カテゴリ:勘違い系
ネイティブみたいに格好良く外国語を喋りたい…… 程度の差こそあれ、誰もがそう言う風に思っているんじゃないだろうか。ただ、それが行きすぎてしまうと、何だか妙なことになる。
ある知人は、イギリス英語オタク。アメリカ発音が「うつる」(病気か?)から、イギリスの映画、ドラマ以外は見ない、という徹底した女性だった。もちろん、イギリスに語学留学した際には、演劇志望者を対象とした発声トレーニング(もちろんネイティブ向けの)を受けたという徹底ぶりだ。 それほどまでにしているが、彼女は英語を使う仕事をしていた訳ではなかった。「発音イノチ」なのは、何かのおりにふと、流暢な英語を使って、周囲を圧倒したいという思いがあったから。 かなり非効率的な願望だと思うのだけれど、あまり英語を使うチャンスの無い彼女は、日々のトレーニングも怠らなかった。お気に入りのドラマを毎日繰り返し見ては、その中の登場人物になりきったつもりで、その人物の発言を一言一句、抑揚や言葉の句切り方、果ては表情や身振りまでソックリにまねる。そういう訓練を、日課としていた。 が、彼女にとって悲劇だったと言うか、喜劇的だったのは、彼女が手本にしていたのが、アガサ・クリスティのドラマ、ということだった。そんなワケで、彼女のしゃべり方はミス・マープルそっくり。ドラマの中でだって、ミス・マープルは「時代遅れの老嬢」として扱われるのに、21世紀に生きる30代の日本女性がミス・マープルである。 確かに彼女の発音は、(ご本人が思っているほどネイティブっぽくは無いにしても)かなり日本人離れしている。でも、多くの人が彼女の英語を聞いて凍り付くのは、賞賛のためではない。その発音やしゃべり口が、もんのすごく古めかしい、お婆さん臭いものだからなのである。 もし、大石内蔵助を演じる片岡千恵蔵そっくりの調子で(古すぎ?)、日本語を喋るアメリカ人青年に遭遇したら、たいていの日本人は、その異様さに絶句してしまうのではないかと思うのだが、彼女の英語もちょうどそんな感じ。 その他の面では、非常に聡明な人なのに、彼女がどうして、そういう滑稽さに気づかないのか、いまだに謎なのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2004年09月08日 13時21分15秒
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