にこもってネットサーフィン（ちょっと古い）などをしていたら、すっごく奇妙な人のことを思い出した。その人の名は、○リー・伊藤さん。と言っても、テレビに良く出てくるあの方ではない。英語の学習書などを、たくさん出版しておられる先生だ。　何が奇妙かというと、この人、ガイジンぶるのだ。ぺらんぺらんに薄いパンフレットみたいなのと、その内容を吹き込んだCD（あきらかにCDがメイン）がセットになった教材を、たまたま友達からもらったのだが、通して聞いたら鳥肌がたってしまった。　このCDでは、誰だったか、あんまり英語の得意でない、可愛らしい感じの若い女性が、○リー先生に色々質問しながら、英語の文法的知識などを身につけていくようすが、実況中継（？）されている。　最初のうち○リー先生は、すっごくたどたどしい日本語で、「そーゆーところ、日本人、ヨクマチガエマスネー」などとやっていたので、私は「ああ、この人、日系三世とか、そんな感じな人なんだろうな」と思った。ところが、である。収録が進むにつれ、○リー先生の日本語はどんどん達者になっていく。まるでネイティブ。いや、そう、ネイティブなのだ、この人。　後になって別の友人から聞いた話だから、本当かどうかは知らないが、この方、日系○世ではないどころか、せいぜい高校生か、大学生くらいのときに、アメリカに住んでいたことがある程度なんだそうだ。だから、どう逆立ちしても、あんな風に日本語がたどたどしくなるハズがない。　そのCDの気持ちの悪いところは、○リー先生が途中で何度もする軌道修正。カタカナ日本語みたいなたどたどが、流ちょうなネイティブジャパニーズになっしまうと、途中で「はっ！」と気が付くらしく、突然また「たどたど」っとカタカナ日本語をしゃべり始めるのだ。　CDの収録は30分程度の長さだったと思うけど、その中で何度も、○リー先生は日本人とガイジンさんの間を、行ったり来たりしていた。　彼の素性に関する情報を教えてくれた友人によれば、日本人に対してはやたらオシの強い、アメリカンな態度を取るこの方、アメリカ人の前では超従順なうなづき日本人だという話。　私は会ったことがないから知らないけど、日本語の進化と退化を、あれだけの短時間にくりかえす厚顔無恥さを考えると、そのくらいの二面性は十分に持ってらっしゃるような気が。

2004年12月26日

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ハンケツのあゆもどきと私

　イブとクリスマスは、あちこちのイルミネーション見学三昧。おかげでカゼがぶり返してしまいました。が、都庁のイルミネーションは頂けなかったぞ。久しぶりにライトアップを復活したって話だけど、ぼやーんとした色合いは、知らなければイルミネーションのつもりだとも、分からなかったと思う。　この二日間で、ずいぶん変な人とすれ違った。クリスマスみたいなイベントがあると、ちょっとキレた人が増えるんだろうか。　個人的に一番印象に残っていたのはハンケツのあゆもどき。10代後半の女の子特有の、むっちむちにデブな感じの体型で、この寒いのにバストがはみ出したようなタンクトップ、その上にスケスケの薄いセーターを着て、しかもスカートはターザンだ。　ターザンのコシ布みたいなのって、たしか、ぼろぼろというか、ギザギザの房みたいなのが、たれていたような気がする（それってもしかして、原始人？）。彼女も、そういう超ミニスカートをはいていた。が、なにしろ、むっちむちのデブ体型である。しかも何かスポーツをやっているのか、足首からふくらはぎにかけての線が、まるで逆さにしたビール瓶。　さらには太ももも、前よりも後ろに筋肉が盛り上がっている。膝のウラからモモにかけてのセンが、これまた逆さにしたビール瓶である。　そのような足で、ギザギザに切れ込みの入ったミニスカートだもん、「うわ、みたくねー」っていうくらい、上の方まで見えてしまっていた。後ろ姿を確認すると、完全にハンケツ丸見え。あれ、もしかしてノーパン？　いや、ふんどしみたいなパンツ、はいてるのかな？　彼女は浜崎あゆみのファンなのか、あゆ風の目元を強調した化粧をして、ものすごい金髪を長く背中に垂らしていた。声もあゆっぽく、おーとりけーすけみたいなんだろうか（これもまた、古すぎ）。

2004年12月25日

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濃い方と私

　以前、インドの方に妙になつかれたことがある。鼻の下に、濃いちょびヒゲをはやしたおじさんで、私の目から見ると、50代くらいに見えたので、いったい何の用があって私にへばりついてくるのか、全く理解できなかった。　そのおじさんは、変にねとーっとした横目でこちらを見るクセがあって、立ち話をしていると、こう、コシの部分を押し出してきて、身体を密着させてくるようなそぶりを見るので、「ストレッチ運動でもしているのか？」と疑問に思ったものだった。　そのおっさんは、妙にかはははははっと、大げさに笑うし、唐突にニヤリッとかするので、インド人と大量に知り合うようになるまでは、あっち方面の方は皆さん、そういう立ち居振る舞い（？）をするものなのだと思いこんでいたくらいだ。　その「おじさん」が、実は当時まだ30をちょっと出たばかりで、私のことを非常に非常に気に入ってくれていたらしいということを、かなり後になって知った。そして彼は自分の魅力に自信を持っていたので、私がムシしまくるので、もんのすごくプライドを傷つけられたということも。　うわっ、あの変な横目やストレッチ運動は、求愛行動だったのか！　それにしても、自分がもてると思いこむなんて、そーとーにおかしいよ、あの人……　と言うのが、それを知った当時の私の感想。　更に月日は流れ、ある映画を見て、彼のことを思い出した。「ムトゥ踊るマハラジャ」だ。この映画に出てくる、主人公のおっさんに、彼は非常によく似ていたのだ。主人公のおっさんは、インドではスーパースターだと聞く。彼の国では、あのようなタイプがモテモテなのだろうか？　変な自意識を持った人だと思っていたが、私になついていた彼は、母国では本当にもてる人だったのかもしれない。プライドをずたずたにして申し訳ないことをしたとは思うが、でも、やっぱりラジニカーントさんみたいなタイプは、私にとっては過度に濃いおっさん、でしかないのだった。

2004年12月05日

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戦うコンビニ店員と私

　ウチの近所には、割とコンビニが多い。一番近いのは、5、6分歩いたところにあり、ちょっと小さめ。10分くらい行ったところに、大きめのヤツが3軒ある。全部、異なるチェーンのお店なので、日によってはコンビニをハシゴしたりもする。　最近まで、一番良く利用していたのは、距離的に最も遠いコンビニ。そこが一番でっかくて、品数が豊富だからだ。が、一部店員が非常にというか、異常に感じが悪いので、今月に入ってキッパリと手を切った。　どう感じが悪いかと言うと、私の鼻先でレジを閉める、というようなことをするのだ。大きいコンビニだけに、レジが4箇所あるのだが、最も混むのは一番奥のレジ。雑誌を見て、お弁当などを見て、飲み物を買って、という風に巡回すると、そのレジに到達することになる。　私はあんまりカゴを使わないので、買い物の数が多いと、モノを取り落としそうによろよろしてしまう。ぐるっと回って、一番近いレジで会計してもらいたいのは人情だ。が、それまで、奥のレジにいたヤツが、私があともう1歩半、くらいのところまで到達すると、ガシッと「ほかのレジをご利用下さい」という札を立てて、そっぽを向きやがるのだ。そういうことが1度や2度ではなく、行くたびにほぼ70パーセントの確率で起きる。　雑誌だって、買うものがあるときに、ちょっとあれこれ目を通すくらいで、立ち読みだってしたことないし（第一、そんなヒマないし）、商品にクレームをつけたこともないし、どう考えても「嫌われるお客」な要素は無いと思うのだけれど、何故かそのコンビニでは非常に、イヤな接客態度でのぞまれるのである。　でもその店には、超感じの良い店員さんたちもいる。よくサービスのくじ引きなんてやっていると、2枚のところを、「5枚くらい引いちゃっていいですよ」なんて言ってくれたり（いいのか？）、おでんを買うと、「あ、これは入れたばっかりのヤツですよ。ちょうど良いところと変えときましょう」なんて言って、良さそうなヤツと交換してくれたり、という具合だ。　そういう感じの良い店員さんは3人いて、みな古株だけに、ウチの母がそこのコンビニの奥さんと親しいことを知っている、という可能性もあるが、とにかく親切である。　実は、以前は感じの良い店員さんは4人だった。もう一人も古株の人で、当初は私はこの人と一番仲が良かった。ところがある日を境に、私の会計をするときもそっぽを向いて、目を合わせようとしなくなった。きっかけはどうも、ほかの店員さんと、親しく挨拶しているのを見たため、であるようだった。コンビニもあれだけの規模になると、店員同士の人間関係が複雑なのだろう。　そういうできごとがあってから、そのコンビニに行くたびに、誰と誰が親しいのかを注意して見ているのだが、最近は古株の人々が、新興勢力に押され気味という感じ。中程度にベテランのワカゾーが、リーダー格になって新しいグループを形成している。　私の目の前でレジを閉めてしまうのは、どうやらそのグループ。コンビニ経営者の覚えもめでたい、古株の人たちとは、お互いにクチもきかない。そして私は古株さんたちのグループと顔を合わせるたびに、親しく世間話などをするうさんくさいヤツなので、同類としてムシすることにしているようだ。　実にバカバカしい話だが、そんな訳で最近は、うちから一番近い、小さなコンビニに行くことにしている。

2004年11月28日

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男尊女卑な方と私

　3ヶ月ほど前、あるプロジェクトの担当者が急に変わって、その人に会ったこともないまま、メールを介して仕事をするという状況が発生した。前の担当者と違って、重箱のスミを突っつくようなよけいな口出しが多く、やりにくいことおびただしいが、勤め人の悲しさ、まあ、それもしょうがないかとあきらめていた。　私はメールの文面などから何となく、その人が女性だと信じていたのだけれど、先日、電話で話をするチャンスがようやく生じて、男性であることが分かった。オトコにもオンナにもある名前だと、こういうことって起きるのねーとびっくり。　まあ、それはともかく、ここのところ、この変な人日記が断続的になっているのは、自宅パソコンの不調ではなく（それはようやく直った）、その人のせいである。というのは、コイツ、むちゃくちゃバカなのだ。　状況を説明すると、ちょっとヤバイ感じがするので、たとえ話にすれば、カレーパンを作るというプロジェクトなのに、「どこそこのクリームは仕入れたのか」「○○の砂糖を使ってないじゃないか」というようなことを言うのだ。　まあ、クリームは良いよ。カレーを作るのにも、多少、使わないことはないだろうから。でも、砂糖ってなんだ？　どうしてそんな大量の砂糖が必要なんだ？　言っとくけど、クリームパン作ってんじゃねーんだぞっ！　クライアントである特権を振りかざして、そのように見当はずれな無理難題を言う馬鹿者とつきあっていると、ほとほとイヤになって来る。直接の上司は分かってくれているけど、ストレスはたまるばかりである。　先日、こやつは男尊女卑な考えの持ち主であることも判明した。私の作成したとある書類に難癖をつける際に、「データの扱いがなってない。だいたいオンナは、そういうことに弱いが、アンタもプロだったら、自分に足りないものを補う努力くらいして欲しいものだ」とぬかしたのである。そしてご丁寧にも、「これこれこういう資料があることを、お前は知らないのか。勉強不足も良いところだ。この資料は、非常に良くできているから、これを参考にしろ」とほざきおった。　褒めてくれてありがとう。その資料を作ったのは私です。　そんなバカに褒められても、全然うれしくはないし、ちょっと情けなくなった。なぜなら、その資料はやっぱり、クリームパンのために作ったものなのである。　そりゃあ、鳥釜飯（何故に…）とクリームパンを比べたとき、どっちがカレーパンに似ているか、と訊かれたら、まあ、パンつながりでクリームパン、ってことになるだろうが、カレーパンを作ろうって話のときに、しつこくクリームと砂糖に固執するのはやめて欲しいのである。アタマ悪すぎ……　要するにそのバカ者は、クライアントであること、自分がオトコであることをタネに、えばりたいだけなのだろうと思う。クライアントである特権の方は仕方がないが、オトコだということで、オンナを見下せる時代では、もう、無いと思うのだが、そんなことも分からないバカなのである。しかも、結構わかぞーなのがバカバカしさに拍車をかけているのだった。はああああ。　私はそのバカ者を、最初女性だと思っていたワケだけれど、思い返してみると、ねちっとしたメールの文面から、そんな風に思いこんだのかもしれない。だとすると、私にも「男性はさっぱりしている」「女性はネチネチしている」という、悪しき思いこみがあったということになる。実生活では、からっと陽性な女性と会うことの方が多いのに……　バカ野郎めーと思っていたけど、反面教師というか、自分のことも反省するきっかけになったと、前向きに考えるようにしよう。が、やっぱりあんなモノと、年度内いっぱい、付き合わなくちゃならないかと思うと、ゆーうつなのだった。はああああ～　

2004年11月24日

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大言壮語な方と私

　2、3ヶ月前のことだが、友達から手紙をもらった。そいつが離婚だ何だでゴタゴタしていたので、ちょっと疎遠になっていたのだけれど、元気そうな内容だったのでホッと一安心。メールアドレスも書いてあったので、以後はメールでやりとりするようになった。　で、その彼女から最近来たメールに、楽天と関わることになった、と書いてあった。結婚している頃は専業主婦だったが（と言うより、専業主婦になりたくて結婚した、と豪語していた）、離婚後は慰謝料でもって、お花系の仕事を始めたので、ネットショップでもオープンしたのかな、と思った。　私は良く、「他人のことに興味を示さない」という風に誤解されるのだが、あまりヒトのことを詮索するのが好きではないのと、電話でべちゃべちゃしゃべるのが苦手な故だと、自分では思っている。だから、彼女の「楽天との関係」も、それ以上は詮索しなかった。　その後も彼女は楽天との関係、たぶん、彼女の視点からすれば、野球参入だのなんだので、いま評判の会社との関係を、ぼんや～りと自慢する風のメールが何度か届いた。そしてある日、こんなせりふが……「楽天は良い会社だと思うが、日記を書け書けと催促がうるさい」　う、それってもしや、この楽天広場のことじゃないだろうか。基本設定のところにある、「メールで更新機能」をオンにしておくと来る「今日の日記」とか言うモノでは……？　もしかして、楽天に出店していると店長日記のようなものを書け、という催促が来るのかもしれないが（来ないと思うが）、こいつが離婚したのは十中八九、こいつの方に原因があったためだな、と思ったのだった。　もしかして彼女が、自分の日記がスバラシイために、楽天から催促されていると勘違いしているのなら、可笑しいのを通り越して不気味である。長年の付き合いを勘案して「勘違い系」というカテゴリーにしてみたが、下手をすると「虚言癖系」か「妄想系」かも。　なんてことを書くと、見つかる可能性大。こうやって友達を無くしていくのだなぁ、と思ってみたり、そんな変なヤツ、友達とは言えないよ、と思ってみたり。

