カテゴリ:分類不能系
知的なパンチパーマのおじさんと、げーじゅつに関する話で盛り上がっている間、おじさんの子分ぽい青年は、何となく所在なげにしていた。が、親分がいつまでも立ち止まっているのに苛立ってきたのか、それとも、自分が会話に入れないのが不愉快になったのか、妙な上目遣いで、じーーーーっと私を直視し始めた。
私は写生中で、折り畳み式の椅子に座っており、その男性はかなり長身だったから、位置関係から言って上目遣いはかなり難しい。が、彼はぐっとアゴを引き、額に落ちかかるさらさらヘアの隙間から、じいーっと私を見ているのだった。 彼にも話を振らなきゃ、と、ヘンな気を使った私は、一生懸命、彼の方にも目を向け、「なになにですよね」なんて同意を求めたりしていたが、それでも青年はじいいいいいいいっと、私を見つめ続けるだけ。ちょっと気持ち悪くなった頃、おやぶんがようやく腰を上げた(って、先方は立っていたので、単なる例えですが)。 「もっと話していたいけど」と、厳つい顔に似合わぬ笑顔を見せ、おやぶんは子分を引き連れて立ち去った。途中、こちらを振り返って、快活に手を振ってくれたりして、なかなか良い人だったが、その時も子分は一緒に立ち止まり、遠くからあの、アゴを引いたヘンな上目遣いを、私の方に向けたのには閉口した。 何なんだ、あの子分わっっ と一瞬思ったが、そんな疑問はすぐにすっ飛び、私はあんまり好きでない写生に戻った。 どのくらい時間が経ったか分からないが、たぶん1時間以上たったころ、親分と子分が、公園の別の方角から戻ってきた。と言っても、私からかなり離れた所で、私の目の前を横切るような形で、出口の方へと去っていったのだが、何と! その時の二人は、歩きながら抱き合うという芸当が可能だとしたら、まさにそれだった。 腰と腰を抱き合い、アシも絡み合ってるんじゃないかという印象をあたえる、非常に、いや、異常に親密な様子で歩いていく。そして、無表情だった子分の方は、輝くような満面の笑み! 親分の肩に、頭をもたせかけたりしている。子分の方が頭半分以上長身だから、これまたかなり難しい芸当である。 あ"……、そうか。あの人たち、もーほーのカップルだったんだ。若い方の上目遣いは、アニキが私とばかり喋っているのに業を煮やした、嫉妬のまなざしだったのだ。ははははは。 ようやく状況がスッキリ理解できた私。そうかー、そうだよなぁ、ああいうアニキと舎弟みたいなカップルは初めて見たけど、もっと早くに分かっていてしかるべきだったんだよなぁ。若い方の彼は、げーじつの話なんかよりゲイじつの話をしたかったわけよね、 あの濃いカップルの親密さは、そんな訳でかなり印象的で、今も鮮明に記憶に残っているのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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