カテゴリ:勘違い系
私は何故か、教員免許を持っている。それも最も苦手な教科の…… ま、それは良いのだが、教員免許を取るからには、教育実習というものが必須で、私も行きました。例の、体育の成績に「1」をつけくさったバカ教師のいた母校、ではなくて、同じ学区内の別の中学校だった。
こぢんまりとした、感じの良い学校で、実習仲間も感じのいい人ばかりだし、実習生に与えられた控え室も、広々していて快適だったし、私の直接の指導教官もとても感じの良いベテラン先生だったしで、言うことナシの環境だった。しかし、その学校にはみょーな習慣があった。 朝と夕方、「君が代」が流され、国旗と校旗の掲揚が行われる(夕方はハタがおろされる)。そしてその間はどこにいようとも、国旗と校旗があると思われる方角に向かって、直立不動の姿勢でいなければならない。はあ? 今どきそんな学校、あるのかよ、と、実習生一同、首をかしげたものだった。 が、私としては、先生の目があるときは直立不動しても、それ以外の時は生徒たち、適当にさぼっているのだろうと思っていた。ところが、である。 私がトイレ掃除の監督をしていた時だ。夕方のハタサゲ儀式の時間となり、スピーカーから国歌が流れ始めた。その途端、トイレの床をモップで拭いたり、洗面台を洗ったりしていた生徒たちが、すっくとまっすぐに立ち上がった。そして、国旗があると思われる方向(それは、トイレの一番狭い壁の方向で、女子便所なのに、何故か、男性用便器がぽつんと置かれている方角)に、神妙な表情を浮かべた顔を向けた。 「えー、こんなとこでも、やるワケ? いいじゃん、みんな、そんなことしなくてもー」と、不真面目な教育実習生である私は言ったが、誰一人口をきこうとしない。何だかバツの悪い雰囲気になってしまったが、私は国旗の方角らしき男性用便器に、お尻こそ向けなかったが、対面もしないで音楽が終わるのを待った。 「君が代」が終わると、生徒たちは私の方を振り返り、「どこにいてもやらないと、ダメなんです。ばれたら恐いから」と言った。 「え、じゃあさ、もしトイレに入っていて、掃除じゃなくって、純粋に個室内でしゃがみこんでいたら、どうするわけ?」 「個室の中でも立たなくちゃダメなんです」 「えー、まだ途中だったらどうすんのよー(下らないことが気になる私である)」 「この時間帯には、本来、なるべく国旗が見える位置にいるように、って言われてるんです」 国旗作業の時間帯には、トイレに入っちゃいけないのね。なるほど。 とにかくヘンな学校だったが、どうやら外部からはかなり睨まれていたらしく、実習が終わった最終日の反省会で、主任の先生から「アンタ、スパイかと思ったら、そうじゃなかったんだね」と言われた。一瞬、意味が分からなくて絶句したが、どうやら、私が初日の朝礼で、実習生代表挨拶やった時の言葉に、問題があったらしい。 たまたま私はじゃんけんで負けて、生徒への挨拶をさせられたのだが、言うこともないので「何か相談したいことがあったら、気軽に実習生控え室に遊びに来てください」と話を締めくくったのだ。どうも学校側は、それで私を「要注意人物」「スパイ」だと思ったらしい。 でも、そんな風に思うと言うことは、スパイが偵察に来ても当然だ、という自覚が、自分たちにあるってことだよね。 あの学校が、これほど時代が変わった今でも、国旗掲揚と直立不動を義務づけているのかどうかは知らないが、10年前でも十分に、あれは異常な決まりごとだったと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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