2004年11月21日

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バカ子女と私

　帰国子女に恨みがあるわけではないのだが、バカが多いなぁ、と思った最も強烈な体験をしたのは、えげれすに行ったときのことだ。　そのとき私は、いわゆるりゅーがくというモノをしに出かけたのだが、ちょうどその年はものすごい旅行ブーム。飛行機がほとんど全く取れなかったので、私は大手の旅行会社のツアーに潜り込んで、イギリスへと旅だった。　問題はヒースローで発生した。旅行会社は、ツアーを途中で抜けるお客を嫌うので、私はそのことを内緒にしていた。空港での入国審査の時、ほかのツアー客は「さいとしーいんぐぅ」とか言って、スカスカ通っていくのだが、私はビザを発給してもらわなければならないので、ちょっとだけ手間取った。　心配した添乗員さんが、近寄ってこようとするのが、視野の片隅に入ったが、大学からの入学許可証を見せ、簡単に何をべんきょーするのかとか言ったことを、入国審査のヒトに説明するという程度だったので、手続きはすぐに終わった。が、入国審査を抜けて5歩くらい歩いたところで、とんでもない問題を発見！　その日がたとえば今日と同じ11月20日だったとすると、ビザの期限が11月30日とか、そんな感じだったのだ。　旅行で入国しても、たしか3ヶ月くらいは自動的にもらえたはずだと記憶しているが、なんと1週間ほど（そんなビザあるんかい）。何故そんなことになったかと言うと、その審査官は「2004年11月20日から2005年11月30日まで」と、まる一年分のビザを発給しようとして、後半の年度を間違えて2004年にしてしまった、ということなのだった。　あわてて振り返り、間違いを訂正してもらおうとしたら、なんと！　私の担当官は、私の審査を終えた時点でお休み時間に入ってしまったらしく、姿がない！　　「ええええ～っ」と絶叫した私に、今度こそ添乗員が駆け寄ってきた。「どうされましたか？」　私が事情を説明すると、途中で抜ける客と分かって、添乗員は一瞬イヤそーな顔をしたが、それでも親身に、審査官たちの控え室のようなところに、一緒に行ってくれようとした。そこに登場したのが、バカ子女である。　その人は、日系の某大航空会社のスチュワーデスさん（今風に言えばキャビンアテンダント）。大柄で押しの強い雰囲気の、とてもきれいなヒトだったが、あごをこう、くいっとあげて、彼女よりも背の高い私を見下ろすようにして言った。「あの席を離れた時点で、彼女の勤務時間は終わっているのでぇ～す。彼女がそのビザを発給したのは勤務時間中（ここでちゃっと両手を左右に開く）。任務を終え、席を離れた彼女には、すでにそのビザを修正する権限は失われました。あなたはAlien Registration Office（外国人登録局。ここだけみょおおおお～にキコクシジョっぽい発音）に行かねばならないでしょう」　なんだか下手くそな英文和訳みたいな日本語で、その美人すっちゃですは言った。「でぇ～す」という妙な抑揚もカンにさわったし、まるで自分がイギリス政府を代表してモノを言っているような、高圧的な態度にも腹がたった。が、そのときの私は、それどころではない。入国早々そのような状態は、さい先悪いも良いところで、もう、「ど～しよ～～～」と泣きたい気分である。　勝ち誇ったように私を見下ろす（物理的には不可能なのだが）すっちゃですと、心配そうにおろおろする添乗員さんと、私が立ちつくしていると、そこへ件の入国審査官のおばさんが戻ってきた。と言うか、これから休憩に出かけるらしく、手にはぶらぶらと、化粧ポーチのようなものを持っている。　彼女は最後に担当した私のことを覚えていて、「あら～、どうしたのぉ～～？」と近寄ってきた。そこで私が、「び、びざが、びざがあああ～」とパスポートを差し出すと、そのおばさんは大爆笑。「ごめんなさい！　これじゃ観光だってできないわよね。年を間違えちゃったわ～～」　彼女はポケットからペンを出し、期限である○○○○年にでっかくバッテンをつけ、その上に1年プラスした年号を書いてくれた。はいっと私にビザを戻すと、彼女は「がんばってね～」とひらひら手を振って去っていった。　さんざんすっちゃですに脅されていた私と、私とともに「こりゃー大変なことになった」と、少しびびっていたまだ新米らしき添乗員さんはあっけにとられた。「セキヲハナレタダンカイデ、カノジョノニンムハシュウリョウシタノデハナカッタノカ？」　私たちは、「せーの」と声を掛け合ったかのようなタイミングで、某日系航空会社の高圧的スチュワーデスを振り返った。いち早く逃げ去ったのか、彼女の姿がすでに消えていたことは言うまでもない。　それにしても、日本だって書類を直すときは、ちっちゃな修正印を押すとかすると思うのだが、ボールペンでバッテンをつけて書き直す程度で、オッケーなのだろうか？　入国早々、イギリスのアバウトさに遭遇した私だったが、その後も、そのアバウトさに泣かされ、また助けられることになったのだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～たぶん続かない（笑）～～

2004年11月20日

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棚の上にのぼる方と私

　何故だか知らないが、アタマの具合がちょっとおかしくなった人に、突然思い出される、という特技がある。　高校時代に、全然まったく何の接点もなく、2、3度口をきいたことがあるだけ、というクラスメートから、卒業後3年か4年くらい経ってから、分厚い封書をもらったのが、そういう特技の、そもそもの始まりかもしれない。　彼女は入学時に、新入生代表をつとめた秀才で（入試でトップだった人が、代表をやるらしい）、スポーツに明け暮れていた私なぞのことを、覚えていてくれたのね、という感じだった。　彼女は将来、法律家になるべく、大学でばりばり勉強していると風のうわさに聞き知っていたが、その手紙によれば、将来は大学に残り、教員を目指したいという話だった。　結構なことである。が、結構ではないのは、どうしてまた、そんな話を私のところにめんめんと書きつづって送ってきたのか、という点だった。それでも、ものごとをあんまり真剣に思い詰めるタイプではないので、「お手紙ありがとう」という、短い返信を返したっきり、彼女のことは忘れてしまっていた。　が、さらに数年して、彼女がノイローゼで大学を休学したっきり、どこへ行ったものか誰も知らない、という話を、同窓会が三度の飯より大好き、というクラスメートから聞かされた。同窓会マニアの友人は、私にその秀才との接点など、あるわけがないと思っていたから、「覚えているかなぁ、ほら、いつも1番だったナントカさんのこと」という風に話を切り出したのだったが。　同様のことが、大学卒業後もあった。この話は細かく書くと、ちょっとアレかもしれないので詳細は省くが、秀才で前途洋々な知人が、高望みしすぎて精神に異常をきたし、私にめんめんめんっと長い手紙をよこした後、ノイローゼで入院、という怖いほどに全く、同様のシチュエーション。そういうタイプに、ノイローゼ突入真っ最中に思い出され、思いの丈を訴えかけられる私って、いったい何なんだろうか？　最近も同様のことがあった。今度の相手は男性で、自分を高く評価しすぎたという点などは共通しているが、失踪後、帰還してから連絡してきた、という点が異なる。　彼は短いメールの中で、自分が今、非常にやりがいのある仕事をしている、ということを書いていた。まあ、よかったじゃん、と思った私は、またまた当たり障り無く返信。しかーし、翌々日に戻ってきた彼の返信に目を疑った。「Gomaさんが、元気そうでなんだかほっとしました」はあああああああ？　おめーだろーが、失踪してみんなに心配をかけていたのは。おめーに「元気そうでホッと」される言われなんぞ、私にゃないぞおおおおおおっ　私の周囲にはこのように、自分のことを棚に上げる、どころか、自ら棚の上にのぼっちゃってモノを言うようなヤツが多いので、ひじょーに困っている。

2004年11月12日

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やくざっぽい方と私

　先日、朝の満員電車で、非常にはた迷惑な男性と遭遇した。五分刈りで大柄、厳つく凶悪な感じの顔をした人で、黒いスーツに白いネクタイ。通勤者で満杯の電車でなければ、見るからにヤ○ザである。　私はたまたま最後に乗車して、ドアの近くに立っていたため、そしてそのドアが、目的地までの区間で、非常に良く開く側だったため、駅に到着するたびに、いったんホームに降りてまた乗る、ということを繰り返していた。　ある駅について、その○クザっぽいお兄さん（といっても30代後半くらいの人）が、ずずいっとドアの方に寄ってきた。その駅は結構人が降りるところなので、到着前からそんな風に、ドア近くまで進出してこなくても、十分に降りられる。そのことをそのヤク○っぽいお兄さんは知らないのか、とにかくぐぐぐ～っとドア口に押し寄せてきたのだった。　当然、ドアのところにいる私が、お兄さんには目障り。という訳で、私はその人に、器用にも肩でどんとこづかれ、はじき飛ばされた。ドア前の最前列まで到達した○○○っぽい兄さんは、ギロリと私をにらみおろし、スーツの襟をトントンと引っ張って正面を向いた。その人に突き飛ばされて、ドア近くの座席に座っている人に、バッグをぶつけてしまった私は、へこへこ謝りながら思った。　このやろ～～～～～　ついに次の駅に電車が到着。ドアが開いて、その○クザっぽい人が降りたとき、私は靴を前に出した。それも靴底をぺた～っと。蹴るつもりは無かったんだけど、後ろから来た人に押された不可抗力で、黒いスーツにべたっと靴底をなすりつけたばかりか、さらにどんっとけっ飛ばすことになった。　私はこのときばかりは、必死に鉄パイプにつかまり、ホームに降りないようにがんばった。その甲斐あって、悪鬼のような形相でこちらを振り返り、仁王立ちしているヤ○ザっちい人と、鉢合わせせずにすんだのだった。　とは言うものの、万が一、そのおにーさんがいちゃもんをつけてきたら、受けて立つ気が私にはあった。何しろ混んでいる電車だ。誰が蹴ったのか、そしてそれが故意だったのか否か、彼に証明できるはずがない。　確かに彼はホームから、私をにらみつけていたような気がしたが（目は合わせないようにしらばっくれていたけど、睨んでいるのが視野に入った）、それはもしかしたら、私にやられたという確信があったからかもしれない。彼が私を邪険に肩ではじき飛ばした、という自覚があったからこそ、私にやりかえされたのでは、という疑念を抱いたってことだ。　お互い様よ、おにーさん。朝っぱらから横柄な態度がとりたいんだったら、そんなカッコして満員電車に乗るのはやめなさい。ほんとーに迷惑っ

2004年11月10日

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コンプレックスな方と私（3）

　かつての同僚で、不祥事を起こしてクビになったヤツがいる。非常に傲岸不遜な態度を取る男だったけど、仕事はできた。と言うか、デキルという印象を、周囲に振りまくのが上手だった。上司がいる場面でのみ、妙にテキパキ動き回る、そんなヤツだ。　別の同僚で（これも男性）、いつも不平不満ばかり言っている人がいた。何だかオバサンみたいに、人のうわさ話をするのが好きで、恐いほどに情報通。私はそんな彼から、印象だけデキル男の素性を聞いたのだった。　それによるとテキパキ君は、もとは理系の人で、これも数学をやっていたのだけれど、行き詰まりを感じて、文学部に転部したらしい。それはそれで良くあるパターンだが、彼の場合は、「文転」が心の傷になってしまったらしい、というのだ。　だから、文系一筋でやっている人に、非常なコンプレックスを感じていた。彼は何だかんだで、順調に進学した人より、3年ほど遅れてしまった。文系一筋の人が、修士を終わらせるくらいの年月を、彼の観点からすると「無駄にしてしまった」のだった。　そんな彼が、上司をぶん殴るという不祥事を起こして（それも自分が大失敗をして、それを隠そうとしたために手遅れになり、上司が尻ぬぐいをしてくれたのに、だ）、職場を離れたときの捨てぜりふが凄かった。「オレは大学に戻るよ。オレに相応しいのは、大学教授職くらいだからな」　……　はああああ？である。　で、今日、たまたま偶然、某地下鉄の駅で、数年ぶりに彼に遭遇した。まだ30代の前半だというのに、髪の毛が真っ白！　染めているとか、そういうのじゃなく、あのゴマシオさ加減は、若白髪に相違ない。そして、その髪を、ヘンに伸ばしてポニーテールに結っていた。　「大学に戻る」なんて言っていたけれど、さえない学生だった彼が、大学院に入れる余地など無かった。フリーターのようなことをして、ふらふらしていると、例の消息通の同僚から聞かされたが、どうも今日見た彼の様子からすると、以来ずっと、ふらふらし続けているようだ。　白髪のポニーテールで、ぼーっと地下鉄の天井を睨んでいた彼に、私は声をかけなかった。大嫌いなヤツだったこともあるが、何となく、そっとしておく方が良いように思われたから。　本来なら「ざまーみろ」と言いたいほど、私も彼には迷惑を被った。でもやはり、声をかけないのが武士の情け、という感じがしたのだった。

2004年11月05日

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コンプレックスな方と私（2）

　文系の女性に、大好きな数学で勝てなかったがゆえに、歪んだ性格になった（もともとか？）数学教師の話を書いたら、バカな社会科教師のことを思いだした。　この人も、高校時代の教師。彼は私たちが3年生の頃に入ってきた新人教師だったから、直接、授業を受けたことはない。でも、後輩たちからとんでもない彼の言動を聞かされて、最初は信じられなかった。　最初は、若くて不細工な、消極的な雰囲気の小太りの新任教師、という印象だったらしいのだが、慣れてくると次第に高圧的な態度を取るようになったという。そしてある日、彼は授業にヘンな巻物を持ってきた。東大の卒業証書だった。「よーく見ておけ。お前たちは一生、こんなものは拝めないんだからな」　それを彼が受け持っている、全クラスでやったらしい。「個性を大切にする」とか言う、訳の分からない校風のため、テンデンバラバラなタイプの生徒ばかりの学校だったが、そのときばかりは、全員の反応が一致したらしい。「とーだいまで出てて、こんなチンケな高校の教師かよ。おちこぼれ〜〜〜っ（爆笑）」　幾つかのクラスは、それを声に出してはやし立てたらしい。　と言うわけで、本当なナイーブだったのであろう彼は、私が卒業するよりも早く、我々の高校から姿を消したのだった。ノイローゼになってしまったらしい。

2004年11月04日

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惚けた方と私（3）

　先日の、バスの中で起こった事件（？）の話を、今日（と言うかもう昨日か）、友達に話したら、「あああああー、同じ事があった！」と言われた。　私の場合、携帯電話の時刻表示を見ていただけだが、友人は実際に電話をしていた。たまたまかかってきてしまい、「今、バスの中なんです。かけ直します」と言っただけだそうなのだが、車内で通話したことは事実。だから近くにいたお婆さんに、「あんたっ！　バスの中では携帯電話使っちゃイケナイのよっ」と怒鳴られたときも、素直に「スイマセン」と謝ったと言う。　ところが、である。そのお婆さんは、トクトクと「車内で携帯電話を使うとね、あんた、罰金とられんのよ。そんなことも知らないの。6000円なんだからねっ」と説教をたれる。それって、11月1日から施行されたアレのこと？　友人曰く、「お婆さん、ドライバーの携帯電話使用、ってことが分かっていなかったんじゃないかなぁ。ソレだったら、大型車は7000円ですよ、とか、言ってやろうかと思ったけど、やめた（笑）」　そんなにも事実誤認をするなんてこと、あり得るのだろうか？　ちょっとボケ気味？　ちなみに、あまりにも似たお婆さんだったので、「それって磯野フネさんみたいな髪型した、キツネ面のばーさん？」と訊いたところ、友人のバージョンは小太りで、一見、おとなしそうな顔をした人物だったそうだ。

2004年11月03日

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惚けた方と私（2）

　先日、コンサートに出かけた。この「変な人」日記（？）の初期にも、コンサート会場で出会う変な人の話を書いたけれど、今回は特に異常者にまとわりつかれることもなく、音楽を楽しむことができたのだった。　が、会場に出かけるバスの中で、ヘンなばーさんに捕まってしまった。　会場の斜め前に停留所のあるそのバスが、一番便利だと思って乗ったのが間違いで、道路はかなり渋滞していた。開演時間が迫っていたので、ハラハラしながら携帯電話の時計を見ていると、80近いと思われる、でも、とっても矍鑠としたキツネ顔のおばあさんが、「ちょっと、あんた！」と大きな声を出した。　「バスの中ではねぇ、携帯電話は使わないでちょーだいっ」「えーと、使ってませんが……？」「使ってるじゃないのっ！」「見てるダケなんですが」「あら、そうなの？　電波とか、出てんじゃないの、ソレ」「電波だったら、そこら中に飛んでると思いますけど……」　お婆さんはそれで静かになったので、やれやれ。　確かに優先席の近くでは電源を切りましょう、というルールはあるが、私の座っていたのは、最後列に近いところである。それに自慢ではないが、私の携帯電話はめったに着信しない。私も、親しい友人も、電話が大の苦手だから、というのが理由である（友達がいないんじゃないのよ。電話でべちゃべちゃしゃべる相手を、友達とは呼んでいないだけで）。　時間が気になって気になってしょーがなかった私。携帯電話はそのままずっと、左手に握りしめていた。すると、3分ほどたった時、またそのお婆さんが怒鳴りだした。「ちょっとあんた！　電話かけないでちょーだい！　バスの中はね、通話禁止なのよっ。そんなことも知らないのっ。ちょっと、アンタッ、アンタッ」　最近買い替えた私の携帯は、折り畳み式である。閉じたままの携帯を、手の中に握りしめて、膝の上に置いている状態で、どのように「通話」すると言うのか？「使ってませんけど……？」「あら、そうなの？　でも、電波とか〜以下略〜」　そしてまた3分くらいたったところで、お婆さん、再び「アンタ！」と怒鳴り始めた。どうやらボケ症状の方らしい。なまじシャキッと元気そうなだけに始末が悪い。「バスん中で電話かけないでちょーだいっ！」　さすがに温厚な私（ほんとか？）も、「だーかーらーーーーーー、使ってないでしょっ。閉じたままで、どーやって通話するのっ」とちょっと声を荒らげてしまった。　で、結局、私が会場前で降りるまでの25分くらいの間、そのお婆さんは断続的に「ちょっとアンタ！」を繰り返したのだった。3分休憩、ぐずぐず言うのが2分。1サイクル5分とすると、5回はヤラレタ計算である。　分かっていて携帯をしまわない私も私だが、腕時計してなかったし、バスの前にある時刻表示は良く見えなかったんだもん……　金属アレルギーの上、革のベルトがあまり好きではないので、時計から解放されたのは非常に助かっているのだが、やっぱりこれからは、腕時計をした方が無難かも。とほほ。

