カテゴリ:分類不能系
数年前の年末からお正月にかけて、友人と4人でとある温泉にでかけた。1月2日には、ちょっと行ったところにある、割と大きめな駅から、「初詣バス」というような名前の、観光バスが出ることを発見。こりゃいーわ、ということで、ちょっと足を伸ばして初詣に出かけることになった。
その駅は、新幹線も停車するのだけれど、私たちは経費削減のため、朝早くから鈍行でゴトゴトでかけた。そして、観光バスの窓口で当日払いの切符を買い、バスが発車するまでの小一時間を、駅の待合室で朝ご飯代わりの菓子パンなどを食べながら過ごした。 やがてバスが到着したので、私たちはどやどやと乗り込み、最後部に座席を占めた。みな、バスには強いのばかりが集まっているのと、そのバスは短距離をくるくる回るタイプの車両なので、後ろにトイレが付いていなかったためだ(トイレ付きだと後ろはちょっと臭い)。 が、バスに乗るまで、比較的寒い待合所で過ごしていた私たち、「トイレ無いバスなんだ、良かったね」みたいなことを言っているうちに、「トイレ、行きたいよね」という話になった。出発まではまだ15分くらい時間があったし、駅には大きくて清潔なトイレがあった。そこでバスガイドさんに「まだ出発しませんか? トイレに行きたいんですけど」とたずねると、「良いですよー。行ってきて下さい~~」というお返事。 そこで私たち4人のうち、3人がトイレへと走った。走らなくても良いのだが、みなせっかちな体質なのだ。私たちはまた、全員非常に用を済ますのが早い。例の「ものすごく早い人」ほどではないが、一般的な女性というものは、トイレ内でいったい何をしているのであろうか、と不思議に思う程度には早いので、3分とたたないうちに、トイレ前に集合。さて、と30メートルほど向こうにたたずむバスの方を振り返ると、な、な、なんとっ! 出発しようとしているではないか! 出発まで、まだあと9分は残っている。な、なんでええええ?????? 私たちは何ごとかを絶叫しつつ、手を振り回しつつ、バスの方に殺到した。が、のんびりした動きながら、さすが、エンジン付きは速い。私たちがバス乗り場に到着した時には、バスはちょっと先の道を左折して、いずこへともなく消えてしまった。バスの最後部の窓から、お留守番に残った友人が、ムンクの叫びのようなポーズで「ひゃーっ」とか言っているらしいのが見えた。 言えよ、バスガイドに言え、まだ帰ってきていないと言えっ、ばかもの! と言うのが、そのときの私たちの思いであった。 私は病的なところがあって、荷物を決して手元からはなさないから良いのだが、ほかの二人はハンカチ一つで手ぶらである。かろうじて、コートは脱いでいなかったのが不幸中の幸いという状況。「コート、おいていこうかな、すぐそこだから」と一瞬迷った友人が、最も激怒してバスの切符売り場に怒鳴り込んだ。 「トイレに行ってこいと言っておきながら、勝手に出発してしまうとは何ごとだ! どーしてくれるんだっっっっっっっっっっっ」 友人の怒りも最もである。だってそのバス、午前中に一台しか出ないのだ。いったい私たち、どーすりゃイイのさ。 ところが、である。私たちの日頃の行いが良いせいか(うそうそ)、その日、なんと新幹線にトラブルがあって、ダイヤが大幅に乱れていた。その観光バスは、たとえば、10時10分着の新幹線に乗ってきた人を待って、その後に出発する、というようなスケジュールだった。それが、10分には来ないということで、急遽、10時ジャストの出発になってしまったようなのだ(私たちも、鈍行で来なかったら、おそらく遅れていたクチ)。 そんなワケで、遅れた新幹線が到着したら、臨時バスをもう一台出すから、それに乗って下さいと言われ、その点はセーフ。でも私が財布を持っていたから良いようなものの、ほかの二人は手ぶらである。もし私の病的な荷物確保癖がなかったら、三人ともバスに乗れども拝観料も払えなければ、おみやげの一つも買えず、団子の一本も食えず、という状態だったはずだ。 私たち三人は、目を三角につり上げて、次のバスに乗ったが、正直言って、初詣どころの騒ぎではなかった。 が、本当に気の毒だったのは、先発してしまったバスに一人残された友人だ。初詣バスというだけに、色々な寺社仏閣を回って参拝するのだけれど、「車中に貴重品は残すな」というアナウンスが入るから、ほかの二人のバッグも持ち歩かねばならない。でも、変な持ち方をして、中身を落っことしたら大変。途中、結構山道っぽい参道もあったりして、重いし…… ひとりぼっちじゃ寂しいし…… と言うわけで、しまいには彼女、バスから降りずにじーっとしていたらしい。私たちの方は、ぶーぶー言いながらも、この団子はウマイの、お茶がぬるいの、あの国宝は見応えがあっただのと、それなりに楽しく過ごしたのだった。 が、天は一人取り残された友人のことも見捨てていなかった。というのは、行程の半分くらいのところで、なんと、最初のバスと私たちのバスが合流したのだ。道の渋滞の具合かなにかだろうか。2、30分の差しかなかったためか、とあるお寺の駐車場で、私たちは再会した。バスに取り残された私たちよりも、私たちに取り残された友人の方が半泣きだった。 一台目のバスはけったくそ悪いということで、一人残された友人が、二台目の我々に合流することになった。非常にアバウトなバス会社で、一台目は一人減ったことにも気づかず、二台目は一人増えたことにも気づかなかったようだ。 帰りは新幹線が完全にとまってしまっており、またまた鈍行で帰る羽目になったが、それなりに楽しい一日であった。が、あのバス会社の観光バスには、二度と乗らないと心に誓った私たちだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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