カテゴリ:勘違い系
英語が堪能な方、と言うか、「自分は英語の発音がスゴク良い」と思いこんでいる変な人が、私の周りにはたくさんいる。古いところから話を始めると、高校時代のクラスメートがそうだった。
彼女は幼稚園くらいのときから、アメリカ人の先生に英語を習っていたという人だ。高校一年の最初の英語の授業で彼女が指されたとき、クラス全員が(それから多分先生も)驚愕した。あまりに流暢な英語だったから、ではない。ガマガエルのような、変な声だったからだ。 彼女はもともと、山口もえのようなふにゃ~んとした声で、ゆったりおっとりしゃべる人だったから、押しつぶしたようなゲロゲロ声は、他の生徒の口から出てきたよりも、相当に衝撃的だった。 彼女自身はと言うと、みんなの凍り付いたような沈黙と注目が、自分が朗読する発音の素晴らしさのせいだと、勘違いしたようだった。 授業が終わると、クラスのほとんど全員が、彼女のもとに走り寄った。「どうしてあんな声出すの?」と。考えてみれば失礼な質問だが、彼女は頬を染めながら、自分が習っている先生のしゃべり方の影響かもしれないわ、と語った。 彼女は、「あんな声」という私たちのぶしつけな質問を、「あんなネイティブっぽい声」という風に受け止めたのだろうが、私たちはと言うと、 「なーんだ、その先生になりきったつもりでいるワケね」 と全員が納得し、以来彼女は卒業まで、親しい友人ができることもなく過ごした。 彼女の耳の底に聞こえていたのは、きっと先生の流暢な英語だったのだろう。でも、私たちの耳には、彼女がイメージしていた流暢さとはほど遠い、浪花節語りみたいに声をつぶした、うめき声のカタカナ英語しか聞こえてこなかった。 ちなみにガマガエルの彼女は、卒業間際に想像妊娠騒ぎを起こした。彼女の客観性のなさは、思い込みの激しさに由来していたのかもしれない。 卒業できたのか、中退したのか、彼女のその後を知っている同窓生は、一人もいないようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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