2004年11月02日

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コンプレックスな方と私

　とある男性。あまり成績は良くなかったけれど、数学が大好きだった。それで必死に頑張って、東京の2流理科系私立大学に入学した。　彼が通っていた県立高校には、「三羽がらす」と呼ばれる、非常に優秀な生徒がいた。3人とも女性。そして3人とも東大志望。ところが運命とは皮肉なもので、その中でもダントツにトップだった女性が、サクラチル。　その人は法律家志望だったのだが、オールマイティに何でもできる人だったので、東大を落ちたショックからか、急に進路を変更した。そして、その男性が必死に勉強してようやく入った理科系大学に、あっさりと進学した。　その男性にとっては、その女性の存在が目の上のたんこぶ。数学が好き、という気持ちだけでは、才能のある人には勝てない……　それを4年間ずっと、思い知らされ続けた。　そして更なる悲劇。凡庸さを努力で補い、頑張っていた彼は、大学院に進学して、大学に残りたいと考えていたが、彼が欲しかった座を、彼女がまたまたアッサリと奪ってしまった。　彼は泣く泣く、とある高校の教師となり、理工系を志望する女子生徒に、辛く当たることでうっぷん晴らしを続けた。　ところが不思議なことに、彼は、自分を失意のどん底に突き落としたのと同じ系統の女生徒には優しかった。つまり、文化系の志望だけど、数学も非常に得意、というタイプである。　そういう生徒をいじめれば良いのに、彼は、理工系志望だけれど、文系志望で数学もできる女生徒には、太刀打ちできない、というタイプの女生徒をいじめた。　その男性は、私が高校時代に出会ったセンセーであるが、私の仲のいい友達が、陰湿にいじめられていたので、大嫌いだった。例えば、文系で数学もできる某優等生が、スラスラと回答すると、突然私の友人に話しかけるのだ。「○○さん、羨ましい、って顔してますよ。文系なのにあんなにできて、自分は絶対にかなわない、って悔しそうですよ」　一言一句同じ、とはいかないが（昔のことなので）、内容的には100％、これがその教師の言った言葉である。私もその授業に出ていたから、ナマで聞いている。　私が彼だったら、文系で数学ができる子の方に、たぶん、ちょっとしたイジワルをするだろうと思う。そして自分ソックリの、理系を志望しているのに、大してさえない子に、優しく接すると思う。　彼のアレは、自虐だったのだろうか？　私たちの学年ばかりでなく、毎年毎年、ああいうことをやり続けていたのだろうか。そして現在もやっているのだろうか。　いずれにせよ、私には理解のできない歪み方をしたヒトである。はた迷惑な話。

2004年11月01日

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上手な方と私

　友達に、○○○がとても上手な人がいる。って、変な伏せ字にすると、かえって問題アリそうなのでうっすら書くと、「感じている振り」が上手なのだった。　と言ってももちろん、それを目撃したことは無い（当たり前だ）。本人の自己申告を「はあ、そうなの」と承っただけである。　彼女はちょっと童顔で小柄な方なせいか、男性の目から見ると清純派に見えるらしいが、経験はかなり豊富だった。私と知り合った頃は、5つくらい年下の彼氏とつき合っていたが、「正直言って、彼は今までのオトコの中で一番つまらない」と、女友達にはかなり露骨に不満をもらしていたのだった。　が、本人が上手にフリをしてしまうものだから、彼氏の方はもう、自分自身に絶大な自信を持ってしまっていた。彼はルックスが良く、非常にモテた割には女性の経験が浅かったので、日に日に横暴な勘違い野郎に育ってしまったのだった。　ある日、二人は空前絶後の大げんかをした。何が原因だったのかは、聞いたけど、部外者には釈然としなかった。で、キレた彼女はついに言った。「アンタとなんか、全然感じてないんだから、ヘタクソ！」　事後、女性にふふんとせせら笑われて、不能になってしまった人を知っているので、そういうことに対して男性は、かなりナイーブだという印象を、私は持っていたのだが、その彼氏は本当に経験の浅いバカモノだったらしく、彼女に宣告されてもビクともしなかった。「まったく言うに事欠いて」みたいに、ウソだろう、という顔でせせら笑っていたらしいのだ。　彼女にしても、かなり「ぶりっこ」して付き合っていたから（もしかして彼は、彼女が年上だとは知らなかったのかもしれない）、詳細な評価を述べる訳にもいかなかったのだろう。「くやしいいいいいいっ」と酒を飲んで泣かれたが、そんな話を聞かされる私は、たまったものではない。　とにかく、彼女はあまりに「上手」過ぎて、彼を図に乗らせてしまった訳で、それが余程悔しかったのか、彼と仲直りした後、同時進行で別の男性とつき合い、唐突にその人と結婚してしまった。結婚相手も彼女を「今どき珍しい、清純な女性」と勘違いしていたが、こちらはかなり年上で、経済的にも非常に安定した方だったので、今も上手く行っている。　彼女が勘違い君に育ててしまった彼氏は、その後も夜の帝王みたいな顔をして、女の子を引っかけまくっていたが（何しろルックスが良いから）、関係が長続きしない理由が、自分のお粗末さ加減にあるとは、まったく学習していないようだ。　誰か言ってやれよ（無理か、自己完結してるから）。

2004年10月27日

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美人という設定の方と私（4）

　同級生のドイツ人で、もんのすごいハンサムなヤツがいた。少女マンガに出てくる美男子そのもの、みたいな容貌で、世の中に本当にこんな顔立ちの人、いるんだー、と思ったものだ。　ところが、である、東洋系からは「ハンサム！」として熱いまなざしを向けられていた彼だが、ヨーロッパ系の学生からは、特に何とも思われていなかった。ごく普通の容貌、ととらえられていたようなのだ。　平べったい顔が多い極東系の人たちは、彫りが深い顔立ちを羨ましく、好ましく思うのかも知れないが、メリハリがあって当然、という顔立ちの人々にとっては、メリハリ部分に対する評価は、無いに等しいのかもしれない。やはり文化によって「美形」の判断基準というのは、かなり違うのであろう。　同じ東洋系でも、アラブ系の男子学生は、金髪碧眼の女性に弱かった。浅黒い肌と黒っぽい髪、瞳を持つ彼らにとって、色が抜けるように白く、髪の色も目の色も薄いタイプに、非常な魅力を感じたようだ。彼らが好んだタイプは、私などから見ると、取り立てて魅力のある容貌ではなかったのだが。むしろアラブ系の女性の方が、よっぽど綺麗なのに、と思ったものだ（これもまた、彫りが深いことへのあこがれかもしれないが）。　前に書いたかもしれないが、かつてハウスシェアをしたことがある韓国人の女性は、もー、毎日見とれてもあきないほどの美貌の持ち主だったが、彼女のボーイフレンドであるイギリス人男性は、彼女がすごい美人であるという認識は、もっていないようだった。　反対に、とあるイギリス人女性が、平凡な容貌の日本人男性のことを「あの短い鼻が、超せくしー」とか言っていた。「短い鼻」とは、低い鼻のことである。　不思議なもので、自分が大いなる欠点だと思っている部分が、他の文化圏の人にとっては、美点として評価される場合がある。容貌だけではなく、日本人がとっても気にする発音にしてもそうだ。　私の知人のイギリス人男性は、かなり英語が上手な日本人でも、時々「L」と「R」の発音を間違えるのが、「とてもチャーミング」と言っていた。相手が男性であれ女性であれ、また年代を問わず、キュートだな、と思うのだそうだ。　相手が高く評価してくれる場合は、自分の文化で言うと「勘違いだろ、をい」って感じのするときも、有り難く受け入れて置いた方が、精神衛生上良いのかもしれないと思う今日この頃だった。

2004年10月22日

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美人という設定の方と私（3）

　先日の、昼メロの話に戻るが、私が「あの器量って、ブスってことだよね」と勘違いしたのは、この人である。　この紹介図を見る限り、まあ「天性の美貌に恵まれ」というところは、おいおい、と思うにしろ、決して不器量な女の子ではない。が世相を現すような、ひどく昔風のベッタリした化粧をすると、素材の形の悪さがモロに現れてしまうのだ。　つまり、今のようなメイクが発達していない時代の、白塗り、べたっと口紅、という化粧で美人に見えるには、顔の造作が整っていることが必須。現在のような「個性的な美人」は、当時にあっては一種、二律背反と言えるのかもしれない。　私が「抜群のプロポーションと美貌でうんぬん」という雑誌の煽り文句でのけぞったのは、ファッションモデルの冨永愛だ。　プロポーションの方は認めるが、び、びぼう？　ウソだろう、最近はこういう顔を美貌と言うのか？？？？　でも、彼女が若くしてできちゃった婚をするんだか、したんだか、というニュースが出たとき、とある記事にホッとした。そこには「抜群のプロポーションと個性的なフェイス」とあったのだ。よ、良かった。彼女を美人と思わないのは、私だけでは無いらしい。　米田万里さんの、吉永小百合醜女説ではないが、私もかなり、世間一般から非難を受けるであろうような醜女説を唱えている。オードリー・ヘップバーンだ。　若い頃の彼女はとてもキュートで、魅力的であることは認める。バレエで鍛えた身のこなしや姿勢の美しさも、とっても素敵だ。が、どうにもこうにも、私には彼女は美人に見えないのだった。　オードリー、オードリーと未だにもてはやしているのは、どうも日本人だけ、というような話も聞いたことがある。私も日本の常識から、ちょっとズレているということなのかもしれない。

2004年10月21日

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美人という設定の方と私（2）

　ロシア語通訳の米原万里さんだったと思うが、吉永小百合が美人に見えなくて困った、という話をエッセイに書かれていた。美人に見えないどころではなく、むしろ醜女に見えるのだと言う。たぶん、東欧などで育った（だったかな？）幼少期の体験で、日本人的な美人観（？）を共有できないのかもしれない。　これは友達に聞いた話だが、古い日本映画をドイツ人に見せたところ、「で、一体この映画には美人は出てこないのか？」と言われたそうだ。名前は忘れたが、昔の日本映画界で一世を風靡した、何とか言う美貌の女優さんが出演していたのに。　と言うわけで、文化が違うと美人観も異なるし、その上に個人差もあるから、悲喜劇が起きることがある。友人の友人であるアメリカ人が、アメリカに留学していた日本女性に恋をした。そして目出度く、同棲生活に入った。　ある日、その日本女性が、日本に一時帰国することになった。彼女のことを「絶世の美女」だと思っているアメリカ人の彼氏は、「彼女を一人にするなんて、心配だ。危険だ」と、後を追って日本に飛んだと言う。　が、彼の周囲では、悪友どもが大笑い。「あんな女、100年放って置いたって、男なんかできやしないさ」（って100年経ったら、白骨化してるよ）。ハッキリ言って、その「絶世の美女」は、ものすごい醜女だった。日本人から見たら、あまりのことに、何度もジロジロ見てしまうほどのブス。そして、彼以外のアメリカ人から見ても、かなり醜い容貌だったようだ。　私がえげれすに住んでいた当時、丁度日本フェアみたいなことをやっていて、博物館で日本のからくり人形の展示をしていた。知り合いのアラブ系留学生が、ある日、嬉々として私に報告してくれた。日本のからくり人形を見てきた。すばらしい！そう言えばオマエは、あのからくり人形にそっくりだ。　ぶううううううっ　やだよぅ、からくり人形みたいに無表情で、ぺろーんと丸い、あっさり平らな顔だなんて。侮辱だあああああっ　と言うのが、私の反応。まさかそう言いはしなかったが「ふううーん」と、そっけない返事をしたら、彼は怪訝そうな顔をしていた。どうやら、ホモの彼にしては精一杯、女性に対する賛辞をおくったつもりだったらしいのだ。うーん、お饅頭みたいな顔したからくり人形に似てるってのの、どこが賛辞なんだ？　イタリア人の友人からは今も良く、「今日、貴女にそっくりな彫刻と出会いました。貴女のことを思いだしています」なんて、超ロマンチックげな絵ハガキなんぞを頂く。単なる友達なのに、ラテン系は暑苦しいのぉ、とか思いつつも、ハガキを貰ったのを喜んだりする。が、絵柄を見てガッカリである。いわばこんなような系列の写真だったりするからだ。　フランス人からは「Victoire de Samothrace」に似ていると言われたことがある。要するに首ナシである。　それなりに褒めてくれているのではあるらしいが、何だかなぁ、という感じがするのである。　普通の容貌をした日本人女性は、海外ではチヤホヤ（少なくとも日本にいるときよりは）されることが多く、何だか勘違いして自分を美人だと思いこんで帰国する、なんてケースを良く見る。そういう風に思えるというのも、幸せなことかもしれない（私は無理。クビないし）。

2004年10月20日

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美人という設定の方と私（1）

　先日、昼間のドロドロ連続ドラマを見るチャンスがあった。とある娘が貧乏のため、女郎屋に売られるというような話だ。　彼女はその店の息子と恋仲らしく、息子は必死に彼女を救おうとするのだが、息子の両親はそんなこと許すはずもない。息子の義母である後妻さんは、「あの器量だもの、高く売れますよ」みたいなことを、息子の父であるダンナに言うのである。　が、私は最初、このセリフの意味が分からなかった。「あんなのが高く売れるって、どういう意味なんだろう？？？？？？？」　つまり私は「あの器量」という言葉を、「あのひどく不細工な容貌」という風に受け止めていたのだ。だって、その役をやっている子は、お世辞にも綺麗とは言えない。特に、昔風のベッタリした口紅で出演しているから、形の悪い唇がモロに目立ってしまってグロテスクなほどだ。　しばらく（・・） ←こんな顔をしてフリーズしていたが、さすがに3分も経つと「あ、あの器量って、美人、って設定か」と納得がいった。が、その設定にはどうにも、納得できなかったのだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　----ちょっと続く----　　　　

2004年10月19日

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ヘンな学校と私（2）

　教育実習をやっている間に、実習生は色々な役割を持っている先生方に、その仕事に関するお話をうかがう機会が設けられた。進路指導の先生の話とか、生活指導の先生の話とか、だ。　その中で、誰だったか忘れたが、一人の先生は話が乗ってくると、つい口を滑らせた。「先生はね」　私たちは教育実習生であり、その人の生徒ではない。かなり年下ではあるが、一応は大人を捕まえて、自分で自分を「先生はね」と言っちゃうその神経に、私たち教育実習生はかなり白けた。実習生控え室に戻ってから、「だからセンセーってイヤなんだよ」と不謹慎なことを言ったヤツもいるし（だったら教職とるなよー）、「ああいう先生にだけはなりたくない」と前向き（？）に決意を固めたヒトもいた。　生徒に対してでも、「先生は」「先生が」「先生の」と、何かの活用みたいだけど、そんな風に言うって、どこかヘンじゃないのだろうか。　と思いつつも、日本の文化は「先生は」とか「お母さんが」とか、大人が子どもに対して、そういう風に接する姿勢が減ってきたために、ちょっとおかしい方向に行きつつあるのかも、というような気もする。　「言い訳があるんだったら、お母さんに言ってみなさい！」なんてお小言は、しょっちゅう頂戴した覚えがあるけど、自分の子どもを「彼」だの「彼女」だのと呼ぶおかーさんたちは、子どもに向かって話すとき、「私」と言っているような気がしないでもない（実際はどうなんだかしらないけど）。　それはともかく、国旗掲揚癖のあるその学校は、その他の点でも実にヘンだった。音楽の先生が、他の先生方を仕切っていたのだ。　普通、学校内で（暗黙のうちに）力を持っているのは、主要教科の先生だろうと思う。そして年功序列とか、教師としての力量とか、熱意とか言ったものによって、最終的な序列が決まる、というような、そんな感じでは無いだろうか。特に、場合によっては非常勤の場合もあり得る音楽の先生が、自分よりはるかにベテランで、力のある先生たちまでをも、あごで使うような雰囲気は、絶対にどこかおかしい。　実は私に「スパイかと思った」と言った先生が、その仕切り屋の音楽教師だったのだ。何で彼が、あんなにも厳然とした力を持ち、校長や教頭までもが遠慮していたのか、その理由は分からない。が、今にして思うと、ハタを上げ下げして、直立不動で君が代を聴く、というルールは、彼が作ったのかも知れない、という気がしているのである。

2004年10月15日

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ヘンな学校と私

　私は何故か、教員免許を持っている。それも最も苦手な教科の……　ま、それは良いのだが、教員免許を取るからには、教育実習というものが必須で、私も行きました。例の、体育の成績に「1」をつけくさったバカ教師のいた母校、ではなくて、同じ学区内の別の中学校だった。　こぢんまりとした、感じの良い学校で、実習仲間も感じのいい人ばかりだし、実習生に与えられた控え室も、広々していて快適だったし、私の直接の指導教官もとても感じの良いベテラン先生だったしで、言うことナシの環境だった。しかし、その学校にはみょーな習慣があった。　朝と夕方、「君が代」が流され、国旗と校旗の掲揚が行われる（夕方はハタがおろされる）。そしてその間はどこにいようとも、国旗と校旗があると思われる方角に向かって、直立不動の姿勢でいなければならない。はあ？　今どきそんな学校、あるのかよ、と、実習生一同、首をかしげたものだった。　が、私としては、先生の目があるときは直立不動しても、それ以外の時は生徒たち、適当にさぼっているのだろうと思っていた。ところが、である。　私がトイレ掃除の監督をしていた時だ。夕方のハタサゲ儀式の時間となり、スピーカーから国歌が流れ始めた。その途端、トイレの床をモップで拭いたり、洗面台を洗ったりしていた生徒たちが、すっくとまっすぐに立ち上がった。そして、国旗があると思われる方向（それは、トイレの一番狭い壁の方向で、女子便所なのに、何故か、男性用便器がぽつんと置かれている方角）に、神妙な表情を浮かべた顔を向けた。　「えー、こんなとこでも、やるワケ？　いいじゃん、みんな、そんなことしなくてもー」と、不真面目な教育実習生である私は言ったが、誰一人口をきこうとしない。何だかバツの悪い雰囲気になってしまったが、私は国旗の方角らしき男性用便器に、お尻こそ向けなかったが、対面もしないで音楽が終わるのを待った。　「君が代」が終わると、生徒たちは私の方を振り返り、「どこにいてもやらないと、ダメなんです。ばれたら恐いから」と言った。「え、じゃあさ、もしトイレに入っていて、掃除じゃなくって、純粋に個室内でしゃがみこんでいたら、どうするわけ？」「個室の中でも立たなくちゃダメなんです」「えー、まだ途中だったらどうすんのよー（下らないことが気になる私である）」「この時間帯には、本来、なるべく国旗が見える位置にいるように、って言われてるんです」　国旗作業の時間帯には、トイレに入っちゃいけないのね。なるほど。　とにかくヘンな学校だったが、どうやら外部からはかなり睨まれていたらしく、実習が終わった最終日の反省会で、主任の先生から「アンタ、スパイかと思ったら、そうじゃなかったんだね」と言われた。一瞬、意味が分からなくて絶句したが、どうやら、私が初日の朝礼で、実習生代表挨拶やった時の言葉に、問題があったらしい。　たまたま私はじゃんけんで負けて、生徒への挨拶をさせられたのだが、言うこともないので「何か相談したいことがあったら、気軽に実習生控え室に遊びに来てください」と話を締めくくったのだ。どうも学校側は、それで私を「要注意人物」「スパイ」だと思ったらしい。　でも、そんな風に思うと言うことは、スパイが偵察に来ても当然だ、という自覚が、自分たちにあるってことだよね。　あの学校が、これほど時代が変わった今でも、国旗掲揚と直立不動を義務づけているのかどうかは知らないが、10年前でも十分に、あれは異常な決まりごとだったと思う。

2004年10月14日

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あまりにもじっと目を見る方と私

　この前、「目を見ない方々と私」で、人の目を見ようとしない、変な人たちの話を書いたが、最近、あまりにもじいいいっと、こちらの目を注視してくる人に出会った。「なんか、アメリカ人みたいな感じだなー」と思ったら、案の定、アメリカからの帰国子女だった。　ところがどうも、この男性もウリ系勘違い派の子女らしい。彼がアメリカにいたのも、小学校に修学する以前の1年くらいのことらしいのだ。　彼はその他の部分でも、非常にアメリカ人的な振る舞いをする。たとえば、何かと肩をすくめたりと、身振りがでかい。また、目上の人に対して、敬語となれなれしいタメ口のようなものを、織り交ぜて会話するクセもある。ま、そのコンビネーションが、失礼にならないギリギリの線、そしてそこはかとない、お茶目な雰囲気を醸し出すギリギリの線をねらっているクサイので、上司からの受けは良いようなのだが、私はどーも作為を感じてしまって好きになれない。　だいたい、その程度の年齢で、短期間アメリカ暮らしをしていたからと言って、アメリカ人的な振る舞いが身に付いて今日に至っているはずがない。帰国後、彼自身か、両親かは知らないが、彼のアメリカナイズされた部分を保持させ、強調させようとした誰かが存在したはずだ。私がにらむには、それは、彼その人ではないかと思っている。　とは言うものの、現在の彼は英語は大の苦手。アメリカ人もあんまり好きではないそうだ。　裏読みばかりする私は、「アメリカ人は好きではない」という言い方をすることによって、自分のアメリカ的な素養を際だたせようと目論んでいるのでは、と意地悪な目で彼を見ているのだった。彼は目と目をじーっとあわせて、「威嚇」してくるけど、私も心の目で威嚇してんのよ。知らないでしょ。ははははは（ちょっと負け惜しみ）。

2004年10月02日

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ヒステリックな秘書の方と私

　秘書と言うと、美人で（なくても良いが）気配り万全、バリバリ仕事ができる方、というイメージがある。実際、外資系の企業で秘書をしている知人は、まさにそう言うタイプ。実にカッコイイのである。　ところが時々、とんでもなくバカちんな秘書の方に遭遇して、ぎょっとさせられることもある。最も思い出深いバカ秘書は、某協会の方。直接会ったわけではなく、電話でお話しただけだが、そのバカさ加減は、今も鮮明に記憶に残っている。　その日、私はその協会の、とある資料を請求するために電話をかけた。詳細な事情は端折るが、その資料請求は、あくまでも先方の便宜を図るために必要なもので、話は既に通っており、いわば、催促のために電話をかけたのである。　「～の件で」と言うと、会長さんの秘書が出てきた。「何ですか？」センベでも喰いながら、お気に入りのテレビを見ていた所を、新聞の勧誘屋さんのピンポンとかに邪魔されて、ムッとしているおばさんのような態度だ。　「何ですか」ってアンタ、電話を取り次いだ事務の女性が、何の用かは伝えてるでしょうが、と思ったが、私はニコヤカに、資料の件に関する同じセリフを繰り返した。秘書の方の返事は、「今、かいちょーいないのよねぇ。私に言われたって、わかんないわ」うっ……　ま、気を取り直して、とりあえず、ある部分の情報についてだけ、先に教えて欲しい、とお願いすると、「えーっ。もー、忙しいのに、困っちゃうのよねぇ、そういうこと言われてもっ」うーーーーん……　　そもそも、相手の便宜を図っているのは、こちらの方だったので、相手の資料の遅れを指摘して、催促すること自体、親切すぎる行為だった。放っておけば、困るのは相手なのだから。それを「忙しいのに困っちゃう」と言われても、困っちゃうのはこっちの方である。　結局、こちらが下出に下出にお願いして、ようやく彼女は情報を提供することを承知した。しかし、「ちょっと待ってて」と、保留で待たせること5分。例えて言えば、その協会の住所を訊いている程度の事柄なのに、5分……　彼女がようやく戻ってきて、「いーい、ゆーわよ」とだるそうに言ったとき、いい加減イライラしていた私はさすがに、若干、下出度が下がっていたらしい。「はい、お願いします」という私の声のトーンに、彼女を不快にする何かがあったのだろう、突然、彼女は切れた。「何なのよ、その態度はっ　忙しい中、親切に調べて教えてやろうっていうのに。それが人にモノを訊く態度なのっ？　ふざけんじゃないわよっ」ガチャンッッッッッッ　ツーツーツー……　えーっと、「その態度」と言われても、私は「はい、お願いします」と言っただけである。そりゃ、下らないことでさんざん待たされて、多少はイライラしていたことは事実だが、仕事相手に対して「さっさと言えよボケッ」というニュアンスを込めて、「お願いします」と言えるほど、私は自己表現に長けていないし、そんなことをする度胸もない。　また、「忙しい中、親切に調べて教えてやろうっていうのに」というのは、彼女の徹底的な勘違いである。忙しい中、親切にも問い合わせて差し上げたのは、こちらである。「それがモノを訊く態度か」というのも、よって、大いなる勘違い。訊いてるんじゃないのよ、おねーさん。そちらが1週間前に提出すべきだった情報なのだよ。　……と、言うのは後知恵であって、がちゃーんと受話器を叩きつけられた時の私は、しばし呆然とした。一瞬、何が起こったのか分からなかった。3秒ほどして怒りがこみ上げて来、更に3秒ほどして、またまた困惑に戻った。このあと、どうしよう？　情報の催促が上手く行かないことで、私のミスになることは無いが、そのまま放っておくわけにも行かない。私は渋々もう一度電話をかけた。すると最初に話をした事務の女性が、出た。「すいません、あのー、秘書の方に電話を切られちゃったんですけど」「申し訳ありません。資料の方は私が揃えて、すぐにお送りしますから。本当にお手数をおかけした上、失礼なことになってしまってすいませんでした」尋常な応対である。ここもまた、「下っ端」の人の才覚に救われて、運営がなんとか成り立っている組織なのであろう。　後で小耳に挟んだところによると、その協会の秘書は会長の姪だそうで、仕事など何一つせずにぶらぶらして、高給を取っている人らしかった。ちなみに、ワガママが過ぎて、何度お見合いをしてもダメ、という（嫌な言い方だが）「行き遅れ」な方だとか（さもありなん）。　ちゃんとした企業ではなく、財団法人とか、何とか協会とかに、おバカな秘書の方が多い気がするが、案外そういうところはみな、縁故関係で無能なバカ女が秘書という肩書きを得て、のうのうと遊んでいるのかもしれない。もちろん統計を取ったわけではないので、真相は分からないけれど。

2004年10月01日

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帰国子女の方々と私（2）

　けっこう多くの帰国子女な方々を知っているが、不思議なことに私の知人はみな、「帰国子女であること」を過度に意識している人ばかりだ。タイプ的には「帰国子女であることをウリにしている」か、「病的なまでに隠しているか」の2つの分かれる。　世の中には、「帰国子女であること」を自分の持ついろいろな特質の中で、とりたてて前面に出すほどのこともない、と自然体の人もいるはずなのだが、どういう訳なのだろうか？？？　類は友を呼ぶ、と言うから、私にも何かを隠匿したり、あるいは過度にアピールしたりするところがあるせいなのかもしれない。　隠匿系帰国子女は、帰国直後にイジメにあい、それで必要以上に経歴を隠すタイプがほとんど。彼らの心の傷は私もよく理解できる。人間的には常識派が多いようで、へんな人としてここに登場してもらえる人は、今のところ知らない。　が、ウリ系子女の場合は、更に2タイプの分かれる。正統派か、勘違い系か、に。　正統派の代表は、「帰国子女の方々と私（1）」にご登場いただいた姉妹の姉の方。すべての点でネイティブに迫る英語力の持ち主だったから、ウリにするのは至極当然である（ちなみに妹の方は、隠匿派の代表かもしれない）。しかし、勘違い派はもー、どーにかしてくれよ、って言うほどバカちんなヤツばかりである。　直接の知り合いではないが、とあるウリ系勘違い派の子女は、日本人相手のメールにも唐突に英語を挟み込むそうだ。と言っても、「See attached document.」くらいのことらしいのだが、スペルミスが頻発するため、受信者の間ではいい笑いモノとなっている。　また別のウリ系勘違い派は、帰国子女であることを買われて某企業に就職したのだが、自動詞と他動詞の区別もつかないバカ者だった。そのバカ者と仕事をするはめになった私は、いい迷惑である。　目を覆いたくなるようなヒドい間違いは、さすがに直さざるを得ないのだが、私がそうすると、ウリ系勘違い派のプライドは傷つくらしい。訂正を更に訂正するのである。私が更に直すと、更にでっかく直してくる。だーかーらー、そんな英語、ねーんだってばよっ　と言う訳にも行かず、しょうがないから「下っ端」の職員の方に、後の始末をお願いしていた。　そこの会社は、帰国子女を高い給料で正社員として雇っているらしいが、実際に仕事を切り盛りしているのは、パートのような待遇で冷や飯を食わされている臨時社員の方々であった。彼らは実に仕事のできる人たちだったから、あの会社がつぶれずにいるのはおそらく、臨時社員や契約社員に良い人材が揃っている故だろう。　最近であった勘違い派は、英語の発音がよいことをウリにしている女性。この人、カナダに住んでいたことがあるらしいのだが、なんとまあ、その年齢は4歳から5歳にかけての1年3ヶ月だそうである。しかも私が聞いたのは、「私は英語の発音がよい」と言うご本人のセリフのみで、肝心の「すばらしい英語」は聞かせていただいていない。　だがまあ、社交辞令として「わー、すごいですね、その年齢で発音が身に付いているなんて」とセジを言うと、彼女は「子供の頃に海外に出ていた人は、そんなこと当然です」とツンとしてみせた。「でも、子供って身に付くのも早いけど、忘れるのも早いって言うじゃないですか」「だからっ、子供の頃に海外に出ると、発音は身に付くんです。終生忘れないんです」彼女はかなりぷんぷんした様子で、そのように断言した。　馬鹿者！　子供時代に海外に出ても、彼女程度の年齢と期間では、その土地の言語が完全に身に付かないってのは、言語学的にはじょーしきだ。滞在国の言葉に親しみを感じたり、片言でも発声にヘンな気負いがなかったり、ということは確かにあるが、「発音が良い」というレベルは無理である。　心の中でぜーぜー息を切らせながら、彼女の思いこみを罵倒していた私は、表面はにこやかに「それは○○さんの才能ですよー」とまたまたセジを言った。「才能ですよー」の後ろには「思い込みの激しさ、っていうね」という無言の補足がついていたことは言うまでもない。　ちなみに、その彼女、「私は英語の発音が抜群である」と言っている割に、誰一人として彼女が英語を使用しているところを聞いたことが無いそうだ。発音と言っても、色々な側面があると思うのだが、彼女が何をして「発音」と言っているのか、聞いて確かめてみたい気がするんだけど、私程度のおつきあいでは、とてもその光栄によくすることは無理そうである。

2004年09月30日

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チェーンメールな方と私

　知人に「幸福の手紙」とか「不幸の手紙」みたいなメールばかり送ってくる人がいる。　もちろん本人に悪気はないので、転送されてくるものに「不幸のメール」は無いんだけれど、あまりにも無防備にお人好し過ぎるんじゃ、と思うことが多い。　例えば、アメリカがイラクに侵攻しようとしていた頃、それを反対する署名メール、というのが転送されてきた。「イラクとの戦争に反対の人は、このメールの最後に自分の名前を書き加えてから、友達に転送してください」という内容のもので、最初の出所はアメリカらしい。　ずらずらずら～～～っと、日本人の名前がローマ字で続いているが、アンタら、このように人名を増殖させたところで、一体ダレがそれをしかるべき場所に送るのか、ってことを、考えてみたことは無いのか？　善意の固まりの日本人（もしくはメールの主旨が分かる程度に、英語に堪能であると勘違いして興奮しちゃった日本人たち、と言ったらイジワルすぎ？）のお名前リストは、善意の人たちだけに、何だかとっても寒かった。　最近来たチェーンメールは、心理テストのようなもの。リストアップされた動物を、好きな順番に並べ替えろとか、ある色に対して、誰をイメージするかとか、そういった質問がずらーっと並んでいる。　しかも、「ズル」しないで回答するための配慮（のフリ）で、問題と問題の間にイヤっていうほど改行がほどこされているから、質問量の割には果てしなく長いメールだったのもうざったい。　そしてそのメールの良くできているところは、最後の方に「今ふっと思いついたナンバーを、書き留めておきましょう」という項目があること。解説編では「書き留めたナンバーと同じ数だけ、このメールを知り合いに送りましょう」とある。そして、そうすることで、二、三日中に、驚くような素敵なことが起こる、と確約している。　私も一応、質問事項に回答してみた。そして「ふと思いついた数字」のコーナーの答えは「6」だったが、中には「13956」とか、とんでもない数字を思いつく人だって、いるんじゃなかろーか（この数は今、ふと思いついたやつ）。　もちろん私はたったの6通とは言え、チェーンメールを増殖させるつもりは金輪際無いが、ナイーブな方は「13956」通ものメールを出すんだろうか？　その知人も、私にまでメールをよこしたということは、かなり大きな数字を思いついちゃったのに違いない。そんな時にしか思い出してもらえない、っていうのも、ちょっと寒い今日この頃であった。

2004年09月27日

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駅前の店と私

　駅の前にある某チェーン店で、「カードを作ってもらえませんか」と、店員に勧誘されたことがある。　そこでは滅多に買い物しないので、「え、良いです」と断ったが、カード勧誘が何らかの成績になるのか、「今カードを作ると、今日から割引きになりますから」などと、泣きそうにな顔で懇願するので、感じの良い店員さんだったこともあり、「うーん、じゃ、まぁしょうがないか」と申込書を受け取った。　申し込みそのものは、別の階にあるカウンターで行う必要があったので、面倒だったがそこへ出向くと、店員とはうってかわって感じの悪い、警備員みたいな感じのおっさんがいて、私を冷たいヘビのような目つきで睨みつけてきた。　根が鈍感なので、そのように睨まれても余り何も感じず、申込書を渡してしばらく待っていると、その感じの悪いオヤジが、デキの悪い生徒を叱る強面の先生のような調子で私の前に立ちはだかり、腰に手を当てて怒鳴るように言った。「アンタ、ウチのカードを以前にも作ってるねっ」　はあ？　という感じだが、そうそう、確か、学生の頃、無理矢理に作らされた覚えがあった。そのチェーン店はもともとが月賦屋さんとして出発したから、私がカードを作った当時は現金払いや一括払いを嫌い、何でもかんでも分割払いにさせようと試みる傾向があった。それで嫌気がさして、そんなカードは1年も経たないうちに、捨ててしまったのだ。　そんな経緯をぼんやりと思い出しながら、「ええ、確か持っていましたね」と言うと、そのオヤジは更に激怒の度合いをアップさせ、万引き犯の首根っこでも捕まえたかのような高圧的な調子で、他のカードを出せ、と言った。　これまた　はあ？　という感じだが、要するに他のカードで、支払状況をチェックする、と言うのだ。バカな私は通常使っているクレジットカードを渡したが、しばらくするとさすがに腹が立ってきた。　　何で必要もない、そんな店のカードを申し込むために、長いこと待たされた挙げ句、感じの悪い応対をされ、しかも通常の支払状況などという、個人情報をそのオヤジに証明して見せなければならないのか？　私のカードのデータが書かれているらしい紙が、どろどろどろどろと、○井（全然伏せ字になっていないが）の床に流れる中、私はツカツカとオヤジの元に近づき、申込書を引ったくって、粉々にちぎって捨てた。　「悪いけど、こんな店のカード、私には必要ないから」　その捨てゼリフにか、申込書をひっちゃぶった勢いにか、それとも私の支払状況の健全さかにあっけにとられていたオヤジは、ぽかんと口を開け、バカみたいに突っ立ったまま、立ち去る私を見送っていた。　一体客をなんだと思っているんだ、○井はっ、と当初は腹が立ったのだが、どうも、簡単にカードを作れるお店だけに、きちんと支払わないなど、ロクなお客がいないらしく、「一度カードを作っているのに、また作ろうとしているヤツ」として、厳しい態度を取られたらしい。バカモノ、そういうことはちゃんと、人を見てしろっ　ま、いつもジョギング帰りみたいな、へろへろした恰好でうろついているから、仕方がないかもしれないが、私は金輪際、○井では買い物はしないと決めている。例え出先でストッキングが伝線して、その周辺には○井しかなかったとしても、絶対に買わない。デンセンしたままで歩いてやる。　それにしても気になるのは、あのどろどろと流れ出た紙を、キチンと始末してくれたかどうかである。あの紙も引ったくって、破いてやれば良かったと、今頃になって思ってみたりして。

2004年09月25日

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怒り症のお父さんと私

　とあるビルに行ったときのこと。なかなか来ないエレベーターにようやく乗ったのだが、一度に大勢を運べるよう、妙にでっかいその箱はドアの開閉も遅く、速度ものろく、「ああ、だからなかなか来なかったんだな」と納得させてくれるようなものだった。　私は箱の左端に立っていたのだが、右端に立っていた家族連れのお父さん、相当にせっかちらしく「閉まるボタン」を途中階に停まるたびごとに、だんだんだんだんだんっっっっと激しく連打していた。そして「何なんだー、このエレベーターはっ！　おせぇなぁっ」と怒っている。　最初は混んでいたので見えなかったが、途中で若干空いてきた時に、お父さんの手元が見えた。そしたらその人、「開ける」ボタンの方を叩いていたのだった。「おせぇ」ワケだよ、お父さん。アンタが乗った時点で、遅くなったんだよ、このエレベーター。　しかしお父さんの名誉のために言っておくと、そのエレベーターの開閉ボタンは、車いすの人にも便利なようにか、かなり下の方にあって表記が見えにくかった。また表記自体、「開」というような漢字はなく、分かりにくいヤジルシ記号だけだったから、間違えたのもまあ、無理はないか、と大目に見る余地はあった。　お父さん、自分が犯人なのに、「おせぇなぁー」のボリュームと頻度を、どんどんアップさせていった。すると、小学校中学年と高学年の2人の息子とじゃれあっていた奥さんが、「ほらぁ、あれよ、きっと。車いすの人も乗り降りしやすいように、このエレベーター、開閉がゆっくりになってんのよ。うまく作ってあるよね～」　お父さんは短気な性格のようだったが、お母さんはプラス思考で、根っから明るい性格らしい。奥さんの楽天的な解説を聞いて、旦那さんも「うーん、そうか」と納得。似合いの、良い夫婦だなぁ、と、微笑ましくなった。　が、微笑ましがってばかりもいられない。私もかなりのせっかちである。おとっつぁんのおバカなボタン連打で、進行が遅くなるのは耐えられない。左端にいた私の前にも、エレベーターの開閉ボタンはあったから、次の階ではお父さんがボタンを押すより早く、正しく「閉」ボタンを押したのだった。　それまでの動きとはうってかわって、キビキビと閉まったドアに向かって、お父さんはまた、かんしゃくを破裂させた。「何なんだ、このドアはっっっ」　そして奥さんを振り返って、もう一度言った。「何なんだ、このドアはよぅっっっ」　楽天家の奥さん、「あらぁ、早くも閉まるのねぇ」と笑いだし、二人の息子に「ねっ、ねっ」と同意を求めていた。　早く動かしたのは、私です。

2004年09月18日

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チカンな方々と私（2）

　電車の中で、追いかけてくるチカンと出会った二度目は、2、3年前のことだ。関東地方のとある県を走る、適度な快速（どんなんじゃ）に乗っていたときのこと。　その電車は、ほとんどが4人がけのボックス席のようなやつで、車両が埋められている。向かい合わせに2人ずつ座るタイプね。　で、車両と車両の境目に近いところに、横向きに3人ずらっと並んで座る長イスみたいな席があり、また、ドアの横には2人がけ・横向きの席がある、という構造だった。　確かあれは日曜日の午後早い時間帯。始発駅で乗ったため、車内はガラガラ。時間調整のため、そのまましばらく停まっていたけれど、やっぱりあまり人は乗ってこなかった。　私は連れがおらず一人だったから、4人がけのボックス席は煩わしい。で、2人がけの、窓を背にした横向きの席に、一人で座っていた。その車両には、まだ私一人しかいなかった。　その時、そのオヤジがやって来た。見るところ50代前半くらい。日曜なのにパリッとスーツを着た、背が高く姿勢のいい、なかなかの押し出しのオヤジだった。　そのオヤジは、隣の車両から長い足で、スタスタスタッとこちらの車両にやって来ると、周囲を見回すこともなく、私の横に座った。　その2人がけは、オヤジが座った側に、4人がけの背もたれ部分が高くそびえ立っているせいもあって、個室的な空間を醸し出していた。更には、2人の人間が座るとキチキチな感じのサイズでもあった。ボックス型4人席の寸法が大きいらしく、各ドアの両脇にある2人がけ席は、通常よりも妙に長さが短かったためと思われる。　私以外に人のいない車両。座席は言うまでもなくガランガランである。そして隣り合って座ると、きゅうきゅうに狭苦しい2人がけの私の隣りに、ずんずんずんずんずんっとまっしぐらに座ってくる。これは極めて異常な事態であった。　花も恥じらう時代は過ぎ去り、花なんか散っちゃったじゃん、みたいな私は、オヤジが隣りに座った0.01秒後には立ち上がり、ドアを挟んだもう一つ向こうの2人がけの席に移った。　　すると今度はオヤジ、私が新しい席に座ったのと同時くらいにスックと立ち上がり、ずんずんずんずんずんっともと来た車両に戻っていった。「すたすたすたすたすたっ」（オヤジ登場）「ずんっ」（オヤジ座る）「すっく」（ワタシ立つ）「ずんっ」「すっく」（ワタシ座り、オヤジ立つ）「すたすたすたすたすたっ」（オヤジ去る）以上のシーンは、全部ひっくるめて15秒もかからなかったのではないだろうか。ホームから誰かが見ていたら、さぞや不思議な無言劇だったろう。　なーんて言ってるけど、あの年代のオヤジとしては、なかなかスマートな容姿の人だっただけに、ヘンタイ度が3割り増しくらいに感じられ、かなり気持ち悪かったのだった。

2004年09月11日

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英語がご堪能な方々と私（4）

　ある言語の、みょーにマイナーなポイントに、外国人が魅せられてしまうケースの延長線上に、「日本人に見るアメリカ人的発声法」というのがあるんじゃないかと思う。小林克也の英語を、「すばらしーっ」と思ってしまう傾向、と言い換えても言い。　と言っても、私は小林克也氏の英語を、客観的に判断する立場にはないし、「すごいなー」と聞き惚れてしまうタイプでもある。が、私の知っている英語ネイティブに、小林氏の英語は、あまり評判が良くない。「わーわーウルサイだけ」と言うのだ。　小林さんレベルになると、生半可な日本人が評価するのは難しいが、ある時、オンラインのマルチメディア英語教室、みたいなのをやっているジーサンのサイトを見て、「あああ、わーわーウルサイだけ、ってこういうことか！」と腑に落ちた。　その先生は、映像を見るに70歳前後くらい。「有料会員に登録すると、オンラインでこういう授業を受けられるよ」というサンプルに、何種類かのトピックの授業のさわりを2、3分ずつ、公開している。　授業の冒頭には「Hello, everybody!」みたいな、砕けた調子の英語の挨拶が入る。その英語の流暢さに、私の友人は魅了されて入会した。ご本人の得意満面なご様子からも、「自分はバツグンに英語がウマイ」と信じ込んでいるのは、（意地悪からではなく）確かだろうと思う。ところが私には何を言っているかサッパリ分からないのだ。　日本人はリスニングがダメと言われるが、私は諸般の事情で、リスニングだけは得意という特異体質（シャレじゃなく）である。ものすごい方言でも、「音」としてだけは聞き取れる（だが意味は分からなかったりするワケである）。　そういう特異体質なので、何を言っているか分からないのは、おじいさんの英語が流暢だからでは断じて、無い。個々の音の発音が、クリアでないせいなのだ。　確かにおじーさんの発音は、アメリカ人っぽい。でもそれは、胴体をわんわん響かせる、アメリカ人男性的に大げさな発声法を忠実にまねているからではないかと思う。しかしそういう「発音」の滑稽さ、個々の音はデタラメだけど、アメリカ人的な声の響きだけは上手にまねている、そういう滑稽さは、「ネイティブ顔負けの発音」とか言われている人の、多くが背負っているもののような気がする。　小林克也さんの場合、そのジーサンのように、個々の音の発音がひどいわけではない。キチンと発音している。でも、ネイティブが聞くと、やはり若干、発音に甘いところがある。なのに、すごーくアメリカ人的な発声をしている。そのギャップが、私の知っている何人かのアメリカ人にとって、「不愉快」なものに感じられたのではないだろうか。　それは丁度、私が日本人の「さんきゅー」をカリカチュアライズして物まねするフランス人に、ある種の不快感を感じたのと、同じような感覚かもしれない。　まーそれはともかく、小林克也さんに対する評価を聞いてから、私の周囲にいる「英語がご堪能な方々」の4割くらいが、「口から出る音は甘チャンなのに、胴体だけはワンワン反響させてアメリカ人を気取る」系の人であることに気がついた。ウルサイです。ほんとーにウルサイです。　変な作り声をして大げさに喋るだけに、滑稽でもある。カラオケで、オペラ歌手みたいな歌い方で、ポップスを歌う人に遭遇したら、目が点になると思う。胴体ワンワン型は、それの英語版だ。聞いているこちらが恥ずかしくなるから、本当に止めて欲しいのであった。

2004年09月09日

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英語がご堪能な方々と私（3）

　外国人にとって、ヨソの国の言語で、非常にチャーミングに聞こえる「音」というのがあるようだ。　たとえば、知り合いのフランス人は、日本人が言う「へ～」が好きだ。「へー、そうなんだぁ」とか言うときの「へぇ～」　フランス語では「h」の音を発音しないらしいから、日常的に頻発される「Heeee」というのが、珍しくて珍しくて仕方がない。で、その人はことあるごとに、「へー」を言おうとするのだが、「Hえ～～～～」としか聞こえないのが奇妙。しかも言う前に、必ず得意そうに鼻をうごめかせ、渾身の力をこめて発声するから、非常に滑稽なのだった。　私たちは日頃、「へー」を一日に何回言うかとか、そもそも「へー」なんて言っているとも、全然思っていない。「へー」はそれほど、意識に登らない言葉だ。そういう言葉を、外国人が面白がるのを見ると、あらためて「へぇー」と思ったりするのだが、外国人は時として、不快な言葉をピックアップしてくることもある。　やはりフランス人だったが、この人は日本人の言う「さんきゅー」がお気に入りだった。ファーストフードのお店に行っても、「なんとかかんとか入りました」「さんきゅ～」なんて唱和しているし、日本人同士の会話でも、軽くお礼を言うときには「さんきゅー」で済ませることが多い。それを聞くたびに彼女はクスクスッと笑い、小声で「さんきゅー」とリピートするのだ。　彼女の「さんきゅー」は、「thとsの区別が付かない日本人」「子音に必ず母音を付けてしまう日本人」のグロテスクなまでのカリカチュアだった。「Sあnkいyうううう」と言うようなその発音は、私テキにはかなり、コンプレックスを刺激される物まねで、「Hえええ～」ほど可愛らしくは聞こえなかった。　日本人もきっと、外国語のみょーな音を、珍しがってピックアップしてしまうに違いない。例えばドイツ語に、「ぬ」とも「な」ともつかない、合いの手のように入る音があって、これがなかなかチャーミングなのだが、日本人がまねるととても滑稽になってしまうので、止めた方が良いように思う。　ドイツ人と仕事をしている女性で、会話中に良くこの音を挿入していた人を知っている。非常に流暢にドイツ語を操れる人だったが、その「ぬ」とも「な」ともつかない不思議な音は自分のモノにできていないようで、完全に日本語の「な」なのが滑稽だった。　流暢としか聞こえないドイツ語の合間に、「○×△□、なっ、○×△×△□○×、なっ、△□×△□○×△、なっ」ってな調子で、「な」が挿入されるのだった。おかげで、流暢そうなドイツ語まで、本当は大したこと無いんじゃ、というような印象を、人に与えてしまうのだった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～ちょっと続く～

2004年09月08日

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英語がご堪能な方々と私（2）

　ネイティブみたいに格好良く外国語を喋りたい……　程度の差こそあれ、誰もがそう言う風に思っているんじゃないだろうか。ただ、それが行きすぎてしまうと、何だか妙なことになる。　ある知人は、イギリス英語オタク。アメリカ発音が「うつる」（病気か？）から、イギリスの映画、ドラマ以外は見ない、という徹底した女性だった。もちろん、イギリスに語学留学した際には、演劇志望者を対象とした発声トレーニング（もちろんネイティブ向けの）を受けたという徹底ぶりだ。　それほどまでにしているが、彼女は英語を使う仕事をしていた訳ではなかった。「発音イノチ」なのは、何かのおりにふと、流暢な英語を使って、周囲を圧倒したいという思いがあったから。　かなり非効率的な願望だと思うのだけれど、あまり英語を使うチャンスの無い彼女は、日々のトレーニングも怠らなかった。お気に入りのドラマを毎日繰り返し見ては、その中の登場人物になりきったつもりで、その人物の発言を一言一句、抑揚や言葉の句切り方、果ては表情や身振りまでソックリにまねる。そういう訓練を、日課としていた。　が、彼女にとって悲劇だったと言うか、喜劇的だったのは、彼女が手本にしていたのが、アガサ・クリスティのドラマ、ということだった。そんなワケで、彼女のしゃべり方はミス・マープルそっくり。ドラマの中でだって、ミス・マープルは「時代遅れの老嬢」として扱われるのに、21世紀に生きる30代の日本女性がミス・マープルである。　確かに彼女の発音は、（ご本人が思っているほどネイティブっぽくは無いにしても）かなり日本人離れしている。でも、多くの人が彼女の英語を聞いて凍り付くのは、賞賛のためではない。その発音やしゃべり口が、もんのすごく古めかしい、お婆さん臭いものだからなのである。　もし、大石内蔵助を演じる片岡千恵蔵そっくりの調子で（古すぎ？）、日本語を喋るアメリカ人青年に遭遇したら、たいていの日本人は、その異様さに絶句してしまうのではないかと思うのだが、彼女の英語もちょうどそんな感じ。　その他の面では、非常に聡明な人なのに、彼女がどうして、そういう滑稽さに気づかないのか、いまだに謎なのである。

2004年09月07日

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英語がご堪能な方々と私（1）

　英語が堪能な方、と言うか、「自分は英語の発音がスゴク良い」と思いこんでいる変な人が、私の周りにはたくさんいる。古いところから話を始めると、高校時代のクラスメートがそうだった。　彼女は幼稚園くらいのときから、アメリカ人の先生に英語を習っていたという人だ。高校一年の最初の英語の授業で彼女が指されたとき、クラス全員が（それから多分先生も）驚愕した。あまりに流暢な英語だったから、ではない。ガマガエルのような、変な声だったからだ。　彼女はもともと、山口もえのようなふにゃ～んとした声で、ゆったりおっとりしゃべる人だったから、押しつぶしたようなゲロゲロ声は、他の生徒の口から出てきたよりも、相当に衝撃的だった。　彼女自身はと言うと、みんなの凍り付いたような沈黙と注目が、自分が朗読する発音の素晴らしさのせいだと、勘違いしたようだった。　授業が終わると、クラスのほとんど全員が、彼女のもとに走り寄った。「どうしてあんな声出すの？」と。考えてみれば失礼な質問だが、彼女は頬を染めながら、自分が習っている先生のしゃべり方の影響かもしれないわ、と語った。　彼女は、「あんな声」という私たちのぶしつけな質問を、「あんなネイティブっぽい声」という風に受け止めたのだろうが、私たちはと言うと、「なーんだ、その先生になりきったつもりでいるワケね」と全員が納得し、以来彼女は卒業まで、親しい友人ができることもなく過ごした。　彼女の耳の底に聞こえていたのは、きっと先生の流暢な英語だったのだろう。でも、私たちの耳には、彼女がイメージしていた流暢さとはほど遠い、浪花節語りみたいに声をつぶした、うめき声のカタカナ英語しか聞こえてこなかった。　ちなみにガマガエルの彼女は、卒業間際に想像妊娠騒ぎを起こした。彼女の客観性のなさは、思い込みの激しさに由来していたのかもしれない。　卒業できたのか、中退したのか、彼女のその後を知っている同窓生は、一人もいないようだ。

2004年09月06日

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ダイエットマニアの方と私

　良くおデブな人を、「縦より横の方が長い」とか、「歩くより転がった方が速い」と形容することがあるが、実際にそんな人はまず、いない。小錦だって、横よりは縦の方が長かろうと言うものだ。が、しかし、私の知人で本当にそういう人がいた。身長150センチくらいで、体重が120キロくらいあった。しかも女性。　その人はでも、なかなかダイエットしようとはしなかった。それほど太っていれば、一日食事を抜いただけでも、1キロくらい減るんじゃないか、と思われるのだが、太っていることを何とも思っていないらしく、平気の平左（古いね、また表現が）。　ところがある日、突如としてダイエットを始めた。以前、「さりげなくウソをつく方」として登場して頂いた、とある女性に対する対抗意識の故だ。　さりげなーくウソをつく彼女は、おカメ面の、ハッキリ言ってブスな人だった。ところが、プロポーションが素敵だったのと、「私って綺麗でしょ」という思いこみの激しさから来る幻惑効果で、なんとなーく「美人」として遇されていた。おデブな方は、それが悔しかったらしい。「あんなブスがちやほやされるのは、痩せているからだ。と言うことは、私だって痩せればちやほやされるはずだ」　何とな～く欠陥のある推論をしたらしいおデブな方は、しかし、ものすごい努力を払って半年で何と、50キロも体重を落とした！　しかし、もとが120キロである。もとが150センチである。50キロ落ちてもまだデブだった。まだ誰も、ちやほやしてくれはしなかった。　そこで彼女、頑張った。周囲を拒食症か、不治の病かと心配させるほど痩せ、何と30キロくらいまで体重を落とした。何とまあ、90キロからのオニクを落としたわけだ。　彼女の悲劇はしかし、そこから始まった。ほっそり華奢に痩せても、誰もちやほやしてくれなかったのだ。原因は、嘘つきだがスタイルバツグンのオカメよりも、元おデブの彼女の方が百億光年くらいブスだったから。痩せようが太ろうが、あのような凶悪な醜さを持つご面相の女性が、男性からちやほやしてもらえるハズがない。しかも、彼女は頭が大きかった。骨からして大きいから、身体が痩せるにつれ、巨大な、そして醜い頭部が残された……　痩せてもちやほやされなかった彼女は、もっと痩せようと頑張った。いくら150センチだって、体重30キロを切れば命が危ない。親が泣いて説得したそうだが、彼女はダイエットをやめようとはしなかった。　私が最後に見た彼女は、40近い年齢で、超ミニスカートに、ポックリのようなかかと（と言うか、靴底）のブーツを履いた、ホウキの柄の化け物のようだった。しかも、ホウキの上に乗っているのは、天童某という女性歌手のような大きさと形の顔だ。頬はゲッソリとこけていても、骨の額縁は縮小されないのだ。　彼女がその後どうなったか、私は知らない。

2004年09月02日

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王様のようなマクドナルド店員と私

　ロンドンに住んでいたころ、すごく変な黒人男性に出会ったことがある。出会ったと言っても、私が良く行っていたマクドナルドの店員だっただけのことだが。　彼は身長が2メートル近くある大男で、しかもレスラーのようなすごい体格をしていた。その上、態度ももんのすごくでっかい。腕組みをして客を見下ろし、こちらの注文に対して、うんともすんとも言わないでじっと睨みつけたまま。そして、うんともすんとも言わずにくるりと背を向け、商品をむんずと掴んで、カウンターに放り投げるように置くのが常だった。　別に私に対してだけそうだった訳ではなく、人種、年齢、性別を問わず、彼は公平に横柄な態度を貫き通していた。天晴れである。　ある朝、モーニングセットみたいなやつを頼むと、これから作るからしばらく待て、と彼は言った。席に座っていろ、と言う。呼ばれるのを待って座っていると、何と！　どうした訳か、彼はトレーを持って運んできてくれた。そして私をぐぐっと見下ろし、「オレサマがこのようにサーブしてやるなぞということは、滅多にないのだ。感謝せい」みたいなことを言って去っていった。　私ははなはだ恐縮し、それと共に、何だかその日の朝食はとってもまずかったのだった。　その後、行くたびに「貴様はまた、オレサマにサーブして貰えると、思ってはいないだろうな、おい」とか言われるのが苦痛になり、私は河岸を移した。　いわゆるイングリッシュブレクファストを出す、近所の定食屋さんというノリのカフェで、朝ご飯を食べるようになったので、その後、彼に会うことはなかったが、ある日、えげれす人の友達（白人・女性）が、「なんなのーよーあのマクドナルドわあああ。すっごい変な店員にどなられちゃったわよおおお」と言っていた。それで相変わらずの勤務態度を貫いていたのであろうことが、察せられたのだった。

2004年08月13日

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欧米化した方々と私（2）

　何年くらい前からだろうか、親（特に母親）が自分の子どもについて人に話をするとき、「彼は」とか「彼女が」とか言うようになったのは。昔は「家の息子（娘）が」とか「家の太郎（花子）が」とか、「ウチの」という言い方が頭につくのが普通だったような気がする。　この傾向は、ブンカロンを語る人たちが、日本の親は子どもを付属的なものと見ていて、個人として尊重していない、とかなんとか、言い始めてから始まったのかもしれない。要するに、アメリカ的なあり方と比べて、日本人の子どもに対する接し方が、ダサイというような論調だ。　確かに高校生の息子について、「彼はやればできる人間だと思うんですの」なーんてお母さんが言うと、とてもクールかつ理性的に、「彼」の能力を分析しているように聞こえる。でもふたを開けてみると「ウチのボクちゃん、ほーんとにいい子」というノリの、盲目的信頼から来る発言だった、ということが多かったりする。　脳に関する本を読んでいたら、西洋人と東洋人では、進化の度合いが違う、というような話があった。動物は生まれて数時間で立ち上がり、一人（いや、一匹）で歩き回るが、人間は妊娠期間も長く、生まれてから親の保護を必要とする期間も非常に長い。脳が大きいと、それを支えるのにある程度以上の骨格が必要　　　　　　　　　　↓その骨格になるまで母胎にいたら、出産時に母親が死んじゃう　　　　　　　　　　↓だから「早産」で生まれ、産後の保護期間も長くなるというような因果関係らしい。要するに、進化した動物は幼児期が長い、と言えるのだそうだ。　でもって、その本によると、西洋人より東洋人の方が「進化」しており、子どもでいる時期が長いし、長くてしかるべきツクリになっている、のだそうだ。本当かねぇーと思うが、単に文化の問題として考えたとしても、「保護する期間が長い民族」が存在したとしても不思議はない。　ようするにもしかして、子どもが子どもとして扱われる期間が長い（昔だったら、結婚して一家をかまえるまで、子ども扱いとか）のは、東洋人の場合、文化的にも、生物学的にも正しかったのかもしれない。　ま、それがウソだとしても、アメリカなどの、子どもを個人として尊重するやり方を、それにまつわる責任感とか、もろもろの事情をとっぱずして表層だけ輸入すると、単なる放任に過ぎなくなることは確かだろう。　以前テレビを見ていたら、16くらいの女の子が、性病にかかっていることが分かり、お母さんに報告するシーンが映し出されていた。彼女はプチ家出の常習犯。家にはほとんど帰らない生活をしており、まだ30代のお母さんとは余り仲が良くない。しかし、いざ、自分が性病だと分かったら、やはり親のもとに飛んで帰りたい心境になったようだった。　お父さんもいる家の中に入りにくかった彼女は、携帯でアパートの外にお母さんを呼び出した。そして出てきたお母さんに、性病であること、でもちゃんと治療すれば大丈夫であることを、とぎれとぎれに語った。するとお母さんの開口一番はこうである。「だから言ったじゃん」　それもだるそーな口調で。　同じセリフでも、心配のあまり怒鳴りつけられたのなら、彼女は救われたかもしれない。でも、お母さんの人ごとのようなセリフに、彼女は肩すかしをくらったような状態だった。　結局親子の会話は、「じゃー、セックスするなってゆーの？！」「そーじゃないけどさ、コンドームくらい使いなよ」と言う、何だそりゃ？なやりとりに終始したのだった。　「セックスするなってゆーのか」と聞かれて、「そうだバカ！　性病になってオタオタするようなガキが、そんなもん10年早いわっっっ！」とぶん殴ってくれるような親の方が、子どもはどれだけ救われるだろう。不安を持て余しているとき、感情と感情のぶつかり合いをさせてくれる親の方が、本当は優しいのだと私は思う。　「するなとは言わないけどさー」　情けない親だ。こういう親は絶対、学校の先生などと娘の話をするとき、「彼女は」と言うに違いない。子どもなんて他人みたいなものなのだろうから。　親との関係がうすーい、ああいう少女たちって、将来どういう親になっていくのかなぁ。ま、性病で子宮がイカレちゃって、不妊にならなければ、の話だけど。

2004年08月09日

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ニューエイジな方々と私

　昨日の「気功な方々」と通じるところがあって、苦手なのがニューエイジ系の方々だ。パワーストーンとか、何ちゃら心理学とか、過去世回帰とか、勘弁してくれよと思う。ところが私の周囲には、このタイプが最近急増している。　つい先日も、しばらく音信不通だった友達から連絡があった。なんと、「過去世回帰とか」ができるような、ヒーラーを目指して勉強中、なのだそうだ。とほほ～　私はすごく鈍感だ。が、ニューエイジ系の方々はことごとく、「鈍感であろうとする何かがある」とか、「感じない方がラクだとブロックさせているものがある」とか、美しく（？）誤解してくださる。そういう風に言えば、私がいい気分になるとでも思って、おだてているつもりなのかもしれない。でもね、ほんとーに鈍感なんだよ、私は。その鈍感さは、機転のきかないバカさ加減から発生しているものであって、メンタルなブロックとは何の関係もないのだ。　で、その友達が私に久しぶりに連絡をしてきたのは、そういう「過去世からの心の傷を持っているらしいサンプル」とのつきあいを復帰させ、自分のヒーラー修行に役立てようという、そういうことらしい。要するにアレ。美容院のカットモデルみたいなもんよ。違うのは、カットモデルはモデルになる人が望んでのことだけど、私の場合は向こうが勝手に寄って来た、という点。まあ、いいけど。　確かに現在の自分の欠点とか、苦手意識とか、ものごとが上手く運ばない部分とかが、「過去世からの因縁」とかで説明がつくなら、それはそれで簡単だし、結構なことだろうな、と思う。例えば「あなたは昔、自分が言ったことが原因となって、愛する人を失った過去がある。だから自己表現が苦手なのだ」とか言ってもらえれば、何となくあー、そーかーと、心に平安が訪れるかもしれない。　私は過去世とやらを見てもらったことはないが、何かの拍子に「かつての私」とかいうものについて、指摘を受けたことがある。以前も書いたかもしれないが、それによると、紀元前のパレスチナあたりで、白い服を着てぼんやり瞑想していたとか、宗教がらみで惨殺されたとか、中世ヨーロッパをうろちょろしていたとか、まあ、いずれにせよロクな「過去世」ではない。　だからといって、それで転生を信じないと言ってるワケではない。どれも、現在の私にとって、あー、そういうこともあったかも、という部分が、確かにあるのは事実なのだ。本筋とは関係ない、無駄なことをする傾向なんて、一生瞑想していた人の性格を引きずっているのかもしれない。キリスト教に戦闘的に疑問を抱いているのは、宗教がらみで殺された人の無念の思いが影響しているのかもしれない。やたら長距離を歩き通してしまう癖は、放浪者だったころの名残かもしれない。　要するに、私にそういうことを言った人たちって、「過去世」が見ているのではなく、私のタチのようなものが見えている、というだけではないだろうか？　そこからお話を作ってるんじゃ？　普段の私は、瞑想しているようにも、キリスト教に恨みを抱いているようにも、激しく歩き回りそうにも見えない。そういう外見から、私の本質を見抜くのだから、ニューエイジな方々の眼力というか、そういうものは、それなりにスゴイと思う。でも、それを前世とかそういう話に持って行かれると、私は判断不能になる。　まあ、それはともかく、久々に連絡をくれた友達と、近々、お茶をすることになった。実験台にされるのは御免被りたいが、つもる話もあるから、それなりに再会を心待ちにしている私である。

2004年07月31日

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山本鈴美香と私（1）

　さりげなーく遠回しに自慢する連中のことを書いていたら、山本鈴美香のことを思い出した。マンガ「エースをねらえ！」で一世を風靡した、あの山本鈴美香である。　前にも書いた、私の勘違い従姉が大の少女マンガ好きで、古い漫画雑誌や単行本を、山のように持っていた。特に山本鈴美香と山岸涼子（だったか？）が好きだったようで、マンガ作品はもとより、インタビュー記事のようなものまで持っていた。　その従姉から借りるか、家に遊びに行ったときに読んだ中に、山本鈴美香という人の本性（？）を垣間見せる記事があった。あるエッセイ風のマンガだったか何かで、「学生時代、自分はスラックスをはかないと、電車に乗れなかった。スカートをはくと、何故かチカンに合うのだ」というようなことを言っていたのだ。　要するに、どれほど美しい足をしているかという自慢だ。それを読んだ当時、私は確か小学生だったような気がするのだが、当時はまだ素直だったので「へー、この人顔だけじゃなくて、足も綺麗なんだ～～～」と思った。でも心のどこかで、ビックリするほど綺麗な人なんだから（少なくとも写真では）、そんな風に自慢しなくても良いのに、と思ったものだ。　その後、従姉のマンガストックの中で、また、別のマンガだったか、文章だったかで、「さりげなくウソをつく方と私」に出てくる知人、友人と同じような語り口で、自慢話をしているのを発見した。いわく、高校時代、男子クラスメートは我が家に良く遊びに来た。皆、私に会いに来るのではない。私の母の姿をかいま見たいが故に来るのだ。　それを読んだ時は、もう中学生くらいだったのかもしれない。様々な「ヘンな人」との出会いにより、現在に等しい観察眼が身に付いていた私は、「母親がどんなに美人であるかを、遠回しに自慢することで、美人でありながら謙虚でもある自分をアピールしようとしているな、この野郎」と思った記憶がある。　と言うよりも、「それほどまでに美しいお母さんを持つ家庭環境」って、何かこう少女漫画的で、カッコイイ感じがするじゃないか。少なくとも私はそう感じ、そう感じさせようという意図も、同時に感じ取ったのだった（ひねくれているのかも）。　私の周りの「さりげなくウソをつく方」は皆、どこか神経を病んでいるようなところがあったり、実際に、神経を病んでしまったりした人もいるが、山本鈴美香もまさしく、このタイプだと思う。何しろその後、（ご存知の方も多いと思うが）彼女は巫女さんになってしまったのだから。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　～つづく～

2004年07月27日

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さりげなくウソをつく方と私（3）

　クラスメートに、とっても可愛い女の子がいた。あややみたいなタイプ。純粋に容貌で判断するなら、あややの15倍くらい、可愛い造作の持ち主だった（あややって結構、気迫で可愛く見せてるみたいなところがあるから。もちろん、普通以上に可愛いのは確かだけど）。　自分がいかに可愛いか、彼女はよ～く熟知していたけれど、普段はそれを見せることはなかった。「○○ちゃんは可愛いから」と言われると、「いやだー、そんなことないよぉ」なんて、はにかんで見せる。でもある日、その「謙虚さの演技」がぶちこわしになった。　みんなで両親のどちらに似ているか、という話をしていた時、彼女が口を滑らせた。「ウチのお父さん、あたしより可愛いの～」　その場にしろ～い空気が流れたのは、しかし、彼女の「自分は可愛い」という自負心が暴露されたタメではない。彼女のお父さんが、50歳を過ぎていて、磯野波平さんのような禿頭をカバーするべく、後頭部の髪をながーく伸ばして束ねている、かなり異様な風貌の（そして受け持ちの生徒からは毛嫌いされている）中学教師だということを、みんなが知っていたからだ。　ハゲで、襟元に長い弁髪のようなものをぶら下げた「可愛い」50男……　きみわり～～～～っ　以来、彼女の可愛さは、「彼女よりも可愛い」というお父さんのイメージと重なってしまい、我々の仲間内で失笑の的になったことは言うまでもない。　で、その彼女もまた、相手の誤解を誘発し、それによって自分のイメージを高めようとするタイプだった。十分可愛いし、可愛いことはみんなが認めているのに、「今日、どこそこで、中学生の男の子たちから、”写真撮っても良いですか？”って訊かれちゃったぁ」という風な自己主張をする。　性格のいい女性、および大抵の男性は、この手の主張の意味するところが分からないらしいので、詳細に説明するが、要するに彼女が言いたいのは、「私って、見知らぬ男の子たちに、写真を撮られるくらいに可愛いの」ということはもちろんだが、「私の回りに集まってくるのは、撮っても良いですか、と礼儀正しく許可を求めるような男の子たちばかりよ」とか、「許可を求めるなんて、もしかしたら私のこと、タレントと勘違いしていたのかもー」と言うことなのである。　その時傑作だったのが、抜け作な男子クラスメートがいて、彼女に真っ向から「何で？」と訊いたことだった。　大抵の男性は「この手の主張の意味するところが分からない」と言ったが、それは彼女の言葉を額面通りに受け取って、「うんうん、○○ちゃんは、可愛いもんなぁ。当然だよなぁ」という風に納得してしまう、という意味だ。ところがその抜け作男子は、本気で「その少年たちは何のために、彼女の写真を欲したのであろうか？」と疑問に思ったのだ。それは、彼の表情や声の調子から明らかだった。　さりげなく遠回しに、自画自賛していた彼女は、そのストレートな疑問にさっと鼻白んだ。そして、屈辱でつり上がった目を笑いでごまかし、「きっと、私のこと、同じ中学生だと思ったんじゃないかしら～。失礼しちゃうわぁ」と、説明にならない説明で、話を締めくくったのだった。　ちなみに「何で？」の彼はその後、一部地域でとてつもなく人気者になったのだった。

2004年07月26日

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自己改造マニアの方々と私（4）

　自己啓発マニアも、自分を改造したい人たちの一種だろう。改造と言うと肉体っぽいけど、彼らは精神を改造したいのだと思う。　子どもの頃、厳しい両親のもとでスパルタ教育を受けたある男性を知っている。顔が不細工なせいもあり、また、両親に対してビクビクしながら生活しているのが習い性となって、いつも人の顔色をうかがっているようなところがあった。そのせいで、学校でもずっと、ヒドイいじめを受け続けた。　性格もねじくれてしまったが、彼の最大の悲劇は頭が悪かったことかもしれない。両親共にインテリで、お兄さんは超一流大学の難関学部にストレートで合格して、お父さんのあとを継ぐ資格を得た秀才。ところが彼は、なんと5年も浪人した挙げ句、やってのことで5流大学に入学できた、というグータラぶりだ。当然、卒業したって就職口はない。その後の彼は、フリーターのようなことをしながら、自分について考え続けた。　血の繋がった両親、兄弟からはさげすまれ、出会う人ことごとくから嫌われ、頭も悪い自分。それでも彼はそんな自分を哀れんだり、嘆いたりしなかった。「このように生まれた自分の存在意義は何なのか？」と考え続けた。その結果出た結論自分は人間関係に悩む人たちを救うために、神からこの世に使わされたのだ！　その役目を全うするために、人生の初めの段階で、人々から嫌われることの辛さを体験するよう、運命づけられていたのだ！　うーん、すごい「説明」　すごい自己弁護とも言うなぁ。私などから見ると、嫌われ者の自分の存在意義を、神まで持ち出して、必死に説明したのに過ぎず、妄想の一種とも思えるのだが、彼は奮闘努力の末、カウンセラーになったのだった。　神を持ち出したのは、彼がキリスト教徒だからかもしれない。でも、こういう人はニューエイジ系には結構いるものだ。神じゃなくって、聖霊とか守護霊とかハイヤーセルフとかを持ち出す。そして、自分が他人より劣っている部分の「説明」をして、他人より優位に立とうとする。　私自身はこういう人たちを、ボディビルマニアや整形マニアの系列に並べて見ているのだけれど、世の中は広いから、こういう人に心酔するクライアントもいるらしい。件の彼も、そこそこの規模で「信者」を集めて、結構ボロい儲けをしている。今の世の中、病んでる人が多い証拠だろうか。

2004年07月23日

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自己改造マニアの方々と私（2）

　お化粧マニアも、自己改造推進派の急先鋒なのではないかと思う。某一流国立大学の出身者の友達を見ていると、そう思う。　彼女は地方出身で、高校時代はガリ勉の優等生として、ある種尊敬はされていたが、親しい友達もなく、寂しい青春をおくっていた。が、ガリ勉の甲斐あって、日本一と言われる某大学に現役合格。鼻高だかな両親に見送られて、東京へと旅だった。　が、新しい生活が始まると、彼女は愕然とする。県立高校では常にトップだった彼女だが、東京に出てきてみれば、クラスメートはみな、地元の「一番」「二番」な人たち。それに高校時代、優等生ではなかったダークホース連の強さも、忘れてはいけない。適当に勉強したらT大に入りました、というタイプの方が、小・中・高とがんばり抜いてトップの座を守っていた連中より、遙かに底力があるし、それまで勉強していなかった分の余力もある。　故郷では羨望の的だった優秀さが、同じ学内では「平凡な頭脳」としか評価されない苦しさの中、彼女に残ったのは「田舎臭い、野暮ったい、人付き合いのヘタな不細工な子」という評価だけだった。　が、もとが集中力のある秀才。その研究熱心さが、今度は美容に向けられた。かくして私が会った頃の彼女は、ケバケバしく目立つ、華やかな女性へと変貌していた。一度、高校時代の写真を見せてもらった時は、驚く以前の問題として、どれが彼女なのか全く分からなかった。「これよ」と言われても、信じることができなかったほどだ。整形したとしても、あれほど変化することはないだろう。そのくらい印象が変わっていた。　ガチガチの秀才だった彼女は、男の子にこびることも学び、カワイコぶることも身につけ、4年間の大学生活を謳歌していた。人間って努力さえすれば、あんなにも変われるんだなぁと思うと、感心を通り越してちょっと、薄気味悪い。　ボディビルのダンナとは違って、美しく変身したから良いようなものだが、生まれついての美人のようなタカビーさで自己主張していた彼女にも、そこはかとなく危うさを感じるのは、私のひがみだろうか。

2004年07月21日

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自己改造マニアの方々と私（1）

　以前テレビを見ていたら、ボディビルマニアの夫に、ウンザリしているという奥さんの話があった。結婚した当初の旦那さんの写真を見ると、胃弱そうなインテリタイプ。やせっぽちで、よろよろした感じ。でも、優しそう。そして奥さんはそんなご主人を、「生涯添い遂げるべき人」と心に決めて、結婚をしたワケである。　が、その後、身体というものは、鍛えれば変わると知った時から、ご主人は変わってしまった。ひょろっとした痩せ型体型に、男性として長年、コンプレックスを抱いてきたためだろう。その反動で、ボディビルに全人生を捧げるかのような熱中ぶり。その結果、ご主人は何ともグロテスクな、小山のような肉のかたまりになってしまった。　それだけなら、まだ許せるが、と奥さんは言う。身体に自信がついたら、性格まで変わってしまったのだそうだ。優しく思いやりのあったご主人は、横暴で自己中心的な、亭主関白に大変身。これはサギだ、と、奥さんは笑いながら、でも、全然笑っていない目で語っていた。　それにしても、ああいう風に身体が変わって心も変わった場合の人格って、本物なのだろうか？　そもそも、女性から見ると醜悪なだけで、何の魅力も無いああいう身体でご満悦な神経が分からないし、筋肉がついただけで性格まで横暴に変わってしまうなんて、要するにはもともとの精神が弱いのだと、私は思う。いわゆる「男らしい」男性は、横暴なんかでは決して無いのだから。　奥さんはきっと、身体はひよひよしていても、優しく思いやりのあった頃のご主人に、「男らしさ」のようなものを感じていたのではないだろうか。女性が感じる「男らしさ」って、案外、そういうものだ。　いずれにせよ、ボディビルマニアになってしまったご主人は、バカみたいに嵩張る身体をした、大きな子どもでしかないように見えた。いつかご主人が年取って身体が衰えてきた時、ウソの人格も消え去らなければ良いと思う。その時こそ、裏切られた奥さんの報復が始まるだろうから……　　強い男を演じているニセ人格でもなければ、きっと耐え抜いては行けないだろうか。

2004年07月20日

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女難の相な方と私

　知人に、女難の相が出ているらしき人がいる。特に美男子でもないし、性格が良いわけでもない（悪くもないけど）。ごく普通の若いサラリーマン、という感じの人なのに、異常にモテる。そして、彼に寄ってくる女性がことごとく、粘着質な、怨念の強そうなタイプだから、これはもう、女難と言うしかないのだった。実際、霊能者に女難の相を指摘され、お払いを受けたこともあるらしい。　そんな彼だが、頼りになる相談相手がいる。お母さん、というほど年上ではないが、お姉さんというにもムリがある年格好の人で、水商売歴の長い美人である。　明るく、テキパキしていて、気っぷの良い彼女は、くらーく、ねっとりした、びょーきっぽい女達につきまとわれる彼を心配して、なにくれとなく相談に乗っている。端で見ていても、羨ましいような関係だ。男女の仲でもなく、血のつながりもないのに、こんな風に親身になってくれる人がいて、彼は幸せだな～と思う。というか、思っていた、つい最近までは。　3ヶ月ほど前、彼が突然会社をやめた。彼を知る人がみな、えええーーーっと驚いたことに、退職の理由は「起業」　何しろ、どこといって取り柄の見あたらない、特技も個性もない青年である。けっこう大手の会社に勤めていたのに、何でまた？　そもそも、起業ったって何をするワケ？　と、その話を聞いたほとんど全員が、のけぞって驚いたと言っても過言ではない。　結局、高校時代の友達だかと組んで、デザイン事務所のようなものを作った、と風の便りで聞いたけれど、デザインだぁ？　ぜんぜん畑違いじゃん。その友達がバリバリのデザイナーならともかく、デザイン修行中の人らしい。それじゃまるで今はやりの、パソコン買ったら仕事をまわすよ、というサギも同然。本人は開業したつもり。でも仕事は来ない。残ったのは、高額で買わされたパソコンの借金だけ、みたいな……　彼が無謀にも独立し、全然畑違いのことに手を出すことを決心したのは、例のママさんの入れ知恵だったと聞いたのは、最近のことだ。ママさんは、独立の資金も援助してあげた、という話なので、いかに彼女が彼のことに、親身になっているかが分かる、というウワサだったけれど、私はこの時点で、うーん、という気分になった。　ママさんが独立を薦めた切っ掛けは、彼女が信心している、新興宗教の教祖さまだか、霊能者だか、何だかしらないけれど、何かと相談している人の言葉があったためだそうだ。ママさん自身、二度の離婚も、お店を開く時期なども、その教祖さんだか、霊能者さんだかに相談した結果。そしてある程度成功したのだから、教祖兼霊能者の言うことは、まあ、当たっているのかもしれない。　起業した彼への援助は、ママさんの純粋な好意と取れないこともないが、名目上の役員として、彼から給料を貰う形式になっていると聞くと、本当に好意だけなんだろうか、とウタガイの心も湧いてくる。彼が成功するとはとても思えないけれど、霊能教祖を信じている彼女は、彼の成功を信じているはず。となると、彼にへばりついていれば、そろそろくたびれてきた美貌を頼みに、不景気の中、水商売を続ける必要がなくなる、と踏んだのではないだろうか。　彼に女難の相があると、お祓いをしてくれたのも、その霊能教祖らしい。彼に女難があることは間違いないが、最大の女難はおそらく、ママさんだったと思われる。それを排除できなかった教祖さんには、大した力はないと言えるのではないだろうか。

2004年07月19日

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うぬぼれから大変なことになった方と私

　昨日、お風呂に入っている時に、久しぶりに、うぬぼれの強い後輩のことを思い出した。彼女は高校時代まで新体操をやっており、特に脚を自慢にしている人だった。何故お風呂で彼女のことを思いだしたかというと、彼女はバスルームやトイレから出てくる時、必ず脚をすぅっと伸ばして、一瞬そのまま止まる癖があったからだ。　平均台の上で、脚をまっすぐに伸ばしてポーズを取ったりする、丁度ああいう感じ。入り口付近でそれをやると、外から見ている人間には、彼女のつま先とふくらはぎの途中までが、宙に浮いてにゅっと生えているように見えて不気味だった。　彼女は自分を、美人だとも思っているらしく、見ているとこちらが気持ち悪くなるほど、男性に「美人光線」を発射していたものだ。　この美人光線とは、絶世の美女だったらそういう振る舞いをするであろうと想像するような態度を、勘違いしてとり続けたときに発する異様なオーラのこと。例えば超美人だったら男性に親切にされたとき、つんと顎をあげて、私の奉仕できて良かったわね、と言わんばかりの冷たい表情で「ありがとう」と言う……ということがあるかもしれないし、そういう振る舞いをしてもとても似合うと思う。そういう態度を、彼女はごく平凡な容姿でやってのけるのが常だった。　可笑しいのは、男の人ってそこそこ若くて、そこそこブスでない女の子にそういう態度をとられると、それなりに嬉しそうにする、ということだ。ま、マゾっけの多い人にのみ、言えることなのかもしれないけれど、彼女の回りにマゾ男性が多かったことは事実。おかげで、自分が美しく魅力的な女性だと信じ込む、ものすごい勘違いちゃんに成長してしまった。　しかし、彼女はある時を境にノイローゼになってしまった。と言うのは、彼氏にヤラレテしまったからだ。　最近は「エッチ」なんて軽く聞こえる言葉が日常語として定着してしまい、高校生くらいでも「エッチ」経験有りなんて、当然になってしまった。が、10年くらい前には、まだまだ、良家の子女（？）はそーゆーことをするなんて、言語道断な雰囲気があった。　そんなワケで、件の後輩も貞操観念はかなり強かったのだが、何とある時、ボーイフレンドと旅行に行くと言い出した。それは当然、そーゆー関係になることを意味している、と、普通は考える。ましてや彼女の彼氏というのは、日本人の血は入っているが、日本語はほとんどダメという、ハーフの留学生だったのだ。日本人の男の子だって、ガールフレンドが旅行にオッケーしてくれたら、期待する。ましてや性にオープンなお国柄の人だから、相手がそーゆー期待をしたことは、100パーセント間違いない。　そういう事情や、彼女の両親が厳しいことを知っていた私と友人は、「えー、そんなバカな！　よしなさい」と説得した。ところが彼女の回答が凄かった。「私は彼と、ただ旅行を一緒にするだけである。そういう関係になるつもりは全くない」　でも、そんなの無理だよぅ～と言う私たちに、彼女は誇らしげにこう言った。彼は私にぞっこんであり、私の言うことは何でもきく。だから同じ部屋に寝泊まりしても、彼が私に指一本触れるわけがない。触れさせるものですか。　結果はもう、お分かりだと思うが、ずっとお預けを食わされていて、ついに承知してくれたとワクワクしていた彼は、いつものように、彼女を女王さま扱いなんぞしなかった。最低最悪なことに、旅行中のそれは、ほとんどレイプのような状態だったらしい。　彼女は身も心もズタズタになって、旅行の途中で一人帰国した（旅行先は彼の実家があるヨーロッパだったので）。そして帰国予定日まで友達の家に泊めてもらい、その後なに食わぬ顔をして家へと帰っていった、らしい。　「らしい」と言うのは、そういう事態が起こることを断固予測していた私たちと、彼女はその後、決して顔を合わせようとはしなかったからだ。だいぶたってから人づてに聞いたところでは、レイプ同様の目にあわされたことよりも、自分の「神通力」が彼氏に通用しなかったことに、よりショックを受けた彼女は、その後精神的に不安定になり、通院を余儀なくされたそうだ。　辛い体験を経た彼女が、その後「美人光線」の発射を取りやめたのかどうかは、定かではない。

2004年07月17日

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自己認識不足の方々と私（1）

　ヘルマン・ヘッセが言った言葉らしいが、誰かを憎悪するのは、相手の中に自分の片鱗を見るから、なのだそうだ。何ら共通点がない相手に対して、私たちは不愉快と感じることはないんだとか。　数々のヘンな人たちを見ている私だが、最も嫌いなのが「自己認識不足」系。ということは、私の中にもそういう要素がある、ってことなのかもしれない。　自己認識不足というのは、「勘違いちゃん」と言い換えても良い。例えば私の従姉がそうだ。　彼女はやせっぽちの色黒、体育だけが得意で、その他の勉強は大の苦手、という子どもだった。そんなワケで、小学校時代のあだ名は「サル」　男の子たちにいつもいじめられて、泣きながら帰ってくることもしばしばだったらしい。　しかし彼女の勘違い人生は、中高一貫の女子校に入学した時に始まる。体を動かすのが大好きで、性格もさっぱりしていた従姉は、しとやか系の女の子たちから「○○さんって、頼もしいわ～」とか言われて、すっかり「男役」に仕立てられてしまった。　しとやか系たちは、校内のパシリみたいなのが欲しかったのかもしれないし、女の子ばかりの環境で、「男の子」的な存在が身の回りにあることを望んだのかもしれない。とにかく、従姉は中高の6年間で、「男の子にいじめられて、始終泣いていた意気地のない女の子」から、「男勝りで気の強いオトコオンナ」に変身した。　彼女はその後、女子大に行っておのれの役割を全うし、さらに何年かの社会人生活を経て結婚。本質は繊細な人のはずだが、今でも勘違いしたまま「肝っ玉母さん」「頼りがいのある女房」を演じている。　ずっとそのまま行くなら、それは勘違いでもないし、すでに演技でもなくなっていると言えるだろう。それでいいじゃないか。と、思わない訳ではないが、こういう誤った自己認識の上に、本質とは異なる自己を築いていると、思わぬところでしっぺ返しが来る。　私の大学時代の友人も、従姉とまったく同じパターンで成長した人だ。ただ従姉と彼女が異なったのは、小さい頃、男の子たちにからかわれ、泣かされたのは、彼女が可愛かったから、という点。　サルというあだ名が示しているように、従姉は切れると「きーっ」と反撃することがあったが、その友人は本質的に優しくて、そういうヒステリックなところはない。外見だって男の子がつい、いじめてしまうタイプの可愛らしさを持っている。だから、素のままが一番魅力的だろうと思うのだが、彼女も中学、高校と女子ばかりの環境で変わってしまったようだ。泣き虫だった自分はすっかり忘れ、「がはははは」と笑う、がさつなオンナよ、あたし、みたいな感じに育ち上がっていたのだ。　が、彼女の場合、私の従姉のように順調にはいかなかった。大学時代にかなり苦しい恋愛をしたために、泣き虫な本質がもろに現れてしまった。その上それが自分本来の姿であることをもう、忘れてしまっているから、結局、自分自身をどう扱って良いか分からず、ノイローゼのようになってしまったのだった。　彼女の変わり様と言ったら、端から見ていていも、それはものすごいもので、人相まで変わってしまった。道ですれ違っても誰だか分からず、通り過ぎてしまうほど。最初の頃は、彼女の方が「何ムシしてんのよぅ～」なんて、後ろから声を掛けて来たものだが、あまり大勢の人から気づいてもらえない体験が度重なると、次第に別の落ち込みにはまってしまったようで、だんだんと姿を見かけなくなった。　ヘッセの言葉を考えるとき、私自身もきっと、自己認識が甘いんだろうと思わざるを得ない。私はどういう勘違いをしているのかと考えてみるが、自分のことって良く分からない。難しいものだ。

2004年07月04日

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沈没した方々と私（5）

　じーさんと結婚してロンドンに住みついた例の大家の友達に、やっぱり「沈没」した人がいる。　その人はウチの大家と違って、とても綺麗な人で、釣り合いの取れた年齢のイギリス人男性と結婚し、郊外の危険地域に建つ安っぽい家ではなく、高級住宅街に住み、職業も大家と同業とは言うものの雲泥の差。ハイソなクライアントを相手にする、バリバリのキャリアウーマン、という感じだった。　とある経緯から半日、そのバリバリ女性のお手伝いをすることになった。仕事自体はその女性にくっついて歩くのがメインで、超ラクチン。その上、かなり良いバイト代をくれるという話だったから、その話があったときは、ふたつ返事で承知した。　仕事が終了した時間が思いのほか早かったので、その女性は自宅に招待してくれた。センスの良い人だけに、瀟洒な家も優雅に飾り付けられており、すてきなティータイムを過ごさせてもらった。少なくとも途中までは。　こういう風に、エレガントにイギリスに住み着いている女性もいるのだなぁ、と思っていた矢先、彼女はこう言った。「で、クスリは何やってんの？」　は、はあああああ？？？？ (＠＠)　クスリってあのー、病院で処方箋もらって、薬局で買う、あれ？　と思ったが、すっかりくつろいだ彼女の、くわえタバコで蓮っ葉な感じを見れば、「クスリ」がそういう薬ではないことは、一目瞭然だった。　ぶんぶん首を振る私に、彼女は更に「最って、どんなのが流行ってるのかなぁ？　知ってんでしょ。とぼけちゃってぇ～」　ぶんぶん、ぶるぶるっ　確かにアフリカ系の友達に、今度いー土産を持ってきてやるよ～。おめー、もっとリラックスした生活送らなきゃだめだよ～、と言われたことは何度もある。そのミヤゲがどんな種類のものかも、想像はつくけれど、私はそういうのはダメなタチである。　ぷるぷる首を振っている私など目に入らないのか、彼女は夢見るような瞳を虚空に向け、自分がイギリスに来た当時は、これこれのクスリが流行っていたとか、そういう話を始めた。それで分かった。彼女ってたぶん、サイケとか何か、そういうものが日本で流行った時代に、イギリスにあこがれ、ついに居着いてしまった、という種類の人なのだ。　今ではバリバリのキャリアウーマンにも、美しいハイソな奥様にも見える彼女だが、確かに、ギンギラギンの化粧をして、ど派手なファッションに身を包んでいた時代の面影が、無いとは言えない。不細工でババ臭く、びんぼったらしいものの、ウチの大家の方が、彼女よりもイカレ度は少ないのかもしれない。　結局、彼女はその時のバイト代を支払ってくれなかった。こちらから連絡して、催促すればもらえた「かも」しれない。でも、そこまでして彼女との関わりを、延長したくなかった、というのが本音だ。　内情を知らない人が見たら、家庭にも仕事にも恵まれ、イギリスにとけ込んで暮らしているように見えるかもしれない。でも、ああいう人もある種、沈没していると私は思う。心の奥底では若い頃の夢に浸ったまま、ふわふわと毎日を過ごしているのだから。

2004年06月27日

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気功な方々と私（2）

　以前、知人に気功教室を紹介してもらったことは既に書いたが、その人にはもう一軒の気功教室にも案内してもらった。　そこは、ちょっと通って止めてしまった教室とは異なり、組み手（？）のようなことはせず、先生のお手本にならって、太極拳みたいな色々なポーズを取る、という指導法だった。だからもちろん「ととと」もしなくて良い（「ととと」については、「気功な方々と私」のその1をご参照下さい）。　そういう意味では、私に最適の教室だったのだが、教室の後にお茶会のようなものが催されるのがネックだった。　そのお茶会は別に強制ではないが、参加すれば先生からためになるお話が聞ける。でも私はあんまり社交的な方ではないから、そういう集まりは大の苦手なのだ。　紹介されて、体験参加をさせてもらった日は、紹介者より先に買えるのもナニなので、そのお茶会に参加した。その日は、若い女性からおばあさんまで、色々な年齢、性別の方がみえていて、皆さん、感じの良い人たちだった。一人を除いては。　みょーに感じが悪かったのは、30代後半か40代初めくらいの、自由業っぽい（午後早い時間だったから、そりゃー、自由業だわな）雰囲気の男性。私と向かい合って座っていたが、目を合わせようとしない。じゃ、ヤなヤツなのかというと、そうではなく、他の人と談笑している感じは、ごく普通の穏やかな人柄に見えた。　な、なんで？　と一瞬首をひねったが、ハタと思い当たった。彼の「気」を、私が「見えない」と言ってしまったのが原因ではないだろうか？　その教室は体操みたいなことをして、気を通すのがメインだが、「気とは何か」を体感するデモンストレーションも行っていた。二人組になって向かい合って座り、互いに手をかざして、相手の気を感じ取るとか、およそ、私が苦手とするタイプのトレーニングを、お遊び感覚で行う。　で、気功が初めてという私に、先生は「気は眼にも見える」ということを、示そうとして下さった。件の男性を呼び寄せ、教室の奥の方の、薄暗いところに立つように指示した。そして彼に、両手で気を練りなさい、みたいなことをおっしゃった。　その男性は、両手を遠ざけたり近づけたり、手の中にボールがあるように丸くこねたり、という動きを始めた。そういうことに、慣れているようだったから、気功の上級者なのかもしれない。しばらくして、先生が私に言った。「ほら、彼の手の中に見えるでしょう、ぼんやり光っているものが」　……　見えなかった。申し訳ないが、見えなかった。だから、そう言った。「すいません。分からないです」　　先生は穏やかに「そんなこと、あるはずが無いと思っているから、見えないんですよ。よーく見てご覧なさい」　　そうじゃないんだよー。「あるはずがない」なんて、思ってるワケじゃないんだよー。私は極度に鈍感だから、普通の人には見えても、私には金輪際見えないんだよ～～～。　と言いたかったが、そうも行かない。先生にもその男性にも悪いから、必死になって目を凝らした。神様がいるのなら、どうか見せてくださいと、祈りさえした。でも、見えなかった。追いつめられた私は、ウソをついた。それしか方法がなかったから。「あ、本当ですね！」　私が見えないと言ったのは、私には見えないからだ。そういう鈍感な体質であり、ヘンなトコが正直だからである。が、どうも、デモンストレーションしてくれた男性は、私の態度を個人攻撃と受け取ったようなのだ。確かに、自分がデモンストレーションしてやってるのに、頑固に「見えない」と言い張られたら、自分の能力に対する攻撃だと取っても、仕方がないかもしれない。　彼はそれで、私の目を見ようとしなかったし、話を振られて私がクチを開くと、突如、それを遮って話を変える、なんて無礼な態度を取ったのだろう。　アナタから気が出ていないと言ったワケじゃないのよ。私には気が出てても見えないの。火が出てりゃ、さすがに見えるだろうけど、それだって、百パーセント分かるという保証はない。そういうタチなの。　と、ここで弁解してもしょうがない。とにかく、「ととと」をしなくて良い教室も、別の意味の気を使う必要があるようだった。気功な人には、プライドを傷つけない配慮が大切なのだろう。私には、向かない。つくづく、向かない。

2004年06月26日

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